31話 TODO:合体を見てみる
遅くなりましたが、何とか書きあがったので更新致します。
「よし! それじゃ行こうか、ユーリ。」
「はいぃ、ご主人様ぁ!」
そう言って、2人は村の北にある大森林へ向かおうとすると、ギルとカイが2人の前に立ち塞がる。
「ん? 2人共、どうしたんだ?」
「……私達も行く。」
「兄ちゃん、俺達も連れてってよ!」
「おい、何言ってんだっ!? 村の男衆でも対応しきれない程に魔者が居るんだぞっ!」
ギルとカイが2人に付いて行くと言い出したのに対して、ザーラはギルとカイの肩を掴み、慌てて2人を引き留めようとする。
しかし、ギルとカイの2人の決意は固く、ザーラの制止を振り払うように話し掛ける。
「大丈夫。僕達なら切り札があるから、1日だけなら迷惑は掛けないよ。」
「……アレか……確かに。アレを使えば、お前達なら問題ないだろうけどよぉ……たった1日だけじゃ、何ともならないかもしれないんだぞ?」
「ダメなら、兄様達に任せる。必ず迷惑は掛けない。」
「そうか……分かった。無理するんじゃないぞ。
ショースケさん。大変申し訳ないのですが、この子達も連れて行ってやってくれないでしょうか?」
「あぁ、問題無い。2人だって、親の仇を取りたいんだろう。
……そうだよな?」
ショースケの問い掛けに対して、ギルとカイの2人は深く頷いた。
しかし、この2人のステータスではザーラの言う通り、魔者を倒す……いや、真面に戦う事すら出来ないだろう。それでもショースケは、2人の気持ちを優先し、同行を許可した。
(まぁ、俺とユーリの2人なら、この子達を守れるだろう。それに、この子達の言う切り札っていうのは、【解説】で見た【合体術】の事だろうな。2人が合体して強くなる、ってところかなぁ?
フュー○ョン的なやつかな? どうやって合体するんだろ?)
「それに…………切り札があるから戦える、みたいな事を言ってたけど、それは、【合体術】の事か?」
『っ!?』
ショースケの一言により、ギルとカイ、それにザーラを始め、村の人々が驚愕の顔を見せた。
どうやら、この【合体術】については、村人全てが知っているらしい。
「……ショースケさん。なぜ、それを?」
「あぁ。俺には、その人のステータスを解析できる技能を持っているんだ。2人を拾った時に、状態を確認するのに見させてもらったんだ。」
「おぉ……やはり、黒ランクの冒険者となると、そんなスキルまでお持ちなんですね……。」
(いや、それはどうか分からないんだけど。)
村長のザーラがそう言って納得すると、村の人々も同様に、「流石は、黒ランクの冒険者だ。」など話ながら頷いていた。村人達の反応に、ショースケは苦笑いするしかなかった。
ただ、ショースケの相方だけは違ったようだ。
「そうですよぉ。ご主人様はぁ、凄いんですよぉ。それだけじゃなくて……ムググ。」
「はいはい、落ち着けユーリ。」
暴走しそうになるユーリの口を、ショースケは慌てて塞いだ。
そして、ショースケは何事も無かったように、話をすり替えた。
「なぁ、ギル、カイ。その【合体術】っていうのを見せてくれないか?」
「ユーリ姉ちゃんが言おうとした事が気になったけど……分かったよ。兄ちゃん。行くよ、カイ!」
「ん。」
ギルとカイは、お互いの手を握り、向かい合った。すると、ギルの右目、カイの左目が黄金色に輝くと同時に、2人の身体も同様に光り輝き、1つの身体となるように重なり合う。
その光が収まると、そこには、少し大人になったような、ギルとカイの良い所を合わせたような中性的な犬獣人が現れた。
その姿は、身長は大人程までにスラリと伸び、髪の毛はカイのように黒く、腰辺りまでのストレートのロングヘヤーになっている。更に容姿は、男性か女性か見分けが付かない程に中性的な姿だった。
但し、その姿から醸し出される雰囲気は見た目と違い、かなりの実力者とも思える程のものだ。
「ほぉ……。」
(ふむ。確かに実力は上がったようだ。
……が、凄い気になるなぁ……合体した事によって、性別はどうなったんだろうか? 見た目だけじゃ、全然分からん。何せ、絶壁だし……ん? どことは言わないよ?)
『兄様、これが私達の【合体術】だよ』
2人が合体した姿から紡ぎ出される声は、ギルとカイの声が二重に重なって聞こえてくるような声だった。
「何とも不思議なもんだなぁ……とりあえず、この状態について【解説】。」
【解説 Start】-----------
カイギル 10歳 ? 犬獣人
筋力:232
体力:195
敏捷:302
知覚:298
魔力:120
技能:超聴覚、超嗅覚、爪術(上級)、体術(上級)、属性魔法:風(中級)
-------------【解説 End】
「……まぁ、相変わらず突っ込み所は沢山あるけれど……これなら、余裕で魔者とも戦えるな。
よし、それじゃ行きますか、ユーリ、と……えーっと……。」
『兄様、この姿の時は、カイギルと呼んでほしい。』
ショースケが【解説】の通りに呼べば良いのかと迷っていた所に、カイギルが答える。
「分かった……けど、カイの方が先なんだな?」
『そう。何てったって、私の方が上。』
「あ、そうですか……。」
(哀れ、ギル。)
ショースケは、ギルを哀れに思いつつ、まずは魔者の進行を抑えるための燃える家々を見つめながら呟いた。
「まずは、この炎の壁の向こう側に行かないといけないのか……。」
炎の壁を潜り抜けるための【概念魔法】を自分の中でイメージする。
「それじゃ、通り道を作って行こうか……【風壁の洞窟】!」
ショースケが掌を突き出し、【力ある言葉】を唱えると、轟々と勢いよく立ち上る炎の壁に大人が余裕で通れる程の穴が開く。穴を覗いてみると、炎の向こう側の景色が見えた。
村の半分以上を燃やすような炎の壁に対して、いとも簡単に炎の向こう側まで突き抜けるような大穴を開け、そしてそれを維持している光景を見てしまった村人達は、呆気にとられて閉口するだけだった。
「おおぉ……。」
「何とも凄い……。」
「よし、行こうか。俺が先頭、ギルとカイは俺に付いてきてくれ。ユーリ、殿は頼んだぞ。」
『「はい(ぃ)!』」
そのまま、立ち上る炎の中を潜っていく3人。
カイギルは、炎の中にいる自分達を不思議に思いつつ、風の壁によって出来たトンネルをキョロキョロとあちこち見ながら、ショースケの後を付いていく。
『はあぁぁ……それにしても、こんな事も出来るなんて、流石は兄様。』
「はいぃ。ご主人様は凄いんですぅ。何てったって、神さ……。」
「お喋りはそこまでだ! 向こう側に出るぞ!」
駆け足で風のトンネルを抜けると、そこには行く当てがないのか、魔者達がそこら中に蔓延っていた。
村人達を襲いに来たものの、ザーラ達の狙い通り、この立ち上る炎の壁によって立ち往生していたようだ。
「おぉー、いるいる。随分と湧いて出てきたもんだ。簡単には数えきれない程いるじゃないか。」
「ご主人様ぁ、ここは私に任せてもらっても良いですかぁ?」
「ん? あぁ、広範囲の技でも使うのか?」
「はいぃ。でもぉ、全ては難しいかもしれないのですがぁ……。」
「あぁ、そこら辺は任せろ。打ち漏らした奴等は、俺達で片付ける。」
「はいぃ。それでは、行きますよぉ……【流星群】!」
ユーリは、星天弓に魔力を込め、空に目掛けて1本の矢を穿つ。
すると、ある程度まで上がった魔力の矢は、そこに塊となって留まり、そこから数多の魔力の矢を生み出して地上に降り注いだ。魔者目掛けて降り注いだ魔力の矢は、そこら辺を徘徊する魔者達に次々と突き刺さり、絶命させていく。
「いや、本当に凄いな、こりゃ……って、関心してる場合じゃなかったな。
カイギル、そこら辺で動いてる魔者を片付けるぞ!」
『はいっ!』
ショースケの掛け声と共に、ショースケは刀を、カイギルは爪を伸ばして残った魔者達に襲い掛かる。
運良く、ユーリが放った魔力の矢に当たらなかった魔者達だったが、その者達はショースケとカイギルに、あっと言う間に切り捨てられてしまう。
「……よし。村の中と、その周辺からは魔者の気配は無くなったようだな。
良くやったな、ユーリ、カイギル。」
「はいぃ。」
『ん、私達だって戦える。』
「うん、そうだな。十分やれてるよ。
それじゃ、諸悪の根源たる森の中を……っと、ん? 何だ? 変な魔力の塊を感じるぞ?」
ショースケ達は、村の入口を出た辺りで魔者の残りが居ないか周辺を確認していると、丁度、森の入口辺りから異変を感じたようだった。
「ご主人様ぁ、私が見に行ってきますぅ。」
「ん? 俺が……いや、分かった。頼むよ、ユーリ。」
自分が動けば良いだろう、と思っていたショースケだったが、自分のために頑張り、そして並び立てるような実力を付けたユーリを見て、少しは周りを頼ろうと反省するのだった。
そしてショースケは、ユーリの申し出をそのまま受け取り、偵察をお願いする事にした。
「はいぃ。行ってきますぅ!」
「おい、無理はするなよ!」
「任せて下さいぃ!」
ショースケに頼られ、嬉しさに声を弾ませるユーリだった。
だがしかし、弾ませる声とは裏腹に森へと向かうその行動は、静かに、そして素早いものだった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
下にリンクを張りましたが、新しく連載物を書いていますので、そちらも是非見てみてください。
2015/10/09 修正
カイギルの話し方を、「「」」ではなく、『』に変えました。




