29話 TODO:犬耳っ子の話を聞いてみる
お待たせしました。
忙しいのが終わったのですが、今度はスランプです…
全然執筆が進まず、遅くなってすみませんでした。
「とりあえず、この子達の状態を調べてみるか。ついでに、この子達についても調べさせてもらおう。」
「え? 何でですかぁ?」
「まぁ、こんな状態の子達を疑うわけじゃないが、実は何かを企んで近づいてきました、って後で分かっても遅いからな……まぁ、お前が居るんだから特に、な。」
「ご、ご主人様ぁ……。」
ユーリは、自分の事を大事な人として心配してくれる、そんなショースケの気持ちに感動したのか、目をうるわせながらショースケを見つめた。
ショースケもその視線を合わせ、お互い見つめ合い、良い雰囲気が広がるが……。
「うぅ……。」
「やべっ!? そんな雰囲気出してる場合じゃないよ!」
「はわっ!? そうでしたぁ、すみませぇん……。」
「いや、俺も悪かった。とにかく早いとこ、この子達に治療してあげよう……この子達について、【解説】。」
【解説 Start】-----------
ギリアム・アスマーン 10歳 男 犬獣人
筋力:10
体力:1(12)
敏捷:12
知覚:11
魔力:1(8)
技能:超聴覚、超嗅覚、体術(初級)、【合体術】
状態:魔力衰弱症、衰弱
カイム・アスマーン 10歳 女 犬獣人
筋力:6
体力:1(9)
敏捷:15
知覚:13
魔力:1(18)
技能:超聴覚、超嗅覚、調理(中級)、【合体術】
状態:魔力衰弱症、衰弱
-------------【解説 End】
そう言って子供達を調べてみた結果を知り、ホッと一息付くものの、症状を見て難しい顔をするショースケ。
「どうやら、勘繰りすぎたか……見た目通り、子供達だったな。しかし、随分と弱っているな。それにしても……魔力衰弱症? 何だこれ?」
「さぁ? 私も聞いた事無い症状ですぅ……。」
「そうか。それじゃ、魔力衰弱症について【解説】。」
【解説 Start】-----------
魔力衰弱症
強力な魔法などの代償として、陥る事の多い症状。極端に魔力が低い状態となってしまい、ほぼ魔法が使えない状態になったり、疲労が溜まりやすくなってしまう。
1日から2日程度、安静にしていれば自然に回復する。
-------------【解説 End】
「自然に回復するっつってもなぁ……身体の衰弱も合わさって、かなり危ないだろう。」
「ご主人様ぁ、お水とスープの用意が出来ましたぁ。」
「ありがとう。それじゃ、治療を始めようか……。」
(まずは、身体の怪我は軽いものばかりみたいだから、治療力が促進するとして……衰弱した体力も回復させないといかんよな。それに、魔力も補充するようなイメージも付ければ良いかな?
でも、やりすぎると酷い事になりそうだよなぁ……だから、一気に回復させるような魔法じゃなくて、調子を見ながら加減が出来るように、概念魔法を込めた手が触れている間だけ、少しずつ回復するような魔法で行こう。)
魔法のイメージを固めると、ショースケの両手に淡く白い光が灯った。
ショースケの手が2人の身体に触れると、身体にあった無数の傷は少しづつ塞がっていき、元々傷など無かったかのように綺麗な肌に戻った。それと同時に、紫色になっていた顔色も、血色が良くなったように赤み掛かった肌色になっていった。
「……ん?」
「んぅ……ここ、は……?」
衰弱しきっていた2人の子犬獣人は、どうやら無事に回復し、気が付いたようだ。
「良かったですぅ、気が付いたんですねぇ。」
「ふぅ……そうだな。2人とも、身体の調子はどうかな?」
「ん。」
「はい、大丈夫です……あれ、僕達、結構怪我とかもしてた……よね? それに、あんなに重かったはずの身体が軽いし……。」
そう言うと、自分や、もう1人の子の身体を見回して不思議そうな表情を浮かべた。
「あぁ。それなら、俺が回復魔法を使って治療させてもらった。」
「えぇっ!? 本当ですか? それは、凄い……あっ!? そういえば、僕達を追ってきた魔者はっ!?」
「それならぁ、私がやっつけましたよぉ。」
ユーリがそう言って、力こぶを見せるように恰好をする。
そんなユーリを見て、2人とも驚いた表情を浮かべていた。
「……あなたが?」
「そぉですよぉ。」
「そんな風には見えない。」
「ちょっ!?」
女の子の冷静な突っ込みに動揺するユーリ。
確かに、ユーリの見た目では、魔者達を一息に倒せるようには見えないのも無理は無かった。
「ハハッ……でも、本当なんだ。君達を追いかけてきた魔者は、このお姉さんの弓で倒したんだよ。
まぁ、とりあえず飲み物とスープがあるから、それでも飲んで落ち着かないか?」
ショースケはそう言って、スープと飲み物が入った器を2人に差し出す。
「ん……。」
「あ、ありがとう! いただきますっ!」
よほど喉も渇き、腹も減っていたのだろう。2人は一気に水とスープを飲み干すと、人心地付いたようで、肩の力が抜け、ようやく落ち着いたようだ。
「助けていただいて、ありがとうございました。僕は、クロサイト村に住むギリアムっていいます。それと……。」
「……カイム、です……。」
「えっ!?」
カイが名乗った瞬間、隣にいたギルが驚いて、大きく見開いた目でカイを見つめた。
「あれ? 何か気に障ったか?」
「あ、ごめんなさい。カイは人見知りなんです。それどころか、家族以外の人に自分から話し掛ける事なんて、ぜんっ……ぜん、無い位なんですよ。だから、自分から名前を名乗るなんて凄い位なんですよ。」
「ギル、言いすぎ。」
「別にいいだろ、その位……まぁ、こんな感じで、クールな感じを醸し出してる娘なんですけど、ただ単に、恥ずかしくて、もっと話したくても話せなくて、心の中ではモジモジしまくってるような、可哀そ……モガモガッ!?」
「いい加減にしなさいっ!!」
ギルの口の軽さに、カイがいい加減にしなさい、とばかりにギルの口を必死に押さえる。
これ以上、余計な事を喋らせないようにしているようだ。
「ハハ……まぁ、何だ。2人とも、元気になったみたいで良かったよ。」
(とりあえず、回復魔法はうまくいったみたいだな。良かった。
それにしても、ギルとカイの双子の兄妹か……何か作為的なものを感じるのは、俺だけだろうか? この先、塔が出てきたり、この2人が引き裂かれたりするっていうのかねぇ?
……いや。こんな事考えてると、フリになっちまうよなぁ。余計な事は考えないようにしよう。)
「あっ!? ごめんなさい……。」
「ぶはぁっ!? ふぅ……すいませんでした……。」
「いや、いいよ。ところで君達は、どうして魔者に追われてたんだ?」
「僕達の村は、ここから北にあるロードナイトの町の近くのクロサイト村ってという所なんだ。でも、村の近くには、大森林って言われてる大きな森があって、そこで狩りをしたりして暮らしてたんだ……。」
ギルとカイの2人が言うには、ここから北西に向かうと、クロサイト村へ辿り着くらしい。距離としては、この子達が村からここまで逃げてきて、1日は経っているという事だったので、歩いてだと2日程度だろうか?
村の近くには、大森林という大きくて有名な森があり、村の大人達は、その大森林で狩りをしたりして生活しているという事だった。森の中では、やはり魔者に襲われるという事もあり、子供達は森に近づく事は禁じられているという事だった。
魔者自体は現れるという事だが、現れても1、2匹程度で、しかも魔者は森の外まで出てくる事も無く、かなり奥深くまで入らないと襲われる事は無かったらしい。
ちなみに余談ではあるが、この林を北側に抜けると、ロードナイトの町があるという事だった。
「……だけど、大森林から魔者が出てきて、村を襲ってきた事なんて一度も無かったわ。」
「うん、カイの言う通りなんだけど。この間、魔者が急に村に襲い掛かって来たんだ! それも、すごい沢山の魔者がっ! 父さんや叔父さん、それに村の大人の人達は村に入らないように食い止めてたけど……それでも、抑えきれなくて……。」
「……いいえ。女の人や子供達を逃がすために、まだ戦っているはずよ。」
「……うん、そうだよね。まだ、頑張って戦ってるはずなんだ!」
「あのぉ、急にごめんなさい。クロサイト村ですよねぇ? ロードナイトの町から助けは来なかったんですかぁ?」
「それが……。」
「来なかったわ。助けを求めに大人達が町まで行ったのに……それどころか、その人達も帰って来なかった。」
「は?」
「どっ、どういう事ですかぁ? 兄妹町という位に仲が良いはずなのに、そんな事あるんでしょうかぁ?」
「ん? 兄妹町?」
「はいぃ。クロサイト村は、ロードナイトの町の兄妹町と言われていますぅ。クロサイト村というのは、元々、ロードナイトの町に入りきらなかった人達。主に、獣人族の人達が別の土地に移ったのが始まりと言われていますぅ。」
「……それは、人種差別、って事なんじゃないのか?」
「あ、それは違いますぅ。町の中の人族の方々に比べて獣人族の方が少なかったので、それでまとまって住んだ方が都合が良いという事で、強力し合える程度に離れた所に村を作ったそうなんですよぉ。」
「ふぅん……それなら、問題が発生したのに助けに来ないってのはおかしいよな?」
「はいぃ、その通りですぅ。」
(急な魔者の調査、町と村の関係、そして村が襲われたにも関わらず、町からの救援は無し……色々と問題点が出すぎて、何から疑えば良いのか分からんな……。
とりあえずは、村を救うのが先決だよな……下手すると、手遅れかもしれないが……。)
そんな一人考え込んでいるショースケに対して、ギルが話し掛けてきた。
「えっと……ショースケ、さん。」
「ん? そんな畏まらずに、気楽に呼んでくれてよ。何だったら、兄ちゃん、とかでも構わないぞ?」
「じゃあ……ショースケにいちゃん! お願いします、僕達の村を……父さん達を助けて下さいっ!」
「あぁ、いいぞ。行こうか。」
「だけど、僕達、そんなにお金を……って、え?」
ギルは、自分でも無茶なお願いをしていると理解しているが、それでも目の前にいる2人なら助けてくれるんじゃないかと思い、無理を承知でお願いしてはみたが、ショースケが何も言うことなく即答してくれた事に呆然としてしまった。
「金はいらないぞ。俺達なら出来ると思ったんだろ? それなら、やってやるさ。」
「いい、の? え? だって、魔者がいっぱい襲ってきて、大人達でも敵わなくて、それで……。」
「大丈夫ですぅ、ご主人様なら問題ありませんよぉ。何といっても、ご主人様は黒ランクの冒険者ですからねぇ。」
「えっ!? 黒ランク!?」
「はいぃ。ですからぁ、安心して下さいぃ。ご主人様が、やる、と言ったら、本当にやってくれまよぉ。」
「あ、ありがとう、ショースケ兄ちゃん、ユーリ姉ちゃん……。」
「ありがとう。兄様。姉様。」
「に、兄様ぁ!? その呼び方は何かその、くすぐったいものを感じるなぁ……。」
「わ、私も、姉様だなんてぇ……何か、でも、嬉しいものを感じますぅ。」
2人が兄様、姉様と呼ばれて浮かれていると、ギルは気に入らなかったのか、カイに食って掛かった。
「兄様だなんて……ボクだってカイの兄だろ? なのに、そんな呼び方してくれた事もじゃないか!」
「ギルは別。」
「えぇーっ!?」
「それに、双子なんだから関係無いわ。
というよりも、私の方が姉に決まってるでしょ。」
「えええぇーっ!?」
2人の仲良さげな兄弟喧嘩に和みながらも、ショースケが間に入るように割って入る。
「2人の仲が良いのは良く分かったよ。それよりも、少しでも早く村へ助けに行かないとマズイんじゃないか?」
2人はショースケの指摘に、ハッと気付いたのか、弾けるようにショースケに縋り付く。
「そうだよっ! 急がなきゃっ!」
「……でも、私達は足手まとい。」
「うっ!? それは、そうかもしれないけど……でも、僕達が案内しないと……。」
「そうだなぁ……よし! それじゃ、俺とユーリでおぶって行くかっ!」
「「ええええぇぇっ!?」」
「だっ、大丈夫なの?」
「はいぃ。多分、問題ないと思いますよぉ。」
「あぁ。ユーリの言う通り、問題ないと思うぞ? 全力で行けば、半日位で着くんじゃないかなぁ?」
「「………。」」
余りにも人間離れしたような発言に驚いているのか、ギルとカイの2人は口を半開きにした状態で固まっている。
呆然としている状態の2人に構わず、ショースケはギルを、ユーリはカイを背負った。
「よし! それじゃ、クロサイト村へ急ぐぞっ!」
「はいぃ。」
「ん。」
「お願いします、ショースケにぃちゃん! ユーリねぇちゃん!」
「おぅ! しっかり捕まってろよっ!」
ショースケとユーリは、子供達を背負っているとは思えないスピードで、クロサイト村へ向かって走り出した。




