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やり取り
目の前で行われている、ほとんど無意味なやり取り。
唯一意味があるとすれば、相手を安心させるか否かだろうか。
冷たく笑いたい気持ちを隠し、僕は続ける。
「もし一筆したためるのが必要でしたら、応じるつもりですが」
もちろん意味など無い。
意味は無いけど、必要な行為もある。
「こちらに歯向かう気はないと?」
「ええ」
「そうですか――あなたは若い、素直さの方に免じて、サービスで教えましょう」
「と言うと?」
「今後は極力、牙を隠した方がいい」
不意をつかれ、僕は口ごもる。
「……仰る意味、ちょっと分かりませんが」
「――私もですよ。勤めて十数年この方、なんでこう言う気になったんだか――」
心の中で、僕はわずかに評価を変える。
職務に忠実なこともあれば、心揺れることもある。
つまりは可もなく不可もなく。
この三人組の評価は、ひとまずそんなところに落ち着きそうだった。
余計な感情を胸にしまい、重ねて僕は訊ねる。
「よろしければですが、言わんとする所をお聞かせ頂ければと思います」




