表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夢が無くなるとき

作者: 手抜三太郎

 僕は毎日夢を見る。それも内容はとても現実味のある夢だ。自分の部屋のベッドから目が覚めて、現実と何も変わらない生活をする夢だ。毎日見るせいか、見た夢の内容を明確に記憶から引き出せる。ここまではよく見かける普通の人と変わりはない。


 問題はここからなのだ。


 現実味のある夢の中に、時々凄まじく現実離れした現象が出現する。例としてあげるなら、突然家が消えたり、人が大量に死んだり、トイレが爆発したり…そんな感じだ。それを僕は「イレギュラー」と名づけている。こいつの恐ろしい所は、この「イレギュラー」が夢に現れるとそれがそのまま現実へ反映されてしまう。

 予知夢とはワケが違う。

 僕のせいで周囲の人間を苦しめることにもなるし、楽しませることにもなる。

 この奇妙な能力は誰にも話していない。


 何故なら話せる人間が僕の周りから消えた。そう、僕のせいで周りの人たちが消えた。

親も、友達も、恋人も。だから僕は独りだ。これからも独りだ。どうせ新しい関わりを持った所で、僕の夢で死ぬと思うから。


 この「イレギュラー」を利用して皆を生き返らせることができたらどれだけ幸せかと何度も考えた。でも、夢はそれを叶えてくれない。皆が死んだ後の生活を送る夢が延々と続いていくだけだった。



 生まれつき持ったこの能力は、子供の頃は非常に嬉しく思った。アメ玉がおもちゃ箱の中から大量に溢れだしたり、お留守番してる間だけクマの人形とお話できたり、幼い頃の僕にとってそれが「イレギュラー」だった。夢のある夢だった。

 歳を重ねていく度、知りたくもなかった現実を知っていった。

 殺人、イジメ、自殺、社会の黒さ。そんな事を知ってから僕の見る夢は、いつしか夢の無い夢へと変わった。


 一生、家から出ること無く両親に愛され、世間を知らないままの生活を送っていたらどうなっていただろう。あの頃の夢に満ちていた僕は何処へ消えたのだろう。


 これからも僕は誰もいない家で独りだ。

 願いが叶うなら、夢なんてもう見たくない。



 こんな能力、無ければよかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ