表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1901年、サンクト・ペテルブルク
124/350

押し

「それは……」


 相手の逡巡。

 自身の心境を測りかねているのだろうか。


 一瞬だけ、僕は男の左右を見やる。

 左の男も右の男も、口を出す気配はない。

 何もしないところから、困惑が見て取れる。

 ――ならば、この場は一対一に等しい。


「あなたの意見を聞いてみたい――これ、おかしいですかね。ここで少々サービス(アブソルージョリニエ)したところで、あなたが何を失うでもない、そうでしょう?」


 状況を踏まえながら、僕は言う。


「こういうことは初めてだと仰いましたね。ご職業にはご職業ならではのカンが働くと聞きます。そのカン、従っておいた方がいいんじゃないでしょうか」


 これはハッタリだ。

 気まぐれは気まぐれであって、直観じゃない。

 当たったと言うまぐれの記憶が生き残り、印象を強くする。

 ただそれだけのこと。

 もちろん、馬鹿正直にそれを言うつもりはない。


「仮に僕が、このやり取りをどこかで暴露したとします。でも逮捕されようとしている僕と、十数年を真面目に勤めているあなた。信用がどちらに置かれるているか、明らか過ぎるほど明らかですよ――それでも、あなたの考え、教えて頂けませんか?」


 考え自体をそう知りたい訳ではない。

 引き出そうとしているのは別の代物。

 ひとたび些細な要求を呑めば、次に要求を拒むのは無意識レベルでむずかしくなる。

 人間心理に基づく交渉という奴だ。

 次なる要求、つかの間の僕の自由は、少しだけむずかしい。

 だからこそ、無意味に見えるここで押しておく必要がある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ