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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1900年、サンクト・ペテルブルク
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風物詩

 異国の地での、思いもよらぬ食べ物との再会。


 もはや郷愁と別れたはずの旅人が、なぜ不意に故郷の味を欲するのか。

 甘酸っぱいみかんを頬張りながら、僕は初めて、その思いが分かる気がした。


 たぶん、と僕は考える。アメリカはあくまで経由地なのだろう。

 幕末、日本とアメリカとの交流の“果実”。

 おそらくはそんなところだろうか。

 もちろん、桜の木がアメリカ、ワシントンに植えられたのは知っていた。

 けれども、果物ひとつにもこんな歴史があろうとは。


 彼女はどこまで、この果物のことを知っているのだろう。

 ――いや、そうむずかしく考えるまでもない。

 僕に最初隠したことを考えると、ほとんど承知の上のはずだ。


 もう一個のみかんの皮をむきながら、僕は想像する。

 あるいはロシアの地でも、みかんが冬の風物詩になるのだろうか。

 オレンジに親しんでいる土地に、みかんの入る余地があるかは分からない。

 けれども、できればそうあって欲しいと思う。


「……とりあえず、家に戻ろうかな」


 何はともあれ、僕はお礼を言いたくなったのだ。

 ――いい年になりそうだ。

 そんな気分にしてくれた彼女に。

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