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異界の巫女  作者: ハル
ゲームスタート
26/56

アーシャのストーカー事情1

 昨日はナギとフィデルと久しぶりに一日中遊び倒した。

 自分の思ってた以上にストレスは溜まっていたようで、とても満喫した一日で、帰ったらルーナになぜかジト目で睨まれたりもした。

 気分を切り替えて今日からは自分から仕事をこなそうとしたら、朝一で早速カタリナに昨日遊んでいたことを怒られた。

 日曜日も主人公の監視をしろって?

 本物のストーカーじゃないか。

 しかしよくよく考えれば、ユキさんの毎日のサイクルを知ることは私にも益がある。

 ある程度の行動範囲が分かればそれを回避したり、イベントを予測するのも容易い。

 よって、今日から一週間だけは緻密に彼女をストーカーすることにした。

 その密な報告でカタリナを黙らせるのも目的だ。

 そうと決まれば善は急げ。


 4月○日 月曜日


 午前中は共通授業。主に公国語や歴史、数学などと前世での現実と似たようなものが多い。いくらゲームでもこれほど類似点が多いことはさすがの私も初めは驚いた。

 この世界に来たばかりのユキさんは当然分からないことだらけであり、忘れがちだが彼女は16歳で本来ならば高校一年生なのだ。それが知らずと二年飛び級したものだから、数学ですら付いて行くのも精一杯だ。いや厳密に言えば内容は全然違うけれどもね。

 ちなみにだが、この国の言語は当然日本語ではないが、ゲームの恩恵か言葉も読み書きも特には問題ないようである。

 私の席は窓側の後ろの方で、彼女の席は中央前と教卓の真ん前だ。右隣に姉と後ろに王子、そして右後ろにウィラクスと四人があそこに固まっている。私の席からでもその神々しいオーラに目が霞むのだから、目の前にいる教師はその比ではないだろう。

 三学年Aクラスの担任であるワーラル先生はただでさえ貴族に対して逆らえないところがあるのに、その生徒が王子や五大貴族の子息、更には訳ありのウィンダリア家の養子と来れば胃に穴が空いてもおかしくはない。いつも王子たちにペコペコしており、心なしか身体が日に日に細くなっていってる。

 気弱さに関しては割とビート先生と良い勝負かもしれない。でもビート先生がこのクラスの担任だったら、すでに胃潰瘍で入院していると思うけれど。

 さて、そんな授業の風景であるが、私の位置からすればユキさんを観察するにはちょうどいい。

 そして半日見て分かったことと言えば、彼女はとても勤勉だということだ。

 先生へと直接質問することはなかったが、分からないことがあれば逐一姉に聞いている姿が見える。それを後ろから王子が茶化したり、ウィラクスが更なる解説を披露したりと四人の仲はなかなか良好に見えた。

 余談だが、その度に廊下側にいるカタリナが怖い顔で睨んでいたりもしていた。


 昼休みを挟むと午後の選択授業が開催される。

 月曜日は戦闘実技だ。

 ユキさんはこの授業は取っていないようだが、王子たちが選択しているために姉と応援に来ているらしい。外の広場で行っているのだが、その端の方で二人並んで座っていた。

 ちなみにだがこれはゲームでもあり、応援システムと呼ばれている。主人公が選択していない授業に応援に来て好感度を高めるわけだ。

 ゲームに忠実に彼女は動いてるようだった。

 肝心の授業風景といえば、実技とだけあって一番に激しい授業内容だ。

 基本的に武器は剣に統一されているが、希望があれば槍でも弓でも何でもありだ。それを可能にしているのは全ての武器に精通している講師のおかげだろう。

 シルヴァ先生。

 端正な顔立ちに甘いマスク。学院の教師陣の中で男女から一番に支持率が高い先生だ。彼に近づきたいためだけに授業を取る女生徒も少なくない。もちろんその実力もお墨つきだ。

 そんなシルヴァ先生だが、私から見ればどこかアークさんを思い出すのだが、実際二人の間には共通点が多数あった。

 なんとシルヴァ先生は現役のSランク冒険者なのである。何でSランク冒険者が学院の講師をしているのかは謎だが、何かしらの理由があるのだろう。更に言えばシルヴァ先生はアークさんのことを尊敬しているのだ。まだ幼い時の憧れでもあったらしい。

 戦闘実技を選択しているゲームの主要メンバーは、エルンスト王子、ディーン、ルクス、ヨハンの四人だ。そんな貴族の彼らでさえシルヴァ先生の強さを認めており、だからこそ冒険者でありながらも貴族平民問わず慕われているのだろう。

 授業は主に剣を使って戦闘の基礎を学ぶことにある。時にはシルヴァ先生と模擬戦などしたりするのだが、その時はギャラリーが多く集まり授業の中でも特段盛り上がりを見せる。その人気恐るべし。

 ちなみにゲームでは学院の講師はただのモブなので、シルヴァ先生を初めて見た時は驚いた。現実は侮れない。

 目的のユキさんは王子たちを見守っており、打ち合いで怪我をしたりすると甲斐甲斐しくその手当を進んでしていた。やはり攻略対象の三人の中ではディーンとの距離が一番近い気がする。反面ルクスはやっぱりユキさんに対しても興味はゼロだった。

 そんなユキさんに頑張れと心の中で声を掛けながら、私の視線は半分以上弟のヨハンに注がれている。私から見てもあまり剣の才能を感じなく、三人と見比べるといまいちパッとしない。

 頑張って、ヨハン!

 決して表にはしないけど、私は貴方を応援しているわ。

 最後の方は主にヨハンの応援をしていたが、気づけば授業は終わっていた。

 ユキさんはみんなと談笑しながら帰るが、寄り道せずにウィンダリア邸へと帰ったようだ。当然ウィンダリア家のお迎えは付いている。というか、恐らくだが授業中にもそんな存在がいる。

 同じように彼女を見ていたから気づいたのだ。ただ気配は丸わかりなので、その道のプロではないのだろう。心配性のクラウス様が寄越したと思われる。

 こうして今日の一日を終えた。

 ちなみに私は最初から最後まで、風の魔法を使って上手く気配を消している。

 昔から人目を忍ぶことを気にしてたら、いつの間にか気配消すの上手くなっちゃったんだよね。




 4月×日 火曜日


 午前中はいつもと同じように共通授業。

 今日も今日とてユキさんは真面目に勉強をこなしている。時折姉に尋ねるその姿はとても可愛らしく、姉もそう思ったのか授業中にも関わらずユキさんのことを抱き締めたりもしていた。そんな二人に後ろの男性陣は何とも言えない顔をしていた。

 昼休み。

 弁当組と学食組で分かれるのだが、貴族は大抵学食だ。

 ユキさんたちも例外でなく、学食の貴族専用座席へと王子たちと座る。ここではディーンとカインとヨハンも一緒だ。ルクスはいない。

 この貴族専用というのが、平民の方々からしたらとても遺憾なものであるのだが、そこは貴族に逆らえるわけもない。昔はクラスと同じく座席なんて一緒だったのだが、いつからか二つに分かれてしまったらしい。

 彼らは談笑に花を咲かせているようで、仲睦まじい様子が終始見られた。王子が一度ユキさんにボディタッチをしたのを私は見逃さない。姉を裏切ったら許さんぞ?

 午後の選択授業は戦術理論。これに参加しているのはウィラクス、ディーン、ルクス、ヨハン、そしてユキさん自身だ。

 王子は考えたりするのが嫌らしく、理論系の授業は取らないで実技だけ取っているからここにはいない。逆にウィラクスとユキさんは実技は取らないで理論は取っている。

 理論とあるからには座学の授業なので、教室内で行われる。ユキさんはやはり教卓の前に陣取っており、その隣にディーンとウィラクスが座る。ルクスは彼らから離れたとこに座り、ヨハンは迷う素振りを見せながらもルクスの隣へと座った。

 勇気あるわね、ヨハン。

 嫌な顔をするルクスに気づいているのか、気づいていないのか。

 この戦術理論であるが、戦闘実技に及ばずとも人気の授業である。その理由がまた講師にあり、これを務めるのが何とオルガスト=アーザイク、アーザイク家当主その人なのである。

 オルガスト様はディーンとデューク様の父親であり、騎士団長の座をデューク様に預けると学院の講師の立場へと成り立った。

 前騎士団長の講義は経験から成り立った戦術そのものであり、その価値はとても高い。またアーザイク家は騎士団を代々率いる家系からか、平民たちへの当たりもとても柔らかいのだ。見た目は厳格そうに見えるが、実際は誰に対しても大らかの対応をする陽気な人でもある。それがまた人気に繋がる一つでもあるだろう。

 授業内容はいろんな陣形の使い方だったり、過去に実際にあった戦争などを用いた戦術を解説したりと、主に集団戦の戦術理論が多い。実は私もこの授業は取りたかったのだが、私が取ると奇異な目で見られることが目に見えていたので泣く泣く諦めた。

 それなのにユキさんは堂々と授業を受けているのだから、少しだけ恨めしい。まあ彼女にとっては来る戦いのために必要な知識なのだろうけれど。

 この授業では主にディーンがユキさんに絡んでいる。敬愛する父の授業だけでも嬉しいのに、その凄さを彼女へと伝えたいようだ。騒がしすぎてオルガスト様から怒られてもいるが、それが教室の皆の笑いを誘っている。

 ディーンとの仲はやっぱり良好っと。彼の場合はゲーム序盤では好感度が上げやすいので納得の結果だろう。

 授業が終わるとやっぱりユキさんは寄り道せずにウィンダリア邸へと帰る。

 ちなみにここで好感度が高いキャラがいると、寄り道デートに発生するのだ。

 まあ序盤では縁のない話だろう。

 こうして二日目のストーカーも終わりだ。



 4月△日 水曜日


 午前中。今日は珍しくウィラクスがユキさんへと話しかけていた。

 徐々に、徐々にだが心を開いていってるように見える。

 昼休み。ディーンが昨日の話を絶えずユキさんへと話しかける。王子はうんざりとした顔をしていた。

 今日の魚定食がとても美味しかった。

 午後。今日の選択授業は魔道実技。選択しているのはカイン、エルンスト王子、姉のリーシャだ。ルクスは魔法はからっきしなので、魔道系の授業は取っていない。それに同調するようにヨハンも取っていないのだが、ヨハンはそれでいいのかしら。ルクスに憧れて剣一本に絞っているが、実はヨハンは魔法の才能の方が高い。そこはバレリアナ家の一員なのだから当たり前なのだが、それを捨ててでもルクスに一生付いていくつもりなのか。

 お姉ちゃんは弟の未来が心配よ。

 なんて思うけど、それよりも私は自分自身の未来が心配なのでヨハンに何かを言うつもりもない。

 この授業で意外なのが、エルンスト王子だ。王子の剣の腕は誰もが認める一流なのだが、魔法の能力はそこまで高くない。それなのにプライドの高い彼が魔道実技を選択したことが不思議だ。だけどこの授業だけが、唯一婚約者である姉との接点なので私的には大いに大歓迎でもある。

 魔道実技の授業はその名の通り、魔法を使った実戦に限る。様々な属性が集う中、それを教える人も大変なのだが、この授業の講師はジラン先生だ。その人気は教師陣の中でも下から数えた方が早い。

 ユキさんが隅から応援する中、授業は始まる。やはり目に見えて凄いのはカインと姉だろう。他の生徒たちと比べると群を抜いている。そしてそんな二人と自国の王子をジラン先生は特別に扱う。その次に他の貴族たちにも良い顔を見せるが、後の平民たちには基本的に陰湿だ。目に見えての講師の貴族贔屓に、この授業は人気がないのだ。

 やがて授業も終わり、ユキさんはウィンダリア邸へと帰る。

 ちなみに彼女の光属性は特殊なため、ウィンダリア邸でクラウスさんから特別に魔法の使い方を受けているらしい。だから魔道実技は不要なのだ。ジラン先生が光属性を教えられるとも思えないので正しい選択だろう。


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