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制度疲労
「なるほど。なら、誰を矢面に立たせるつもり?」
「いや、そこまでの目処はまだだね」
正直に言って、僕の知識にも限りがある。
有名な人物ならいざ知らず、その下の誰それを覚えているほど僕は超人じゃない。
「その辺りは、追って探すよ。人物次第だね。ともあれ、皇帝の補佐を中心にする機関、どうかな?」
「――うん、いいんじゃない」
こう言う彼女の反応は珍しい。
突き詰めてこそいないけど、最初から及第点をもらえるのはうれしい。
「制度の外につくるのは賛成。なまじ部外者が急に力を得るようだと、既存の制度内じゃ動乱の元でしょう。――それとも、皇帝でも目指してみる?」
慌てて僕は首を振る。
無論、皇帝の継承権は直系の男子にしかない。
厳しい時代のロシアを治める者。
ほんの冗談とは言え、遠慮したい想像だ。
「もちろん、既存の制度との衝突はあるでしょうね。でも、部外者が訳の分からない力をふるうより余程いいはずよ」




