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35話 TODO:町の混乱を片付けてみる

大変お待たせいたしました。

更新が遅れた言い訳などについては、後書きに記載してますので、よろしければ見てやってください。

「おーい。副町長のバーニーを捕まえてきたぞー。」


 副町長の所に行くと言って出掛けて行った1時間後、ショースケは1人の人間を小脇に抱えながら戻って来た。ちなみに、小脇に抱えるには、無理な体格と思えるが、ショースケは小荷物を抱えるがごとく、軽々と抱えていた。

 そして、気軽にお土産でも持ってきたと言いたげに、副町長のバーニーを町長達の前に放り投げた。


 ドザッ


「ぐはぁっ!?」

「ほっ、本当に、副町長の奴だ……。」

「ショースケ様……あなたは一体……?」

「……よく1人で無事だったな、あんた……。」

「兄ちゃんって……いや、本当に凄いとは思ってたけどさぁ……。」

「そうね。兄様の強さは想像すらできない。」


 町長をはじめ町の人達は、ショースケの強さを知らないが為に、1人で何ができるのかと高を括っていたが、出掛ける前の言葉の通り副町長を無力化させてしまった事に、カイやギルも含め皆、驚いて呆気にとられていた。


 しかし、そんな中でもユーリだけは、ブレずに当たり前と言わんばかりにショースケを褒め称える。


「流石、ご主人様ですぅ!!」


 皆の視線を一気に集めるユーリだった。


「……流石、姉様。ブレない。」

「そうだね……兄ちゃんの事を信頼してるっていうか、何て言うか……。」


 ショースケを褒め称えるユーリを見て、違う意味で関心するカイとギルの2人だった。

 そんな3名を軽く流しつつ、ショースケはネルザの目の前に立ち、顔を覗き込みながら手を振る。


「おーい、町長さん。しっかりしてくれ。」

「……はっ!? しっ、失礼しました。まさか、本当に副町長を無力化されて、連れてきてしまうなんて……。」

「まぁそれでも、これが現実だよ。」

「はい、そうですね。この巡り合い……いいえ、この子達が、ショースケ様とユーリ様を連れて来てくれた事を感謝致します。そうでなければ、今頃私や兄さん達も命は無かったでしょう。」

「うん。僕達が元気でいられるのも、兄ちゃん達のおかげだよね! カイ!」

「ん。そうね。兄様達のお陰。」

「まぁ、俺達が出来る事をやったまでだ。俺達だって、全ての人を救えるわけじゃないからな。」

「それでも、多くの人が救われた事は確かです。本当にありがとうございました。」

「……ケッ。」


 副町長のバーニーを捕らえて盛り上がる一同の中、バーニーは1人、悪びれる様子もなく、唾を吐いて悪態をついた。そんなバーニーに向かって、ネルザは口を開く。


「……副町長。貴方は、自分のされた事について、何も反省しておられないのですか?」

「ふん! お前等のような獣人が町に居るだけでも身の毛がよだつというのに、町を収めるのが獣人だなんて、そんな馬鹿な話があるかっていうんだ! おい、お前等!! 俺には金があるんだっ! 今からでも遅くないっ!! こいつ等を追い出……。」

「随分と元気だな?」

「ゴボゥッ!?」


 勢いよく持論を喚き出したバーニーだったが、そんな独りよがりな演説を中断させるが如く、2人の間にショースケは割り込み、バーニーの腹目掛けて蹴りを入れ、壁へと吹き飛ばした。


「さっきまでウンウン唸ってるだけかと思ったが、まだそこまで元気があるとはねぇ……というよりも、お前の我儘なんて聞いてられないんだよ。」

「うぐ、ぐ……。」

「この世界には、数多の種族が住んでいるんだ。同じ世界で生きている者同士、協力し合って生きていけないようじゃ、滅びに突き進むだけだぞ? それに、人間族だけが優秀ってわけでもないだろうよ。」

「なん……だ、とぉ……? 貴様、だって……人間、族だろう、が……。」

「そうだな。確かに、俺は人間族だ。

 そして、お前みたいな差別しかできないアホも人間族ってわけだ。ほら、皆が優秀ってわけじゃないだろう?」


 ショースケがおちょくる様な突っ込みを入れると、町の人々はクスクスと笑い出した。バーニーはショースケに言われた事、それに笑いながら自分を見下すような目に晒されている事に怒りを覚え、顔を真っ赤にする。


「!? お、おの、れ……。」

「まぁこんな戯言なんてどうでもいいから、町の方を何とかしないとな。この馬鹿を捕らえた事を、金に目が眩んだアホ共に教えて差し上げないといけないんだが、どうしようかね?」

「それなら、良い物がありますよ。これをお使い下さい。」

「え? これ?」

「はい。これはですね……。」


 ~ ~ ~ ~ ~


 ショースケは町に蔓延る副町長派の人間達に、金蔓となる副町長が捕らえられた事を知らしめるため、バーニーを肩に背負い上げ、商館の屋根をよじ登っていた。


(それにしても、こんなものが町中に響く程の拡声器になるっていう魔法道具とはね……何か、おもちゃのメガホンみたいだけど、こんなので本当に大丈夫なのかね?)


 屋根の平らな部分に登ったショースケは、バーニーを足元に落とし、よくスポーツの応援で使うようなプラスチック製のメガホンみたいな道具を眺めつつ、疑問に思っていた。


「……まぁ、とりあえずやってみるしかない、か。えーっと、これに魔力を込めながら話せば良いんだっけか……。」


『えーっ……副町長に付いている者達に告ぐ。町の中央にある商館の屋敷の上を見てみろ。』


 ショースケは、拡声の魔法道具に魔力を流し、声を出してみると町全体に広がるように大きな声が伝わっていく。この魔法道具は、元々ネルザ達が町の人々に連絡すべき事を伝えるように開発された魔法道具なのである。

 が、見た目はショースケの言う通り、おもちゃのメガホンにしか見えないものなので、そこまで凄い物とは思えないような代物だった。


「おぉっ!? スゲェ、本当に声がデカくなった!

 しかも、町長さんの言う通り、町全体に伝わってるみたいだな。遠くの方でも、こちらに伺う気配が伝わったくるな……いや、驚いてる場合じゃないな。とりあえず、続けないと……。」


『はい。見ての通り、副町長のバーニーっていう野郎は、町長派の俺が無力化させました! という事で、この大馬鹿野郎に付いて、これ以上、こいつの目的のために働くのは無意味だぞー!!

 大人しく町を去った方が利口だぞ! それでも、まだ歯向かうっていう奴は、この商館まで来い! 俺が相手になってやるぞ! ちなみに、俺の冒険者ランクは黒なので、そこら辺も良く考えろよー! 以上っ!!』


 ショースケがバーニーを片手でチラつかせながら演説を済ませると、町のあちこちでザワつき始めた。


「おい、あれ本物か?」

「うーん……遠くて良く見えないなぁ……おい! ガゼル、お前なら目が良いから見えるだろ!」

「あぁ……って、あれは副町長だ。あの人が命令出してた本人だ! 間違いねぇっ!」

「マジか……あぁーあ。それじゃ、この仕事はパァじゃねぇか。さっさと街に戻るかぁ……。」

「そうだな。これ以上、ここに居ても1オロにもなりゃしねぇよ。とっとと帰ろうぜ。」


「なぁ、あれを助けだしゃぁ、特別報酬とか出るんじゃねぇのかぁ?」

「やめとけ、やめとけ。お前のランクは緑だろうが。黒ランクの奴に叶うわけないだろうが。」

「でもよぉ、こんだけの人数がいるんだったら、何とかなるんじゃねぇかぁ?」

「金だけで集まってるような奴等だ。いつ裏切られるかなんて、分かったもんじゃねぇぞ?」

「あー、そうだよなぁ。お前だって、いつ裏切るかと思ったら……。」

「あぁ? お前、喧嘩売ってんのかぁ?」

「嘘だよ。悪かったって……しょうがねぇなぁ、ホームに戻るしかねぇかぁ……。」

「そうそう。さっさと戻って稼がねぇと、お前が大好きな女も買えねぇぞ?」

「おぉ? そりゃマズイじゃねぇか。さっさと帰って金稼がねぇとな!」


 このような感じで副町長派の者達は、混乱に陥ったのだった。


 ~ ~ ~ ~ ~


 あのショースケの説得(?)の後、金蔓が居なくなったと気付いた副町長派の者達は勢いを無くし、次々と町を去っていった。2、3日も経つと、町の雰囲気も大分落ち着いたようだった。

 なお、バーニーが貯め込んでいた金は、冒険者をしていた頃から裏の仕事や、若手の者から不正を働いて懐に入れたもの。それに加え、町の人々から集めた税金を不正使用する事によって掻き集め、貯め込んだものだという事が隠し持っていた帳簿などから明らかにされた。

 その結果、今回の出来事だけに係わらず、積み重ねた罪の数々の刑罰を含め、バーニー自体も犯罪奴隷として連行され、未開領域の探索要員として駆り出される事となった。


 未開領域の探索要員というのは、この世界では刑罰として一番重いものとなる。人権という言葉など無視されたようなもので、必要最低限の装備しか与えられず、食料や飲み水も現地調達として未開の地に放り込まれるものである。

 大抵の罪人は、生きて帰って来る事が出来ない程、過酷な刑罰……いや、処刑方法と言っても良い位のものなのだ。例え、生きて帰って来れたとしても、精神が犯されているものが殆どだった。


 そんな未開の地へ送り出されるバーニーの姿は、二度と見ることは無かったと言う。




「本当にありがとうございました。」


 ネルザは改めて、ショースケとユーリに向かってお礼を述べ、深々と頭を下げた。そんな何度目かのお礼を受け、ショースケとユーリは苦笑いを浮かべつつ、ネルザを何度も宥めていた。


「それに、大した依頼料しかお払いできず……。」

「まぁまぁ。それについては、もう気にしないでください。町の整備や、村の復興などにも金は掛かるじゃないですか。それに俺達だって、元々は別の依頼のついでだったわけだし。」

「いや、兄ちゃん。もう、「ついで」って言うような規模の内容じゃないよ? 僕達を助けて、村を助けて、町まで助けちゃってさぁ……。」

「そうですねぇ。依頼自体はぁ、魔者発生の調査だけでしたからねぇ……。」

「ん。そんな事を軽々と、「ついで」と言える兄様が特殊すぎる。」

「う……。」


 3人の突っ込みにたじろいで、思わず口を塞いでしまったショースケだったが、それでも反論すべく口を開く。


「そう言うなって。あんだけ乗り掛かっておいて後は宜しく、なんて言えるわけないだろうが。」

「確かにそうですねぇ。あそこまでやっておいて、何もしないわけにはいきませんよねぇ。」

「だろう? まぁ、エリナさんとカールさんの特訓のお陰で、こんだけの活躍が出来たんだ。あの死ぬような特訓が無駄にならずに済んで良かったよ。」

「あ、あれですかぁ……? いや、あそこまでやらなくてもぉ、今回の事件は解決できたかと思うんですがぁ……。」

「そうかぁ? まぁ、無事に解決したんだから良し、って事にしておこう。

 ……そういえば、カイ、ギル。」

「ん?」

「何? 兄ちゃん。」

「いや……もう落ち着いた事だし、お前達はこれから先どうするのかな? と思ってさ。 町の方で町長さんと一緒に住むのか? それとも、クロサイト村に戻って、村長のザーラさんと……。」

「兄様っ!!」

「兄ちゃんっ!!」

「おっ!? お、おぉ……どうした?」

「私達も一緒に連れて行ってほしい。」

「昨日の夜、カイと話したんだけどね。兄ちゃん達が許してくれるんなら、僕達も一緒に付いて行きたいんだ。今はまだ、足を引っ張るとは思うけど……必死に特訓して、一緒に戦えるように頑張るから!!

 だから…………ダメ、かな?」

「ギルの言う通り。お願い、兄様、姉様。」


 カイとギルは一緒に連れて行ってほしい、とショースケに必死に頼み込む。2人に迫られたショースケは、思わず動揺してしまい、ついついユーリの方に視線を移してしまう。


「……私はぁ、ご主人様が決めた事なら、文句なんてありませんよぉ?」

「そうか…………うん、そうだな。

 分かった。カイ、ギル、俺達と一緒に行くか。」

「やったぁっ!! ありがとう! 兄ちゃん! 姉ちゃん!」

「ん。本当にありがとう。足手纏いにならないように頑張る。」

「はいぃ。これからもよろしくお願いしますねぇ。それに、ご主人様がついていれば大丈夫ですよぉ。」

「おいおい……それでも、まぁ、何とかするしかないか。

 とは言っても、この先の事も考えるとなぁ……なぁ、ユーリ。カイとギルにも、あの特訓を受けてもらおうかね?」

「ふえぇっ!?」

「え? ちょ、何? 特訓って何?」

「えっとぉ、それはですねぇ……。

 いえぇ、知らない事が幸せな事もありますよぉ。」

「え? え? どういう事?」

「秘密は良くない。」

「……ま、そのうち分かるさ。とりあえず、帰ろうか。」

「はいぃ!」

「……誤魔化された。」

「うん。でもさぁ……イヤな予感しかしないのは何でかな?」

「奇遇ね。私もよ。

 ……でも、兄様達について行くと決めた以上、多少の事でへこたれるわけにはいかないもの。」

「……うん、そうだね。頑張ろうね、カイ。」

「ん。」


 そう決意した犬獣人の双子だった。

 が、数日後には、ショースケ達についてきたことに後悔し始める事になるのは、ここだけの話。

ブクマしてくれてる皆様、更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

ここの所、全然、話の内容が思いつかず、筆が進まない状態だったために、今回の話しの執筆に多量の時間が掛かってしまいました。

プロット自体は出来てるので、エタる事なく最後まで仕上げるつもりです。ただ、不定期更新になってしまい申し訳ないのですが、また見ていただければ幸いです。

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