2話 TODO:冒険者になってみる
食事を終えたショースケは、酒場のマイマイに教えてもらった通り、冒険者ギルドに向かう事にした。
マイマイにも冒険者ギルドの場所については教えて貰っていたが、冒険者ギルドには、すぐ着く事ができた。実は、酒場からそんなに離れていない場所にあるうえ、かなり目立つ程大きな建物だったから、直ぐに分かったのだった。
ここ、オーニキスの街は首都の近くという事もあり、かなり大きな街となっている。街自体は外壁に守られており、その大きさは直径だと1km程度となる。大体、現実でいうところの浦安にある某夢の国と同じ位ではないだろうか。
(それにしてもデカい建物だ、下手したら郊外のホームセンター並の広さはあるんじゃないだろうか……それに、ほぼ街の中央にあるから目立つなぁー。まぁ、とりあえず、さっさと冒険者登録をするか!)
ショースケは重厚な扉を開けて中に入り、受付らしきカウンターに向かう。カウンターは、簡単ではあるが板で区切られており、10個程度の窓口みたいになっていた。
窓口はまばらではあるが埋まっていたので、一番端の受付の前に立ち、ガベルを打って担当者を呼ぶ事にした。
「冒険者の登録をお願いしたいのですがー!」
ショースケの対応のためにやってきたのは、見た目50代程度と思われるおばちゃんだった。それでも、昔は美人だったんじゃないかなぁー、という雰囲気を持ったおばちゃんである。ちなみに、ショースケ担当の受付以外の覗いてみると、若い綺麗なお姉さん達が対応しているのはお約束である。
「――おばさんが受付で文句があるのかい?」
「(サクッと心を見透かされただとっ!?)いやいやいやいや! そんな事ないですよっ! お姉さんだって、美人じゃぁないですか。」
「……まぁ、そういう事にしておいてあげようかね。」
ショースケはとりあえず誤魔化せたと思い、ほっと胸を撫で下ろす。
「さてと、改めて冒険者ギルド、オーニキス支部へようこそ。えーっと、冒険者登録だったね。ところであんた名前は何ていうんだい?」
「あ、ショースケ・タナカっていいます。」
「ふむ、ショースケさんね。ショースケさんは冒険者登録は初めてかい?」
「はい、初めて登録するので、何も分からないんです。色々と教えて貰えると助かります。」
ショースケは頭を下げて、お願いした。すると受付嬢(昔)は、少々驚いたような顔をして「ほぅ」と一言呟き、笑顔になった。
「その若さで年上を敬う態度が出来るなんて、見上げたもんだねぇ。よし、それじゃぁ、色々と教えてあげようじゃないか! あたしはエリナっていうんだ、よろしくね、ショースケさん。」
「ありがとうございます! よろしくお願いします、エリナさん。」
「それじゃ、まずは……。」
ショースケは、エリナから冒険者についてのレクチャーを受ける事になった。ちなみに、受けた説明を纏めるとこんな所である。
・冒険者登録するには、1,000オロが必要となる。
・冒険者にはランクがあり、ギルドバングルの色で分かるようになっている。
ランクは下から、
白、黄、青、緑、紫、茶、黒、金
となる。
・大抵の依頼にはランクを指定されている。
・受ける事が出来る依頼は、自分のランクの1つ上のものまで。
・パーティを組んでいる場合、ランクが一番上のメンバーの1つ上のものまで。
・冒険者は各街に存在する冒険者ギルドから依頼を受ける事ができる。
・クエストボードという掲示板に依頼内容が貼り出されている。
・仕事の内容は、何でも屋みたいなもの。
・受けた依頼が失敗、もしくは身勝手な理由による依頼破棄を行った場合、
違約金が発生する。
・上記の事を繰り返し行うと、ランクの降格や、冒険者登録の強制失効となる。
・冒険者ギルドでは、お金を預ける事も出来る。
(預金額は、ギルドバングルに登録)
・冒険者ギルドがある街の店舗型の店であれば、大抵の店がギルドバングルでの
支払が可能となる。
・登録したばかりの初心者には、訓練場にて講習を受ける事ができる事。
「――とまぁ、大まかな説明はこんな所かね。」
「はい! 色々とありがとうございます。それじゃ、登録料の1,000オロですね。金貨1枚でいいですか?」
「えぇ、問題ないよ。それじゃ、これからショースケさんのギルドバングルを作るからね。ここの板に手を乗せてくれるかい? あぁ、乗せる手は、利き手の方でね。」
「分かりました――これでバングルが作れるんですか?」
「あぁ、そうだよ。この金属板もギルドバングルも特殊な金属で出来ていてね、この金属板がショースケさんの情報を読み取って、バングルに記録するんだ。そうすると、『ステータス』という魔法言語をキーにして、バングルに記録したショースケさんの情報が見れるようになるんだよ。
それに、ギルド依頼の達成記録や、討伐記録。更には賞罰記録も見れるからね。悪い事なんてするんじゃないよ。」
「はぁ~…それはまた、ハイテクですね?」
「はいてく? はいてくって何だい?」
「あぁ、すいません。何でもありません、気にしないでください。」
「そうかい? ま、いいけどさ……」
どうやら、ショースケのギルドバングルが完成したようだ。
出来上がったギルドバングルが問題ないか、エリナが『ステータス』と唱えると、ショースケのステータスが立体に浮かび上がる。それを見たエリナは驚き、目を見開いた。
Status----------
ショースケ・タナカ 27歳 男
筋力:12
体力:25
敏捷:28
知覚:22
魔力:16
技能:言語翻訳、両手剣術(上級)、体術(特級)、魔力操作、
武の才能、精神異常耐性(中級)、調理(上級)
賞罰:なし
------------End
「…………あんた、本当に初めて冒険者登録をするのかい?」
エリナは、ショースケに鋭い視線を向け、尋ねてきた。その突き刺さる様な視線と表情は、先程までの優しそうなおばちゃんの雰囲気と異なるものだった。
「え、えぇ……勿論、初めてですよ。さっきの説明だって、教えてもらうまで全然知りませんでしたし……。」
「――まぁ、賞罰の欄に何もないから、本当なんだろうけども……でもね、あんたは冒険者登録したばかりの「ひよっ子」というには、かなり異常なステータスを持っているんだよ。」
「異常……ですか?」
「あぁ、そうだよ。能力値は新人の平均値を軽く超えちまっている。それに、技能についても、ちょっとやそっとじゃ見掛けないような、珍しいものを持っているときたもんだ。」
「そこまでですか……。」
「そうだねぇ……これは助言だけどね。この立体表示されるステータスってやつは、自己紹介も兼ねて他の人に見せられるんだよ。でもね、皆が仲良くしてくれるわけじゃないのは分かるよね。」
「はい、勿論です。」
「よろしい。このステータス表示にはね、見せたくない情報は隠す事が出来るんだよ。だから先輩方は、技能は他人に見せないようにしているのさ。」
「あ、そういう事が出来るんですね。親切に教えていただき、ありがとうございます! エリナさん。」
「うんうん。私の話を素直に聞いてくれる子は大好きだよ。」
「ははは……。」
ショースケは、こりこりと頬をかきながら苦笑いをするのだった。
「とりあえず、冒険者の登録はこれで終わりだね。ショースケさんは初心者講習はどうするんだい?」
「あ、勿論受けます。本当に何も分からないんで。」
「それじゃ、あそこの扉から外に出ると、そこが訓練場になるからね。そこで講習を受けられるから、そこで待ってておくれ。」
「はい。ご丁寧に色々とありがとうございました。それじゃ、行ってきます!」
「はいよ、頑張ってきなよ。」
(それにしても、面白い若者が入ってきたもんだ。あの子には出来るだけ目を掛けておきたいね。)
エリナに見送られ、ショースケは訓練場に向かうのだった。
※ちなみに、異世界の一般人(市民)の平均値は下の通りになります。
Status----------
成人男性平均(20代 一般人)
筋力:10
体力:12
敏捷:8
知覚:10
魔力:8
------------End
※技能レベルの基準は、このようにしています。
初級:ある程度の知識がある、動きもそれなり(素人に毛が生えた程度)
中級:有段者手前のレベル
上級:有段者になって数年経っているくらいのレベル
特級:選手権などで、大体優勝できる強さを保持するレベル
神域:ほぼ世に現れないレベル、桁違いの技術を持つ