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異界の巫女  作者: ハル
ゲーム本編前
2/56

思い出した記憶

 目覚めるとそこは見慣れた部屋の天井だった。


「あれ……私はいったい……?」


 どうしてベッドの中で眠っているのか、さっぱり思い出せない。

 確か私は……お姉様や王子様たちといつものように遊んでいて……王子様が突然城下街へ行こうと言い出したんだっけ。

 それから人目を盗んで城から抜け出して、街中の怪しい路地裏に入ってゴロツキたちに囲まれて、今にも襲われそうだって時に助けてくれた人がいて……あぁ!


「そうだ!あの人はアーク様!それに私は……アーシャ……!?」


 アーシャ=バレリアナ。アーク様。そして姉のリーシャにエルンスト王子。それからこのヴァレリア王国という国。

 私はその全てを知っている。

 それは私が散々遊んだ乙女ゲームの世界じゃん!


「え?いったいどういうこと……!?ここって乙女ゲームの世界?いやいや、そんなわけないわよね。……でも私の中にあるこの記憶って……前世のもの?」


 あーもう!すごい混乱してきた!ちょっと整理しなきゃ。


 まず私の名はアーシャ=バレリアナ。6歳。

 ヴァレリア王国の五大貴族の一つ、バレリアナ家の次女。

 家族は両親に双子の姉、そして1歳違いの弟の五人家族。ちなみに家にはたくさんの執事さんやメイドさんがいる。


 これがまず私自身の情報。だけど6歳の少女が突然ここが乙女ゲームの世界だなんて言うわけはない。

 正直自分でも信じられないけど、どうやら私には前世の記憶があるようだ。といってもつい今しがたそれを思い出したわけなのだけど。


 前世の私は地球の日本生まれ。ごく普通の家に生まれ、平々凡々に育ってOLにまで就職した。

 そして自慢ではないが私は相当に男運が悪かった。

 好きになった人とは絶対にうまくいかず、うまくいったと思ったらただ遊ばれていただけだとか。挙句の果てには、興味のない男からはストーカーされる始末。

 いい大人になっても彼氏は出来ず男性不信に陥いったのも無理はなかったはずだ。そんな私に乙女ゲームを勧めてくれたのは友人だった。


 異界の巫女


 乙女ゲームらしからぬファンタジーを連想させる名前なそのゲームは、その名の通り世界を脅かす魔王を封印するために異界の地球から巫女となる少女を召喚するとこから始まる。

 召喚された少女は右も左も分からぬまま、まもなく復活する魔王と戦う力を手に入れるべく王立学院へと一年間通うことになる。その一年間少女は元の世界へと帰るためにも頑張り、その中で攻略対象たちと恋愛していくのだ。

 RPG色が強く、恋愛や育成ゲームとしても評価を得て、それなりに人気が高かったこのゲーム。本編は学院での一年間で終わり、魔王なんて姿を現さなかったのだけれども、ユーザーの声が多くその後の魔王を倒す道中を描いた続編の発売も決まっていた。当然だがその道中で更なる甘いシーンが多い恋愛ゲームとしてだ。

 初めて乙女ゲームをプレイした私も当たり前のようにハマり、続編も買うつもりだった。

 この頃すでに私は二次元の男性に熱を入れていたのだが、それがなぜだかストーカー男に逆上され私は襲われて殺されてしまったのだ。


「何この前世……よりによってストーカーに殺されるなんて……」


 そんなもん思い出さない方が良かった。……なんていくわけにもいかないのだ。

 この世界が本当にゲームの世界ならば、私というアーシャの役割は主人公のサポートキャラ(姉のリーシャ)の妹であり、主人公を脅かす悪役令嬢(とある貴族)の手下なのだ。

 ゲーム内でのアーシャは双子の姉の優秀なリーシャと比べられて劣等感を抱きながら育っていく。本編が始まると、突然現れた主人公が攻略対象たちと仲良くなるのに嫉妬した悪役令嬢にいいように使われてしまうのだ。

 最終的にはバレリアナ家の面汚しとして寂れた田舎へと追いやられてしまう。そんな結末だ。

 そしてここで死なないだけマシだろう。なんて思うことなかれ。

 続編の発表によって、実は田舎への輸送中に魔物に襲われ死亡するのだが、これまでの恨みや妬みがアーシャの心を強く歪ませ、魔物となって主人公一行を襲う敵となるのが分かったのだ。

 これにはユーザーたちも驚きの声ばかりで、ただでさえ内気な性格で利用されただけなのに、それが続編で魔物にも利用されるのだ。これには同情的な声も多く、私も同じくアーシャに同情した口だ。中には自業自得とも言われ両派から論議されたものの、もはやそんなこと自体はどうでもいいのだ。

 問題はこのままだと私がその道を辿ってしまうということだ。

 正直前世を思い出した今となってはそんな悪役令嬢に利用されるつもりもないし、内気な少女として育つこともないだろう。これからの行動次第では家を追放されることだってないはずだ。

 とりあえずは死亡フラグだけは回避しないとね。

 前世でも殺され、今世でも殺されるなんてまっぴらごめんである。


 さて、これからどうするか考えないと。


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