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甘やかに
「分かった。なら、農園は売る。……よかったら、サンクト・ペテルブルクに行きたい理由、もう少し詳しく聞かせてくれる?」
来るべき戦争、あまたの事件。
流されるはずの、数え切れぬ血。
そんな事どもを、僕は話した。
そして上手く行けば、それらが起こらずに済むかも知れないことも。
「それは確信? それとも願望?」
直截な問いに、僕は答える。
「願望。でも、願望に終わらないよう努力はする」
「当たり前ね。でも、内容は聞かせといて」
「うん」
と言って、綿密な計画がある訳でもない。
あくまで構想だけでしかない今は、彼女の力を借りておきたかった。
ロシア帝国は制度疲労を起こしている。
巨大なロシアを、皇帝一人が治めるのは不可能。
これはまず間違いないところだ。
必然、今のままでは、諸々の事件への対応は後手後手でしかない。
では、何とかする方法はないのだろうか。
制度の温存はむずかしいにしても、何か方法は。
たとえば、どうにか皇帝の負担を軽減できはしないだろうか。




