審議応答
「そう言われましてもね、証拠は挙がってるんですよ」
嘆息をひとつつき、真ん中の男。
「どうでしょう、我々とともに来て頂けませんかね」
「――もしもの話ですが、断ったら?」
「任意の方がありがたいのは確かです。こちらとしても、1月1日から手荒な真似は避けたい」
つまるところ、僕に選べるのは手荒か否かだけと言うことだ。
ほとんど身に覚えが無いにもかかわらず。
……いや、選べるかも知れないものはあった。
交渉の余地はまだある。
「――分かりました。ですが少しだけ、待って頂けませんか」
またしても勢い込む右側の男に、それを制する中央の男。
「家に人がいましてね。この調子じゃ、帰るのはいつになるか分からない」
「我々としてはお受けしてもいいところです。ですが、いかんせん確約がないですね」
「と言うと?」
「あなたが、きちんと出頭すると言う確約を頂きたい。それが納得の出来るものであれば、いったん引き下がりましょう」
出頭、の一単語を僕は拾い上げる。
どうやら、官憲の類で間違いなさそうだ。
普段づかいの言葉にこそ、偽れない出自は現れる。
慎重に、僕は言葉を探す。
「僕の普段の居場所は分かっているでしょう。その質問、口頭での確約に、意味があるとは思えませんが」




