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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1899年、グルジア
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乾く杯

「何はともあれ、ひとまず残りを飲みましょう」


 言って彼女は、右手で上等な方、ガラス瓶のワインを手にする。

 左手では、さきほど同じワインを注いでいたコップ、2個ともを引き寄せ、そのままワインを注ぐ。

 食卓の一面に、古びたぶどうの香りが漂っていく。


 彼女の意を汲むつもりで、僕は片方のコップに手を伸ばそうとする。


「だめ」


 寸前で制されてしまった。

 いったい、どういうことなのだろう。


「?」


 僕は首を軽く傾け、その意図を問う。

 彼女は応じるように軽く首を振り、説いてみせる。


「これは選ばれなかったもの。いたずらに未練は残しちゃいけない――たとえそれが、飲み物であっても」


 コップ一杯を一息に。

 それを二回繰り返した末に。

 本当に大事だったはずのワインは、こうして目の前で消えていった。


「――なるほど、ね」


 うなずき、僕もまた、彼女にならう。

 右手で陶器製ワインを引き寄せ。

 左手で少しだけ苦労しながら、残りのコップふたつを手繰り寄せる。

 静かに、コップはワインで満たされていく。 

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