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33話 TODO:ロードナイトの町へ殴り込んでみる

「……ふぅ、着いたな。」


 辿り着いたロードナイトの町は、流石に町と言われているだけはあって、結構な規模の大きさだった。それに町全体を壁で囲んでおり、壁自体もかなり高く頑丈に作られているようだった。

 町に入るには、東西南北の4ヶ所しかない入口から入るしかなさそうであり、例え魔者や軍隊に攻められたとしても、簡単には攻めきれないように作られているようだ。


 本来であれば、門番がしっかりと入口を見張り、そうそう簡単に町の中へ入る事は出来ないのであろうが……今は、町の出入りを見張るべき門番は居らず、誰でも出入りが自由な状態になっていた。


 それでも、ショースケ達は念を入れて、町の人間に見つからないように、そっと町に近づいてた。


「町長はどこだーっ!!」

「早く探せーっ!」

「こっちには居ないぞっ! どこ行きやがったっ!?」


 町の中の混乱状況は大分酷く、町としての防衛機能などは全然働いていないようだった。聞こえてくるのは、荒くれ者達の町長を探す叫び声だけが響いていた。


「あらら……こりゃ、潜入どころじゃないな。」

「そうですねぇ。こんな混乱状態の中だったらぁ、特に怪しまれる事も無く入れるんじゃないでしょうかぁ?」

「そうだな。このまま町に入っても、特に警戒される事も無いだろうから、サッサと町長の所へ向かってみようかね。」

「えっ!? 兄ちゃん、こんな中でどうやって探すのさ? それに、こんだけの人達が皆んなして町長さんを探してるのに、見つかってないんだよ?」

「ん。このまま町長さんの家に行くにしても、目立つ。」

「そりゃ、そうだろ。それに、町長の家や仕事場に居たとしたら、既に見つかってるだろうしな。」

「それじゃ、どうするの? 兄ちゃん。」

「[概念魔法]、ですかぁ? ご主人様ぁ。」

「そう、その通り。[概念魔法]で探索魔法を作ってみようと思ってな。

 そこで、ギルとカイは、町長さんに会った事あるか?」

「ん。」

「うん、あるよ。」

「どういう人かって覚えているか? 特徴とか、顔とか。」

「ん。」

「もちろん、覚えてるよ。兄ちゃん。」

「そうか。それなら、いけるだろう。

 それじゃ、そのイメージを読み取るから、町長さんの事を思い出してくれ。」

「ん、分かった。」

「えぇーっとぉ……とても優しくて……。」

「ギル、声に出さなくていいぞ。考えるだけでいいんだ。」

「あ、分かったよ、兄ちゃん。えーっと……。」


(それじゃ、2人が考えている思考を、頭から、俺の手を伝って読み込めるようにして、後はそのターゲットの存在を確認できる場所を検索サイトのマップみたいにして、プロジェクターを使って投影するようして画面を出せば良いかな。)


「よし、こんな感じかな……[読込検索](マインドマップ)。」


 ショースケは、カイとギルの頭の上に手を乗せて、【力ある言葉】を唱えた。すると、ショースケの想定した通りに何もない地面にロードナイトの町の大体のマップと、赤く光る光点が現れた。

 その光点は、ほぼ町の中央にある大きな建物を指していた。


「兄ちゃん、これは?」

「これは、この町の全体図だな。丁度、上から見るとこんな感じなんだろうな。」

「凄い……。」

「うん、流石兄ちゃんだね!

 ……それじゃ、この周りにあるのが町の周りにある壁なんだよね?」

「あぁ、そうなるな。

 そして、この赤い光が移ってる場所。ここが、お前達が想像していた町長さんの居る所になる。」

「あれ? ここって……。」

「知ってるんですかぁ?」

「ん。町長……ネルザ叔母様に連れ得てきてもらった事がある。この町で一番大きなお店で、色々な物が売っていた。」

「そうなんだ。すっごい、大きいお店なんだよ!」

「成程ねぇ。町で一番目立つはずの商業施設に、この町の人達が知らないような隠れる場所がある、って事なのかな。それとも、あえて目立つ場所に隠れるっていう、逆転の発想って所かな?」

「それでもぉ、今まで見つかってないんですからぁ、逆転の発想だけでは流石に見つかってしまうと思いますぅ。」

「だな。いくら何でもなぁ……って事は、皆が知らないような隠れる場所がある、って事なんだろうな。まぁとりあえず、その場所まで行ってみるか。」

「そうですねぇ。」

「うん、急ごう!」

「待てぃっ!!」


 そう言って駆け出したギルに対して、待ったを掛けるかの如く、ギルの後ろ襟を掴むショースケ。


「ぐぇっ!?」

「おいおい、ギルとカイがそのまま行ったら目立つだろうが。」

「ん。耳……。」

「そうそう、あと尻尾もな……っと、ユーリもだったな。とりあえず、3人はこれを付けろ。」


 ユーリ、カイ、ギルの順に、ショースケから腕輪を渡される。その腕輪は、特に飾り気は無いが、青み掛かった綺麗な光沢のあるものだった。


「綺麗……。」

「ご主人様ぁ、この腕輪は何ですかぁ?」

「その腕輪を装備する事によって、認識阻害の魔法が掛けられるそうなんだ。だから、3人がその腕輪を装備すれば、獣人だってバレる事もない、って事だ。」

「おぉぉ、ご主人様ったらぁ、いつの間にこんなものを?」

「あぁ。この間、ジェネラルストアルームに行った時に、何となく気になったから買っといた。」

「ほえぇ……。」


 ギルとカイが、じっくりと腕輪を眺めているなか、ユーリは早速、腕輪を身に着けた。すると、ユーリの特徴とも言える長い兎の耳が瞬時に消えた。

 少なくともユーリ以外の3人には、そのように見えたのだ。


「おぉ、凄いな。流石は、ジェネラルストアルームの商品だな。」

「ほえぇ? 私、どうなってるんですかぁ?」

「あぁ、見た目は人族そのままだな。こうなってしまうと、まんま由里だな。一切変わらん。」

「うへぇ……よし。カイ、僕達も装備しよう。」

「ん。」


 そう言うと共に、2人も腕輪を装備した。すると、ユーリと同様に頭にピョコっと生えている犬の耳と、フサフサの尻尾が消えてしまった。


「よし。これなら大丈夫そうだな……それじゃ、他の奴等に紛れて、同じように町長さんを探す振りをしながら、町の中央の商業施設に向かうぞ。」

「はいぃ。」

「ん。」

「うん、行こうっ!」


 そう言って4人は、町の中央を目指して駆け出した。

 道中、副町長派の冒険者らしきもの達ともすれ違ったりもしたのだが、特に怪しまれる事も無く、目的の商業施設まで辿り着く事が出来たのだった。


「……特に何事もなく着いたな。」

「まぁ、何か問題が起きるよりはぁ、良いんじゃないでしょうかぁ?」

「そうだよ。ユーリ姉ちゃんの言う通りだよ。」

「確かに、な。

 それじゃ、周りに気取られないように、こっそりと入るとしますか。」


 ショースケがそう言うと、3人は力強く頷く。

 中に入ると、1階には日用品などが色々と取り扱っているようで、台所用品や掃除用品などが色々と置かれていた。しかし、騒動の所為か、人は居らず、綺麗に並べられているはずの商品なども、あちこちで乱れていた。

 どうやら、副町長派閥の者達は、既にこの場所は捜索済みだったようだ。


「おーおー、随分と荒らされてるな。片付けるのも一苦労だぞ、こりゃ。」

「ねぇ、兄ちゃん。本当にネルザ叔母さんは、ここに居るの?」

「ん? あぁ、あの魔法では、ここを示していたからなぁ。多分、この建物の中に居るんだろうけど……。」

「……ご主人様ぁ! この下から人の気配を感じますぅ。」

「お!? でかした、ユーリ。それにしても、地下室ねぇ……ベタというか、何というか……。」

「……あれ? 兄ちゃん、姉ちゃん。このお店って、地下なんて無いはずなんだけど……。」

「ん。ここは地上4階建てのはず。」

「って事は、誰も知らない地下室に隠れてる、って事だな。

 えーっと…………あそこの一番デカい商品棚の下から入れるみたいだな。」

「え!?」

「兄ちゃん、どうして分かったのっ!?」

「これは、さっきの魔法の延長みたいなもんだな。さっきの魔法は平面で、町全体だっただろ? それを、この建物だけにした上に立体にして見てみたんだよ。」

「兄様。もぉ、何が出ても驚かないと思ったけど、規格外すぎる……。」

「本当だよね。昨日、助けてもらった時から、驚いてばっかだ。」

「さぁさぁ、驚いている所悪いが、サッサと行くぞ。」

「ん。」

「はぁーい。」


 大きな商品棚をずらして床板を外すと、そこにはショースケの言う通り、下へ向かう階段があった。

 4人は、下に居る人達に気取られないように静かに降りていくと、そこは集会場のような広い部屋があった。部屋の片隅には、演壇のような1段高い場所があり、その壇上には、ギルとカイがイメージした通りの町長と思われる女性と、それを囲んでいる町の人々と思わしき人達が居たのだった。


「……皆さんを巻き込んでしまって、本当にすみません。」

「町長は、俺達町民の為に一生懸命やってくれているんだ! だから、村長さんの兄弟が困ってるんなら、村だって助けなきゃなんねぇよなぁ!」

「そうだ、そうだ! 俺達1人1人には、力は余り無いけど……俺達が町長と村を守ってやるんだ!」

「副町長の……あんな、金で雇われただけの奴等なんかに負けねぇぞ! なぁ、みんな!!」

「「「うおぉぉっ!!」」」

「皆さん……。」


 町長が皆の気持ちを聞いて涙ぐんでいる。


「……どうやらザーラさんや、お前達の言う通り、町長さんは善政をしいていたみたいだな。ここまで町の人達が、一丸となって町長を守ろうとしてるのも凄いよな。」

「はいぃ。盲信している信者が多い宗教の偉い人達でも、ここまでじゃないと思いますぅ。」

「そうか? 俺達の世界では、凄い事になった事件もあったけどな……って、知ってるか。」

「はいぃ。由里さんの記憶もありますからぁ……でも、怖い事件ですねぇ。私達の世界では、あんなテロリストというのは、見た事無いですぅ。」

「そう……なのかなぁ? こっちの世界には、魔法があるしさぁ。それに王政だろう? クーデターとかもあったんじゃないのかなぁ、と思うんだけど?」

「私が生まれる前にはあったみたいですがぁ、今の統一国となってからは、反乱などは起きていないらしいですよぉ?」

「ふーん、それは凄いな……上に立つ人間が、よっぽど人格者で優れてるのかねぇ?」

「そこは、何とも分かりませぇん。」

「だよな。

 いや、国の事は置いておこうか。まずは、この町を何とかしないと……村を何とかして救いたい町長派と、反対に乗じて町長の座を乗っ取ろうしている副町長派の内戦か。

 それじゃ、対立を生み出している張本人を引っ張り出さないといけないよな。」

「え? どうするの、兄ちゃん?」

「まずは、町長さんに副町長の野郎の事を聞いてみないとならんだろ? そういうわけで、行ってくるっ!」

「ちょっ!?」


 ショースケは周りの止める声を聴かずに、一足飛びに町長の後ろに回り込んだ。

 町長の後ろに見た事も無い男が急に現れた事により、町長、その周りを囲む町民達も、一瞬、何が起きたのか分からず、口を半開きの状態まま、固まってしまっていた。


「あなたが町長さん、だよね?」

「えっ? あなた……は?」

「あぁ、俺は……。」

「何だ、こいつはっ!? 急に町長の後ろに現れたぞっ!」

「このっ! 町長から離れろっ!」

「悪いな、ちょっと大人しくしててくれ、【痺れる雷】(パラライズリンク)。」


 ショースケが手をかざして【力ある言葉】を発すると、掌から無数の青白い雷が発生し、町の人達に襲い掛かった。

 しかし、この雷には威力は殆どなく、一般の人でも、チクッとする痛みがあるだけだったが、この雷に少しでも掠ってしまえば、途端に身体が麻痺してしまい、その場から動けなくなってしまうものだった。これも、ショースケオリジナルの概念魔法である。


「あがっ!?」

「うががっ!?」

「えっ? えぇっ!? はえぇっ!?」


 次々と倒れていく町の人達を見て、町長はオロオロとうろたえてしまう。


「急にごめんな、町長さん。町の人達は、少し動けなくなっただけだから、心配しなくていい。」

「えっ!? そっ、そうなんですか? 本当に大丈夫なんですか?」

「あぁ。」

「でも、何でこんな事を……?」

「いやぁ……どうせ普通に入って、「町長さんに会いたいんですけど」と言っても怪しまれて、直ぐに会う事が出来なそうだったから、黙って忍び込ませてもらったんだ。」

「は、はぁ……。」

「ネルザ叔母さんっ!」

「叔母様っ!」

「あらまぁっ? ギルちゃんにカイちゃんじゃないっ!? どうして、こんな所に?」

「僕達の村が魔者に襲われて、僕達は助けを呼びに行くために魔者から逃げていたんだけど、倒れそうになった所を、このショースケ兄ちゃんと、ユーリ姉ちゃんに助けてもらったんだ。」

「ん。しかも、物凄く強い。」

「そうだったんですね。それは、本当にありがとうございました。」

「何だ。町長さんの知り合いだったのか。」

「それなら、早くに言ってくれれば……。」

「いや、それは無理だろ? ここに潜り込んできた俺達の話しを、大人しく聞いてくれるっていうのか?」

「……そりゃ、無理な話か。」

「だろ? そういうわけで、申し訳ないけど強硬策を取らせてもらったんだ。まぁ、直ぐに回復させるから、許してくれ。」

「まぁ、それなら良いけどよぉ……。」


 麻痺させてしまった町の人達を回復させていくショースケとユーリ。

 粗方、回復させた所で、ネルザがショースケに語り掛ける。


「ところでショースケ様。それで、村の方は……?」

「あぁ。とりあえずは片付いた、と言えるんじゃないかな? 魔者は全て倒したんだが、ボスみたいな奴の側に、こんな物が落ちていたんだが、知ってるかい?」


 そう言ってショースケは、魔者が現れる原因となったであろう、壊れた水晶玉を見せた。


「……いいえ。見た事の無い物ですが、それは一体……?」

「まぁ、ほぼ間違いないと思うが、副町長派の奴等だろうな。

 こいつを村の近くに放った事によって、魔者を大量に発生させて、村を襲わせたみたいだな。」

「そんな!? そこまでするなんて……。」

「どういう理由かは知らないが、そこまでして、この町と村を何とかしたかったんだろうな。」

「何て奴等だっ!」

「本当に、許せねぇ……。」

「まぁとりあえず、町長さんとも話が出来た事だし、俺はこれから、副町長の所へ乗り込む。誰か、副町長の特徴とか、顔や体形とかを教えてもらえないかな?」

「はぁっ!?」

「何、無謀な事を言ってるんだっ! 奴等は冒険者……しかも、普段から素行の悪い奴等を大量に集めてるんだぞ? そんな中に1人で行こうっていうのかっ!?」

「あぁ、そうだけど? 寧ろ、俺1人の方が都合が良いんだよ。」

「あんた……。」

「えっ!? 僕達も留守番なのっ!?」

「そうだ。悪いが、ユーリとお前達には、ここで町長さんを守ってもらう。

 まぁ、奴等の事は俺に任せておいてくれ。」

「……ん。分かった。気を付けて、兄様。」

「はいぃ。町長さんの事は、任せておいてくださいぃ。」

「あぁ、よろしく頼むぞ。」

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

なかなか定期的に更新できず申し訳ないのですが、見捨てずに、これからもよろしくお願い致します。m(_ _)m


2015/10/26 修正

ここで副町長さんを守ってもらう

ここで町長さんを守ってもらう

副町長を守ってどうする……orz

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勇者人形となりて異世界を巡る
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