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5話 TODO:襲い来る魔者(マモノ)と戦ってみる

「そろそろ来る頃かなー、と思ってたよ。さてさて、初めてエンカウントするマモノ君は何かなー?

 ここは、定番のゴブリン? それとも犬とか猪が凶悪化したみたいな魔獣って奴かなぁ……。」


 茂みから現れる未知との遭遇に恐怖……は、あまり感じていないようで、ショースケ

は、この世界に来た時から、ずっと腰にぶら下がっていた、片手剣を抜き、両手で持った状態で下段右手側、いわゆる脇構えとなる構えをとった。

 ちなみに、ショースケの持つ片手剣は、よく見るファンタジー系のゲームの片手剣とは異なり、日本で云うところの、大脇差に似た物だった。

 その刀身は厚めで形はやや反っており、そして両刃ではなく、片刃になっている。そして柄の部分は、両手でも持てるように長めに出来ていた。


 ショースケは、咄嗟に対応できる状態で身構えているが、その表情には、興味と好奇心が滲み出ていた。

 その時、「ガササッ!」という音と共に、何かが飛び出してきた。


「グルアアアァァァッ!!」


 身の丈以上もある茂みの奥から飛び出してきたのは、何と人間だった。


「――何だ、と。」


 しかし、飛び出してきた人型のモノは、普通の人間には見えなかった。

 かなり精悍な体付きの男性のようではあるが、皮で出来た鎧はあちこちが破れ、右手に持っている片手剣も、かなり錆びついているようだった。

 が、普通ではないと判断したのは、それだけではなかった。その男の肌は、やけに黒ずんだ状態で、見開かれた眼は血のように真っ赤に染まり、鈍い光を放っていた。そして、開け放たれた口からは、やけに長い牙が4本、本来であれば犬歯が生えている部分から生えていた。


(――これは、まったくの予想外だ……まさか、この世界のマモノって奴が、ゲームみたいな魔獣ではなくて、人間が異形化した奴だとはね……。あぁー、そういえば戦闘訓練も対人戦に特化してたのって、こういう事だったのか……。)


「……グルアアアァッ!」

「チッ!?」


 その魔者は、ショースケを視界に入れた途端、その手に持っていた片手剣で切り掛かってきた。戦闘経験も無く、冒険者登録したばかりの初心者では、この一撃は避けられるような速さではなかった。

 しかし、上段から大振りに切り掛かってきた剣戟に対して、ショースケは踏み込みつつ、半歩程度身体を外にずらし、右手で相手の手首辺りを打ち落としながら脇で抱えると同時に、左手で相手の右手の肘を捻り落として極めた。

 現代世界で習っていた合気道、しかも習い始めの頃から繰り返し練習していた一本取りの型がうまく嵌ったようだ。


「ゴアアァッッ!!??」

「――よし! 関節は人間と同じようだな。痛覚もあるみたいだが……なっ!?」


 肘をしっかり極めていたショースケだったが、魔者は極められた腕のまま力任せに立ち上がり、その腕を振り回してショースケを投げ飛ばした。


「カアアアァァァッ!」

「ぐっ!? くそっ、なんて馬鹿力だ!」


 ショースケは投げ飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がったが、咄嗟に起き上がりながら大脇差を八相に構える。そこへ魔者は素早く飛び込みながら、外から横薙ぎに斬り掛かってきた。


「だが、エリナさんに比べたら遅いっ!」


 飛び込んできた魔者に対し、ショースケは一歩踏み出して相手の間合いを崩し、片手剣を持つ右腕を切り落す。更に返す刀で、魔者の胴を薙ぎ払った。

 魔者の身体は見事に2つに分かれ、その場に崩れ落ちた。


「ゴアァァァ……」

「こいつ、まだ動くのかっ!」


 胴から2つに分かれ上半身しかない身体で、こちらに向かって来ようとする魔者に対して、ショースケは、刀を逆手に持ち直して魔者の首に突き刺し、地面に縫い付けた。


「グゴボアァァァ……」


 首に剣が突き刺さった魔者は、しばらく呻きながら身悶えていたが、やがて力尽き、黒い塵と化した。


「勝った、か。」


 ショースケは、戦いに打ち勝った事を悟り、肩の力を抜いた。


(――しかし、妙だな。いくらエリナさんに扱かれたとはいえ、今まで本物の剣を持った事も無いし、殺し合いだってした事も無い、この俺が恐怖心も無く、こんなにもすんなり魔者を殺せるものか?

 よく小説とかだと、腕の震えが止まらないとか、吐き気が収まらないとか、よく見るけど……何ともないな。

 これも、異世界クオリティってやつなんだろうか?)


 ショースケの考えは、当たらずとも遠からずといった所だった。

 実は彼が持つ「精神異常耐性」の技能。この技能により、初めての殺し合いでさえも、恐怖心を持つ事なく、落ち着いて対処する事ができたのだった。


 ショースケは気を取り直して、魔者がいたその場所を見てみる。

 すると、そこには両手のこぶし大程度の大きさの青い水晶玉のみを残し、魔者の身体、それに装備までも、全て塵となって消えてしまっていた。

 魔石しか残らない事態に多少戸惑いながら、ショースケはその水晶玉を拾い上げた。


「これが魔石ってやつか。こいつを持って帰ればいいんだったな。それにしても、武器や着ていたものまで消えるっていうのは、どういう仕組みになってるんだ?

 ……まぁ、あれこれ考えたって答えが解るわけでもないし、とりあえず目的の薬草を採って帰ろう。」


 その後は、特に何かしらの遭遇も無く、薬草探しに専念する事が出来た。


「よーし、薬草も目標の30株も採った事だし、帰りますかー!」


 ショースケは、摘み取った薬草を紐で結び、肩に担いで意気揚々と街へ戻るのだった。

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勇者人形となりて異世界を巡る
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