番外編:悪役令嬢の些細な変化
話の区切りに番外と称して、主人公以外の視点でお送りします。
無理矢理まとめたので、短いです。
私の名はカタリナ=マッカーサ。上流貴族の一つである、マッカーサ家の長女であります。
五大貴族のリナール家のウィラクス様と婚約し、いずれはレヴァリア王国宰相の妻となるのが私の人生の道。それを信じて疑わず今日まで過ごしてきたのですが、最近になって不穏な輩がウィラクス様とエルンスト様の周りに出現したのですわ。
ウィンダリア家の養子だという黒髪黒目の小娘。作法から何から見るだけで、平民の娘なんて分かりきっているのに、なぜあのウィンダリア家の養子となりえたのか。何か薄汚い真似でもしたに違いありませんわ。そしてなぜ、あんな小娘をウィラクス様もエルンスト様も気にかけるのか。きっとあの小娘は魔女の類に違いないのでしょう。
そんな小娘の正体を暴いてお二人に正気に戻ってもらわないといけないのが今の私の使命。そのためならば私はどんなことだって致します。全てはこの王国のためなのですから。
そうと決めた私がとった手段は、手始めにアーシャ様を手籠めにすることですわ。
五大貴族の一員でありながら、どうしようもない落ちこぼれのアーシャ様。見ているだけで本当は不愉快なのですが、ウィンダリア家に近づく者としてはこれ以上ない相手でしょう。
アーシャ様にお願いした仕事はあの小娘の監視。何から何まで能のないアーシャ様に仕事を与えただけでも感謝してほしいくらいですわ。
ですが……
「どうかなさいまして、カタリナ様?」
物思いに耽っていた私に声を掛けてくださったのはミレイさん。私の級友のお一人ですわ。隣に座るアンリさんも首をかしげてこちらを見ていらっしゃる。あざとくて可愛らしいわ。
「いいえ……少し考え事をしていただけですの」
私たちは今週一で行われる恒例のお茶会の真っ最中。ふともう一つある空席に目を移すと、十分ほど前までそこに座っていたアーシャ様を思い出します。
五大貴族のバレリアナ家、唯一の落ちこぼれ。出来損ない。操り人形。口も聞けない不完全な人間。彼女を形容する言葉はいくつあったかしら。
そんな風に思っていたのは私も例外ではないのだけれど……。
「…………」
再び私は手に持っていたレポートに目を通す。
そこには小娘の一週間の監視報告。学院内での動きから休日の行動まで、全てを網羅したかのような内容。それは小娘の一週間の行動が目に浮かんでくるほどに。あぁ、そう考えたら小娘がエルンスト様に笑いかける姿が目に浮かぶわ。本当に許せない。
さて、問題はこのレポートを書いたのが本当に落ちこぼれのアーシャ様なのかということ。いいえ、疑問を持つまでもなく、これほどのものをアーシャ様が書けるわけもない。それはつまり、アーシャ様は他の誰かにこの仕事の仲介をお願いしたということですわ。私に内緒でそんなことをするなんて、案外悪知恵は働くのかしら。馬鹿にされたみたいで許せないわ。
お茶会に誘ってそれとなく探ろうにも、何を聞いてもはぐらかしてばかり。どうあっても真相を話す気もないみたいですわ。たかがアーシャ様のくせになんて生意気な。
こうなったら私も意地でも知りたくなりますの。アーシャ様がどこの誰と繋がっているのか、それを知るのは王国宰相の妻となる私の役目でもありますわ。
ハッキリ言いまして、もうあんな小娘なんてどうでもいいくらいに、アーシャ様の繋がりの方が気になりますの。もちろんだからと言って小娘を野放しになんてさせませんけどもね。ウィラクス様にもエルンスト様にも近づくなんて、絶対に許せないのだから。
「フフフ……」
「カタリナ様?」
私が微笑を零しただけで、お二人は何をそんなに怖い顔をしているのかしら。失礼ね。
「何でもありませんわ。それよりも、ミレイ様、アンリ様」
「どうしましたか、カタリナ様」
「私これからはアーシャ様と仲良くしたいと思いますの。お二人にも手伝って頂きたいのですわ」
「アーシャ様と、ですか?」
「いきなりどうしたのです?あんな落ちこぼれの者と仲良くだなんて……。今日もいきなりお茶会に現れて私驚いてしまいましたわ」
それはそうですわよね。私も自分で驚いていますもの。
「なぜでしょうかね。私にも分かりませんわ。ですが、アーシャ様にはこれからもお役に立ってもらうことも多いでしょう。私たちにきっと損はありませんわよ」
「あら?悪い顔をしてますわ、カタリナ様」
そうかしら?
私が再び微笑を零すとまたお二人は怖い顔をしておりましたわ。私の顔はそんなに怖いのかしら。
さぁ、逃がしはいたしません、アーシャ様。
絶対に貴女の秘密を暴いてさしあげるわ。




