11. 1か月後
あれから一ヶ月がたった。特筆することとすれば、アリアが本物の化け物でした。流石に、私の九尾状態は魔法特化だから戦ったことはないが、人形で戦ったときはあの子本当に怖い…………
「ユキちゃん!いっくよー!」
入学して数日、初めての戦闘演習と言う授業が始まった。そこで現れた、アリアの異常さ。
どんどんスピードを上げていっても普通に着いてくるとか、ましてや最後には魔法を混ぜてなんておかしくないか?本当にアリアはここの世界の人なのか?
リナです!
いやー、化け物がこのクラスに二人もいるなんて思いませんでしたぁ~。いやね、ユキちゃんは元からの魔力量が半端なく大きかったので、化け物認定していたんですよ~。でも、アリアさん!あの娘何ですか!
今ちょうどユキちゃんと戦闘演習やってるはずなんですが、全く二人のことが見えないんですよ!目を凝らしてみてやっと残像なんですよ。しかも手が何本も見えるんですよ。化け物だよね~。うん。化け物~。
ユキです。
アリアちゃんの異常さには諦めたのですが、びっくりしたのが、この世界のエルフはまさかの精霊魔法を使えないと言うことでした。精霊に聞くところによると、昔のエルフの一族が精霊魔法を用いて一つの森を破壊しかけたから、恐ろしくなってエルフから逃げるようになったと話していた。でもそれが300年ほど前で、其からは森で、精霊の村をつくって過ごしていたらしい。
あと、学園の方針がやるときはやる、遊ぶときは遊ぶだったので、一ヶ月のうち最後の一週間は休校日で遊んで良いのだが、その前の二日間でテストがありそれで、良い結果を出さなくてはならない。と言うのがこの学園だった。
そして今日がその休校日初日だ。私はアリアとアキを誘って都市内を観光していた。そのときのことだった。
『これから奴隷市が始まります。ご利用の方はお早めに第三広場までお集まりください。繰返します。…………』
「ねぇ、アリアちゃん。奴隷市って何?」
この世界に来てからと言うもの、分からないものの殆どをアリアに聞いてるユキ。もう、この好奇心が強く知らないことだらけのユキの事を、妹のように優しく接しているアリアであった。
「奴隷市は、その名の通り奴隷を売る市のことだよ。大体が人族だけれども、借金を返せなかった人達が殆どだね。あとは、スラムの人で衣食住に困った人達が自ら望んでなることもあるね。ユキちゃんは興味があるの?」
「少しある。ちょっとだけ見て良い?」
こう言うことで、奴隷市を見ることになった。
『皆さん。お集まりいただきありがとうございます。では、一人ずつ紹介していきたいと思います。
まずはこの女性、お家が没落し借金を抱えていたために奴隷に落ちました。元々の地位が高いためにお値段も高くなっています。金貨2枚です。それでは買いたい方は手をあげてください。…………一人しかいませんね。では、その方は裏の事務室に来てください。』
ここを見ているだけでも、大体の流れがわかったユキ。大体わかったために、この場を離れようとしたところである言葉が耳に入った。
『次は、珍しい妖狐族の女の子。火事によって全身が火傷しているために値段が落ちますが、それでも高いですよ!金貨8枚!さあ、買いたい方は手をあげてください。』
この言葉にユキは迷わず手をあげた。この行動にアリアとアキは困惑してしまった。
「ユキちゃん!?そんなお金持ってるの?しかも何で買うの?」
「ユキ。貴女は何を考えているのだ!?」
この二人にあとで説明すると言葉少なげに言って、主催側の言葉を待った。
『はい。お一人ですね。ではそこのお嬢さん。先程と同じように裏の事務室まで来てください。』
一人だったようで、その言葉を聞きユキは一人で事務室に向かった。
「この子を買うと手をあげたお嬢さんで間違いで、間違いありませんね?」
「はい。彼女を少し見していただけませんか?」
「問題ありません。おい、妖狐族の女の子を連れてこい。では、その間に条件や金額を確認しましょう。
まず、料金は金貨8枚。合ってますね?」
「はい。問題ありません。」
「では、雇用条件ですが…………「少し質問してよいですか?奴隷の解放って出来るですか?」出来ます。大体の場合は、使えなくなった等の理由が多く、ご自身が契約魔法を使える方でしたら好きなときに解放することが出来ます。でも、何故でしょうか?」
「私も狐族の一端にいるものだから、出来れば同族には開放された状態で、雇われるんだったら雇われてほしいなと言うものでね。」
「逃げないように気を付けてくださいね。では、もとに戻りましょう。奴隷解放は払われた料金を雇い主に払い終わった時点で、自動的に解放されると言う形でよろしいでしょうか?他にこちらから提示することは有りません。何かありますか?」
「無いです。」
私が言うと同時に私が頼んだ娘が、やって来た。
「名前をアカツキと言います。火傷のせいで呼吸器をやられたらしく上手く声が出せないせいで名前を名乗れません。アカツキ、この方がこれからお前の雇い主様だ!挨拶をしろ!」
「あーくぅー。おーあーうーしーうーおー。」
「アカツキちゃんね。よろしくね。」
お互いが挨拶し、その後ユキがお金を払いアカツキと契約した。
「申し訳ないけど、私の連れが居るから呼んできて良い?あと、この部屋貸してもらって良い?」
「はい、問題ありません。では、この度はありがとうございました。」
その後、ユキはアリアとアキをよび、アカツキと合わせた後、アリアとアキにあるお願いをした。
「アリアちゃん、アキ。このお金いくら使っても良いからアカツキちゃんに合う服を幾つか買ってきて。その間に私は私でしたいことがあるから。」
そう言って出したユキのお金袋の中には沢山の金貨と銀貨が入っていた。
「えーっと、ユキちゃん。銀貨10枚で足りると思うよ。じゃあ、銀貨10枚貰って行くね。」
やがて、アリアとアキが出ていったのでユキはアカツキと向き合った。
「アカツキちゃん、まず私は貴女の怪我をすべて治そうと思う。で、約束なんだけど治したってことは此処では内緒にしてね。いい?」
ユキは、アカツキが頷いたのを見て治癒「精霊魔法」を使うために元の姿に戻った。アカツキが息を飲む。それもそのはずである。今までに天狐族は伝説でしかなかったからだ。その姿は伝承でしか伝えられず、一生で会える確率は1%あれば良い方だからだ。
「アク、あの娘の怪我すべて治せる?」
「ユキちゃんのお願いとあらば何でも治せるよ~。」
因みにユキは自分に着いてきてくれた精霊たちがせがんだので、各々に彼らの属性からとった名前をつけ与えた。
火の精霊王 フィア
水の精霊王 アク
土の精霊王 グラン
雷の精霊王 ライ
光の精霊王 ホーリ
闇の精霊王 ダク
時の精霊王 イム
空間の精霊王 スス
元素の精霊王 エレ
と名づけた。因みに光の精霊王が、ホーリなのは光属性の精霊魔法がどちらかと言うと聖魔法に近かったからである。
ユキはアクに魔力を分け与えて、水の精霊魔法の、『エレメンタリ ヒール』を使った。すると、アカツキの火傷がすべて治り元の顔が表れた。少したれ目で愛嬌のある目、少しだけ強調するようにある可愛らしい鼻、白い顔に花が咲いたような唇があった。
「あっ、えっ!?話せる!喋れる!!」
驚いたように口から言葉がポンポン出てきそうになるのを頑張ってこらえているようだった。
「さて、アカツキちゃん。本当の姿見せてほしいんだけど、最初に自分の紹介からしなくちゃね。百聞は一見にしかずと言うし、わかっていると思うけど天狐族のユキと言います。貴女の名前は知っているけれどもね。見せてくれると嬉しいな。」
そういわれて、アカツキは狐の姿に戻った。尻尾は2本。色はあまり普通の狐と変わらずに茶色っぽい。しかし、尻尾は2本とも薄暗い色をしてる。彼女の名前っぽい。暁とは、朝日が上る少し前の薄暗い時を指す。色合いがそれに似ているのだ。
「あの、ユキさま!この怪我を治してくださりありがとうございます!私は自分の意思でユキさまについていきます!」
その言葉を聞いてから、ユキとアカツキはお互いの情報を話し合っていた。話しているうちにアリアとアキが帰ってきた。
「ユキちゃん、アカツキちゃんお待たせー!たっくさん買ってきたよー!」
「ユキとアカツキ、最初にいっておく。すまぬ止められなかった…………」
何を、と聞こうとする前にアカツキと何故かユキの着せ替えショーが始まった。ユキは男っぽいけど女の子風の服を、アカツキはメイド服を中心に買われており、中にはワンピースなどの可愛らしいものもあった。そして、アキが気を聞かせたのか部屋着やここからでるのに必要な顔を隠すようなものもあった。一通り着終わったら、二人ともくたくたになっていた。
その後、ユキはアカツキをつれて買い物をし、薄暗くなったので学園へと帰ってきた。
「ねぇ、アカツキちゃん。私は貴女が奴隷でいるのが本当に嫌なの。だから、解放するけど良い?」
「ユキさまが私の雇い主でいるのでしたらこのままでも良いのですが…………ユキさまがそれが良いとおっしゃるのならばそれで良いかと。ですが、私は先程申した通りユキさまに着いていきます!」
こうしてアカツキは奴隷から解放されたが、ユキのそばを離れなかった。
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