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19世紀
1900年、12月31日。
19世紀最後の一日が、あと少しで終わろうとしている。
僕はと言うと、何とか無事に新たな年を迎えられそうだった。
新たな世紀を迎えるのは、これが二度目のことだ。
一度目が21世紀、7歳。
二度目が20世紀、27歳。
ひょっとしたら、人類で始めて、三度の新世紀を迎えることもあるのだろうか。
いや、おそらく僕が、さらにもう一度の世紀をこえることはないだろう。
仮にそうなら、その時の僕は127歳。
これはもう、皇帝どころの騒ぎではない。
僕が知る限り、120年を超えて生きた人類はただ一人、ジャンヌ・カルマンだけだ。
ジャンヌ女史が生きたのは確か、1875年から122年。
この世界最長記録からさらに5年生きないといけない。
生きたいかどうか以前に、さすがに無理なお話だろう。
19世紀末、ロシア。
抗生物質もなければもワクチンも乏しく、農業の近代化もまだこれからだ。
この時代、人々の平均寿命はまだ、50歳にも満たないはずだった。




