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ノーベル賞
ようやくの1900年、そして1901年。
僕としては、喜ぶべきことがひとつある。
もうすぐ去年となる今年、ある事実が発見されたはずだからだ。
発見者となるはオーストリアの医師、カール・ラントシュタイナー。
もうすぐ今年となる来年、静かにひとつの論文が出ることになる。
提唱された説を機に、血液の謎は少しずつ解き明かされていくことだろう。
ABCからなる血液型を発見した医師は、数十年の後、ノーベル医学生理学賞を受賞するはずだ。
血液型の発見は、ロシア王家にとっても大きな意味を持つ。
もし生まれてくる世継ぎが血友病を患っていた場合、完全に治すことはできない。
かつての僕が生きた時代でさえそうだった。
けれども、輸血があればまがりなりに症状へ対処することはできる。
血が止まらないときがあっても、他者から凝固をつかさどる成分を分けてもらうことができるのだから。
少なくとも、致命的な事態は避けることができるはずだ。
……ただ、問題が無くもない。




