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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1899年、グルジア
102/350

軽やかに

 ふたつのコップに、僕は若々しい自家製ワインを注ぐ。

 陶器のコップはすぐ、赤い液体で満たされた。

 ふたつのそれを、ひとつは僕の手許に、もうひとつを彼女の方に渡す。


「――飲もう」


 当てつけでも意地悪でもない。

 純粋に、彼女とそうしたかった。

 ただそれだけの話だ。


「一人一人飲むだけじゃ、ちょっと味気ないからね」


 不意を突かれたように、彼女。

 若干の渋い顔をしながら、コップを手に取る。

 何はともあれ、意を受け取ってはくれるらしかった。


「私、もしかして甘やかしてるのかな……」


「普段が厳しいからね、たまにはいいんじゃないの」


 自由の利く右手で、僕は軽くコップを持ち上げる。

 彼女もまた、それに応じる。

 軽く陶器のぶつかる音。

 ほどなく、普段着のワインは飲み干される。

 甘さの合間に程良く酸味の利いた、軽やかな後味。


「――いいね」


「普段はそういうこと、ほとんど言わないのに」


「そうだったかもね……でもこれからは言うよ。言うようにする」


 たとえこの地を離れても。

 きっと僕は、こんなグルジアワインを飲み続けるだろう。

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