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人物問題
「――それは、本当に人物問題ね」
彼女の口振りからは、問題に気付いた様子が察せられた。
「情報の取捨選択は、やりようによってはいくらでも力になる。行う側に作為があれば、要件の順番を変えることも、気に入らない意見を弾くことさえできる」
さすがの直観だった。
「もしかしたら、最初は気付かれないかも知れない。でも、いつまでも気付かない人ばかりじゃないでしょ。それは皇帝でも同じこと」
「うん。だから、皇帝に尽力する人物――はた目にも実際にも、実直な人を捜す必要があるね」
無論、見つかるかどうかはまだ分からない。
でも、適任の人物はきっと存在しているはずだ。
もし一人もいないようなら……あまりに悲し過ぎる。
信頼できる組織。
果たして僕は、それを準備できるのだろうか。
「ともあれ――悪くはないわ」
確かに、目の前に問題は山積みだ。
万事うまく行くとも限らない。
けれどもジョゼファの評価に、そう悪い気はしなかった。
「――ありがと」
後のことは……首都に出てから、だ。




