28話 TODO:犬耳っ子を拾ってみる
更新が遅くなってすみませんでした。
暫くは不定期な更新となってしまいますが、見捨てないでやってください。
よろしくお願いします。m(_ _)m
ジェネラルストアルームに訪れた後、まだ目覚めたばかりだから、という理由からショースケは1日は安静にしていなさい、とユーリにベッドに押し込まれたのだった。
由里の記憶も受け継いでしまった所為か、いきなりユーリにも尻に敷かれつつあるショースケだった。
そんなゆっくりと過ごした翌日、2人は、ユーリの奴属契約を解除する事と、冒険者としての登録をするため、早めに朝食を済ませた後、冒険者ギルドへ向かう事にした。
「お? ショースケ! 良いところに来たね。」
ギルドの扉を潜ると、丁度ギルドから出ようとしていたエリナとかち合った。
エリナは、ショースケが来るのを待っていたとばかりに近づいてきて声を掛けてきた。
「あんたの様子を見に行こうかと思ってたんだけどね、丁度良かったよ。ここに来たって事は、もう仕事は受けられるのかい?」
「えぇ、そうですね。調子も戻ったんで、仕事しようかと。あと、ユーリの奴属契約の解除と、冒険者登録をお願いしたいんですけど……。」
「おや? という事は……。」
「はい。これからは夫婦としてやっていこうかと思いまして。」
「そうかい! やっとかい! 良かったねぇ、ユーリちゃん。」
「はいぃ。」
「まったくねぇ……ショースケも気があるように見せて、なかなか進展しないもんだから、こっちも気になってしょうがなかったんだよ?」
「それは……まぁ、色々とありまして。」
「ふぅん……って、そうじゃなかったね。全く、歳を取ると愚痴っぽくなってしょうがないねぇ……。」
「ハハ……。
ところで、俺に何か用が?」
「あぁ、そうだった、そうだった……実は、あんた等にお願いしたい仕事があってねぇ。」
「何でしょう?」
「ここから、北にある大森林に魔者が出たっていう噂がロードナイトの町から出てきてね。」
「噂、ですか?」
「どうやら、ただの噂ってわけでもなくてね、実際被害も出てるらしいんだよ。狩りのために森に入った町の人達が襲われて、命からがら逃げてきたっていう連絡も来てるんだ。」
「え? でも、そこって町なんですよね? そこにも冒険者ギルドはあるんじゃないんですか?」
「あぁ、ショースケの言う通りなんだけどねぇ。向こうのギルドの連中と、どうにも連絡が取れないんだよ……。」
「それは……町の方でも、何かあったかもしれない、と?」
「恐らくねぇ。それも含めて、調査してきてほしいんだけど、どうかねぇ?」
「分かりましたけど……それにしても、復帰早々ヘビーな案件ですねぇ?」
「まぁ、あんた程の実力だから、お願いしたいと思ってるんだけどねぇ。」
「はぁ。期待に応えられるよう、頑張りますよ……って、俺、それしか言ってないような気がするなぁ。」
「ハハッ、大丈夫だよ。ショースケは、アタシ等の期待に十分応えてくれているよ。」
「そう言ってもらえるんであれば、まぁ頑張りますが……じゃ、俺達はこれから急いでその町に向かいます。それで、ユーリの件なんですが……。」
「その件は、こっちで出来る事はこちらで進めておくよ。任せておきな。」
「はい。よろしくお願いします。」
「あぁ、分かったよ。その代り、調査の件……いや、アンタ達なら、解決しちまっても構わないからね。頼んだよ。」
「分かりました、それじゃ行ってきます。」
「はいぃ、行ってきますぅー。」
そう言うと2人は早速、シルクドゥ商会へ向かい、旅の準備を整えて北へ旅立った。
道中は平和なもので、特に何事も無く、ロードナイトの町手前の林にまで辿り着いた。
「ご主人様ぁ。この林を越えれば、ロードナイトの町に着きますよぉ。」
「ん? ここは森じゃないのか?」
「はいぃ。エリナさんは、ロードナイトの町付近の森と言っていましたぁ。ロードナイトの町付近の森といったらぁ、町の北側にしかないので、そこの事かと思っていたんですけどぉ……。」
「そっか。魔者が出たと噂されている森って、ここの事じゃないのか……まぁ、そうだとしても、視界の悪くなる林の中だ。気配察知を強化して進もう。」
「はいぃ。」
そう言って、辺りを探りながら林の中へ入ろうとすると、ユーリは突然歩みを止めた。
「……ご主人様ぁ、何か来ます。」
「あぁ、そうだな……それにしても、このパターンは既視感を感じるなぁ。
あの時は魔者が出てきたが、今度は一体何が出てくるのか……それに、何だろうな。感じるのは、2つの気配だ。1つは殺気が漲っているし、もう1つは、その気配から逃げているようだな。
とりあえず、厄介事が迫ってるのは間違いないな。」
「そうですねぇ……ご主人様ぁ、来ますぅ!」
「あぁ、とりあえず、武器を構えろ。」
ショースケの言葉と共に、ショースケは刀を抜き、ユーリは星天弓を用意する。
そして、林の奥から小さな人影が見えた。
「助けてぇっ!!」
聞こえたのは助けを呼ぶ声、そして見えたその姿は、犬耳の幼子だった。
しかし、追われていた間に何かあったのであろう。1人は気を失っているようで、もう1人がそれを背負ってヨロヨロしながらも、必死な形相でこちらに向かって走って来る。
2人とも深手は負っていないようだが、細かな傷は全身に付いているようで、着ている服もボロボロだった。
「えっ!?」
「子供っ!?」
「たっ、助けて下さい! 魔者がっ……僕達の…を……。」
そう言うと、ショースケに助けを求めた男の子は力尽き、その場に倒れ込む。しかし、地面に倒れる事なく、ショースケは男の子と、男の子に背負われていた子も一緒に受け止めた。
ここまで、既に気を失っているもう一人の子を背負って逃げていたのであろう。どうやら、体力の限界まで走り続け、ここで精魂を使い果たしてしまったのだろう。
「っと。」
「ご主人様ぁ、また来ますぅ! この子達を追いかけてきたって事はぁ……。」
「あぁ、間違いないな。この殺気は……魔者だ。」
「それじゃ、私にお任せ下さいぃ。1、2……4体ですねぇ。その程度なら、この一発でぇ……。」
そう言って、ユーリは星天弓を構える。
本来、このような木々が乱立している林の中では、的に向かい直線的に飛ばせる事しか出来ない弓矢は不利となる。しかし、この星天弓と、ユーリが持つ弓技を組み合わせれば、木々が乱立する森や林の中でも問題なく敵を仕留める事が出来る。
「行きますよぉー、【蛇弓閃】っ!」
弓から放たれた魔力の矢は黒い蛇を象り、うねりながら乱立する木々を避け、魔者目指して飛んでいく。ユーリの星天弓から放たれた4本の矢が、それぞれ見事に4体の魔者の頭に突き刺さった。
だが、それだけではなく。突き刺さった矢が爆発し、魔者は上半身を含め吹き飛ばされ、子供達を追いかけてきた魔者達は、全てその場に倒れ伏した。
「……お見事。」
「ありがとうございますぅ! これで、やっとお役に立てますねぇ。」
「いやいやいや! 十分すぎるだろ、これ。
いくら低ランクの魔者とはいえ、そんじゃそこらの冒険者がヘッドショットで4体一気に一撃で沈めるなんて、どう考えても無理だろう?」
「そうでしょうかぁ? ご主人様のお力を見るとぉ、これでも足りないような気がぁ……。」
「うん。まぁ、向上心があるのは良いと思うんだけどねぇ……ま、それはいいか。
それよりも、この子達だが……。」
どうやら、先に気を失った女の子を背負って、男の子がここまで逃げてきたようだった。
見た目は、10歳いってるだろうか? 2人共、犬耳が生えている所から、犬の獣人の子供なのだろうが……一体、何があって、どこから逃げてきたのかが気になったショースケだった。
「それにしても、この子達が言うには、魔者に襲われて、そこから逃げてきたようだな。しかも、こんな小さな子供が2人だけだ。」
「はいぃ、そうですねぇ……襲われて、逃げるとなるとぉ、魔者が数体現れた、というわけでは無いと思いますねぇ。」
「また、異常発生した、というパターンかもしれないなぁ……何にせよ、この子達を回復させて、話を聞いてみないと、何ともならないな。」
「えぇっ!? 襲われたと言っていましたしぃ、追手もいたくらいですからぁ、急がないと不味いんじゃないんですかぁ?」
「いや。そもそも、どこが襲われたのか分からないだろう?」
「え? それは、これから調査依頼で向かうロードナイトの町じゃないんでしょうかぁ?」
「確かに、それも考えられる、が……この子達が、言いかけていた言葉が気になるんだよ。
僕達の何なのかっていうのがなぁ……町? それとも村? もしかしたら、家とか言おうとしてたんじゃないか?」
「あっ!? そういえば、そぉですねぇ……。」
「だろう? だから、どこへ急いで行げば良いのかは、この子達に聞かないといけないんだ。」
「なるほどぉ……。」
「とりあえず、ユーリは水と食べ物を用意してくれ。俺は、魔法でこの子達の傷と体力を回復させる。」
「分かりましたぁ。」
そう言うと、2人は子供達の治療の為の準備を始めるのだった。
2015/10/03 修正
教われて → 襲われて




