27話 TODO:ユーリも一緒にストアに入ってみる
「……ん? ここ、は?」
「ご主人様ぁっ!? 気が付いたんですねぇ? 本当に……本当に、良かったですぅ……。」
「ユーリ、か……ここは……宿か? あれ? 俺、[死の特訓]受けてて、途中で何が何だか分からなくなって……どうなったんだ? なぁ、ユーリ。結局、特訓は成功だったのか?」
「はいぃ。エリナさん達のお話では、[生死の極み]というものを会得したはずだ、と言ってましたぁ。」
「[生死の極み]?」
「はいぃ。」
「あそこまで追い詰めなきゃ会得できないもの、か……そういえば、俺のステータスってどうなったんだろうかね? よし、調べてみるか……俺について、【解説】!」
【解説 Start】-----------
ショウスケ・タナカ 27歳 男 世の理から踏外し者
筋力:685
体力:655
敏捷:580
知覚:555
魔力:125,000
技能:言語翻訳、剣術(神級)、体術(神級)、魔力操作、縮地法、剛力、【解説】、【主従の恩恵】、【概念魔法】、【光の腕】、【生死の極み】
-------------【解説 End】
「ほえぇ……。」
「うおぉ? あの特訓凄ぇなぁ。ここまでステータスが上がるかよ……それに、技能も変わってるし、さっきユーリから聞いた、[生死の極み]も入ってるな。
とりあえず、こいつについても調べてみるか。[生死の極み]について、【解説】っ!」
【解説 Start】-----------
生死の極み
死と擦れ擦れの状態まで身体と精神状態を追い込む事により、潜在している感知力、洞察力、認識力、判断力、身体動作を限界以上に高める強化方法が目覚める。
1日1回、体力×1秒の間、ステータスを2倍に上昇させる事が出来る。この制限以上にスキルの使用、および持続時間の延長させると、自我を失い、体力×1秒後に死が訪れる。【光の腕】との併用可能。
-------------【解説 End】
「うっわ、何? この怖いスキル。 でも、これと【光の腕】を合わせられるのか……合わせると、5倍って事か? とんでもない事になるな。これなら、神様相手にしてもいける、か?」
「本当に凄いですねぇ、ご主人様ぁ。」
「いや、それほどでも……じゃなくて、それよりも、あれから何日経ったんだ?」
「はいぃ。ご主人様は、ずっとお眠りの状態でぇ、目覚めたのが今日で4日目ですぅ。」
「そんなに寝てたのか……その間、ずっと看病してくれてたのか?」
「はいぃ。」
「その間、何にも無かったか?」
「はいぃ……あのぉ……いいえぇ、特に何もぉ……。」
ショースケが寝てた間の事を聞こうとすると、何かを思い出したようで、ユーリが両手で指を絡めつつ、モジモジしだした。
(うーん……こりゃ、何かあったな。まぁ、聞かないでおく、か。)
「まぁ、とにかく世話を掛けたな。ありがとう、ユーリ。」
「はいぃ。この位、何てこと無いですぅ!」
「それでも、な……さて、これで俺自身の強化は出来たわけだが……。」
ショースケは一人呟きながら、ユーリの全身を見る。
(ユーリの武器や防具も、もっと良いものを準備した方が良いよなぁ。防具は、パイクさんの所で何とかなるとして武器は、心当たりが……無い事も無いなぁ。
そういえば、あそこって、俺だけしか入れないのかなぁ?
試しに、ユーリも連れて入ってみるか……。)
ショースケが思い描いたのは、ジェネラルストアルームだった。そこなら、こちらの世界で言う、伝説クラスの武器が用意できると考えたのだった。
「……あの、ご主人様ぁ? ついさっきからなんですけど、急に現れた、この青く光ってる扉は何でしょうかぁ?」
「え?」
「これなんですけどぉ……。」
そう言って、ユーリが指差す先を見てみると、自分の寝ているベッドの隣に、ジェネラルストアルームと繋がる青い扉がフワフワと浮いていた。
「扉、だな。」
「はいぃ。」
「えっと……ユーリにも見えてんのか?」
「はいぃ。ベッドの隣には壁も何も無いのに、扉が浮いているように見えますよぉ?」
「……そうだね。」
「これは、ご主人様の魔法か何かなんでしょうかぁ?」
「えーっと、何を説明すれば良いのか……まぁ、いいや。とりあえず、実際に入ってみようか。ユーリにも見えてるって事は、恐らく一緒に入れるって事だしな。」
「ほぇ? 入る? この扉の中に入れるんですかぁ?」
「そうだ。こんな所で考えててもしょうがないし、サッサと行くぞっ!」
ショースケはベッドから跳ね起きて扉を開き、中へ入っていく。
「まっ、待ってくださいぃ! ご主人様ぁ!」
ユーリもショースケに続き、慌てて扉の中へ入っていった。
「ようこそ、彰介様。」
「おはよう、キツネさん。
ユーリは、この場所は初めてだったよな。ここはジェネラルストアルームって言って……。」
彰介がそう言いながらユーリの方を振り向いてみると、ユーリは気が抜けたしまったかのように、ぼんやりと入口辺りで突っ立って、彰介の方を眺めていた。
「どうした? 大丈夫か?」
「……彰、さん?」
「へ? もしかして……由里……なの、か?」
(確かに、この呼び方はユーリには教えていない、由里だけの呼び方だ。しかし、どう見ても、その姿はユーリのものなんだよなぁ……え? って事は、由里も異世界に渡れるって事なのか!?)
由里は、ショーケースに微かに映る自分の姿を見て納得する。
そして静かに、彰介へとにじり寄った。
「……彰さん?」
「はい! な……何でしょう?」
(何だ、この威圧感はっ!? 俺の本能が、反抗してはいけないと全力で俺に訴えかけてきてる。)
大人しくしているが、由里から発せらる威圧感に、何かを言ったり、行動したりする事を憚られる彰介だった。何故か、キツネも同様なのか、大人しく目立たないようにしていた。
「彰さん、私ね……実は、この姿になる夢を見た事あるの。」
「えっ!? どういう事だっ?」
「そしてね?」
「はいっ!」
(どうやら、由里の話が終わるまで、問答無用で何も聞いてくれないみたいだな……大人しく聞いておこう。)
「彰さんと一緒に戦う夢も見た事あるの、ね?」
「はっ、はいっ!」
「今、分かったんだけど……彰さんは、異世界に行った時に、このユーリっていう子と一緒に行動してたんだね?」
「そうです!」
「何で、その事は話してくれなかったのかな?」
「えっ? でも、それは……。」
「かな?」
「いや、それは忘れていたというか、何というか……。」
「かな?」
「そこまで、話す必要は無いかと思いまして……。」
「問答無用っ! そこに正座っ!!」
「はっ、はいぃっ!」
という事で、何故かキツネの目の前で説教を受ける事になってしまった彰介。キツネも、先程から由里の迫力に何も言えなかったので、諦めて2人の様子を静かに見守っていた。
やっと開放されたのは、1時間後だった。
「……まぁ、私の事と重ねて見ていてくれたみたいだから、まぁ許すよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「でも、内緒事はもうダメだからねっ!」
「分かったよ……悪かったな。」
「ん。ところで、この子の事はどうするの?」
「え? どうするの、って……?
「この子も、彰さんの事を好きなの分かってるんでしょ? 凄い一生懸命だったじゃない……この子だって、私みたいなものなんだから、しっかり面倒見てほしいの。」
「って事は。」
「地球では、私と一緒になってくれる事を決めたんだから、こっちも同じようにしてよ、って言ってるのよっ!」
「いや、由里はそれで良いのか? だって、浮気……あれ? 浮気、なのか? ユーリも実は由里だったし……あれ?」
「こっちの世界の私だと思ってくれれば良いのよ。だって、これじゃ、私自身に嫉妬してる事になっておかしいじゃない。だから気にしないわよ。」
「そっか。じゃあ、あっちに戻ったら、ユーリとしっかり話し合ってみるよ。」
「うん、さすがは彰さん。ちゃんと責任取ってくれるんだね?」
「あぁ、勿論だ。」
「んんっ!!」
ひとつ、咳払いをするキツネ。
説教時は割り込む事が出来なかったが、自分がここに存在する事を忘れられたかのように甘い雰囲気を流されだしたので、流石に黙っていられなくなったようで、ここらで割り込んできたキツネだった。
「「あっ!?」」
「ようこそ、彰介様。そろそろ、宜しいでしょうか?」
「……スイマセンでした……。」
「ごめんなさい……。」
今居る場所、そしてキツネをずっと放っておいた事を思い出したようで、素直に謝る彰介と由里だった。
「ところで、今日はどういった御用でしょうか?」
「そうでした。今日は、遠距離用の武器を探しに来たんですよ。こっちの……えーっと……。」
「彰さん、この姿の時は、ユーリでいいよ。」
「分かった。こっちのユーリが使える物をと思ったんですけど」
「畏まりました……それでは、こちらの[星天弓]という商品は如何でしょうか?」
「おぉ!? 何か凄そうな弓ですね?」
「あれぇ? あのぉ……すいません、これって弓だけなんですか? 矢は無いんですか?」
「こちらは特別製の弓となっておりまして、矢が必要ないのです。」
そう言いながら、ショーケースから白くツヤのある弓を取り出した。その弓はアーチェリーのようにゴツゴツした形のもので、持ち手の辺りにジョイントが付いており、折りたたんで持ち運べる形のようだ。
キツネは、弓の持ち手を持って軽く振ると、「バクンッ」と音を立てて弓の形になった。
そして、どこからともなく現れた的に向かい弓の弦を引くと、弓の白い色とは対照的な黒色の魔力の矢が現れた。キツネは弦を放つと、魔力の矢は的の中心に吸い込まれるように突き刺さった。
「「おぉー。」」
「このように、こちらの弓は、弓の持ち手に魔力を込めながら弓の弦を引いていただくと、込めた魔力が矢となって打ち放つ事が出来るのです。」
「弓の色って、何か関係あるんですか?」
「いいえ、特にございませんよ、ユーリ様。ご自身が持たれる魔力の特徴とは関係なく、黒い魔力の矢が生み出されます。」
「へぇー。」
「更に、こちらの商品は魔力の込め方によって、連射する事もできますし、他にもイメージさえ固めていただければ、その名の如く、流れ落ちる星のような数の矢を一斉に打ち出す事も出来ます。」
「それは凄いですね! ユーリ、これで良いか?」
「うん。これなら彰さんの役に立てるんじゃないかな?」
「いやいや、頼りにしてるよ。どっちの世界でも、頭が上がらないくらいにな。」
「ふふっ、そう?」
「あぁ……それじゃ、キツネさん。これ買わせていただきます。」
「ありがとうございます。それでは、いつものように、お支払いはギルドの口座からでよろしいでしょうか?」
「えぇ。それでお願いします。」
「畏まりました。」
「よし、それじゃ戻ろうか。また、よろしくお願いしますね、キツネさん。」
「はい。今度は痴話喧嘩の無い状態でお願い致します。」
「あはは……失礼しました。」
少し気まずくなり、2人で苦笑いしながら店を出た。
「……あぁー、気まずかった。なぁ、由里?」
「ご主人様ぁ……。」
「っと、何とも……今は、ユーリなのか?」
「はいぃ。でも、由里様の記憶もしっかり残っていますよぉ。」
「……成程。身体は別だけど、記憶は共有されるわけか。」
「はいぃ……それで、あのぉ……。」
「あぁ、分かってるよ。ユーリ、奴隷辞めて、俺と一緒になってくれるか?」
「はいぃっ!! こちらこそ……こちらこそ、よろしくお願い致しますぅっ!」
涙を浮かべながら抱き付きいてきた。
「これからも、こちらの世界ではしっかりとご奉仕させていただきますねっ! それに、素晴らしい武器も用意してもらいましたから、ご主人様の足を引っ張らずに、頑張りますぅ!」
フンスッ、と鼻息荒く決意するユーリに対して、苦笑いを浮かべるショースケ。
「期待してるけど……もう、「ご主人様」はいいんじゃないのか?」
「はわわっ!? 確かに……でもぉ、私にとって、ご主人様なのは変わりませんから、このまま、ご主人様と呼ばさせていただきますねぇ?」
「まぁ、いいけどさ……。」
(何か、俺がそういうプレイを強要しているみたいに見られてしまいそうだが……考えすぎか、な?)
「……とにかく、これからも宜しくな。ユーリ。」
「はいぃっ!」
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
予約投稿がうまくいっておらず、更新が遅れました……
仕事が忙しく、わたわたしてますが、次の更新は9月4日になるように、
頑張ります。
よろしくお願いします。




