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24話 TODO:ちょっと振り返ってみる

 初めて異世界に迷い込んでから、半年程度過ぎた。

 今、彰介は、地球の方の喫茶店に居る。ここは、高島という元上司かつ、この商業施設のオーナーから紹介されて、構えた自分の店である。

 店の名前は、異世界(ジュエル・ワールド)の名前から連想したもので、【紅玉珈琲】と書いてルビーカフェと名付けた珈琲専門の店だ。


 営業時間は、7時から15時までとしており、今は、遅めのランチタイムを終え、丁度店仕舞いにした所だった。


「由里、今日もお疲れ様ー。」

「はーい、お疲れ様ぁ。彰さん。こっちのテーブルの片付け終わったよー。」

「おう、ありがとう。

 ふぅ……それにしても、濃い半年だったなぁ……。」


 何で、由里が一緒に働いているのかって?

 そうだよね。半年過ぎたらこんな事になってました、って話を進められてもねぇ? 置いてけぼり感が半端ないよねぇー。

 そういう理由で、ちょっと振り返ってみたいと思う。


 あれは、高島さんと契約して、一週間程度で店をオープンさせて、半月程度過ぎた頃だった――


 ~ ~ ~ ~ ~


 オープン直後によくある、物珍しさで訪れる客もある程度引けてきた。

 それでも、それなりの固定客が出来たお蔭で、店は閑古鳥が常に鳴いているような状態とならずに済んでいた。

 もともと求めていた通り、そこまで忙しくない状態をキープする事が出来て、満足する彰介だった。


 丁度客足が途切れ、そろそろ店じまいでもしようか、と思っていた所だったが、そこへ、「カランカラン」という音と共に扉が開いた。


「いらっしゃいませ。」


 新たに訪れたお客に対して、挨拶する彰介。どんなお客さんだろうか? と伺ってみると、そこには長年見知った顔があった。


「彰さん!」

「おぉ、由里だったのか。よく、この店が分かったな。」

「うん! 高島さんに、教えて貰ったんだ。」

「あぁ、成程ね。

 まぁ、見た通り、席は空いてるから、好きな所に座ってくれ。珈琲の一杯くらいはサービスするぞ。」

「あ、ごめん。今日は、お客さんとして来たわけじゃないんだ。」

「ん? そうなのか? それじゃ、今日はどうしてここに?」

「えっとねぇ……バイトでも良いから、雇ってほしいなぁー、と思って。」

「バイト? いや、お前、仕事してるじゃないかよ。」

「会社はねぇ…………辞めてきちゃった。」

「ブーーーーーーーッ!!」


 仕事終わりだと思って、一息つくつもりで珈琲飲んでたもんだから、思いっきり吹いちまったじゃねーか。


「ちょっ!? 彰さん、汚いっ!!」

「ゲホッ、悪ぃ。このタオルで拭いてくれ……。」


 いやいや、そうじゃなくて! 急に、何を言い出すんだよこいつはっ!?


 ……いや、昔から変わってないんだよな。

 由里は、自分が決めたら、何言っても聞かない奴だったもんなぁ。


 あれ? もしかして、俺が辞めるっていう話をした時くらいから、もう決めてた、とか?

 そういえば、あの時の行動やら、言動やら、何かおかしかったもんなぁ……。


「バイトかぁ……。

 まぁ、別に良いんだけどさぁ。あの会社で働くのに比べたら、収入が凄く減っちまうぞ? それでも、良いのか?」

「うん。全然問題ないよっ! 私はね、彰さんと一緒に仕事が出来るだけで良いんだよっ!」

「……そうか。」


 本当にこの子は、気持ちいい程に真っ直ぐ気持ちをぶつけて来るよなぁ。


 それに対して、ずっと逃げ続けている俺は……。


「…………」

「あ、今日はそれだけなんだ! それじゃ、もう帰るね!」

「あ……。」


 あの時、伝えるって決めたんじゃなかったのか、俺は?

 決めた以上は、ここで伝えるんだ! 何とかして引き留めないと……あぁ、どうする?


「…………あれ? 雨、降ってる。おかしいなぁ? 今日は、予報で雨が降るなんて言ってなかったのに。」

「遣らずの雨、か……。」

「ん? 何、それ?」

「あぁ……帰ろうとした時に、降る雨の事を[遣らずの雨]って言うんだよ。その人の足を引き留めて、帰らせたくないって意味かな。」

「ふぅーん……。」


 そうか。そうだよな。

 やっぱ、神様も見てんのかなぁ? 焦れったくなって、いい加減に答えを出せよ、って思ってるんだろうなぁ。


 ……よし! ここは期待に応えますかっ!!


「……なぁ、由里。」

「何?」

「あの時の答え、ずっと待たせて悪かったな。」

「…………やっと、聞かせてくれるんだね?

 本当、どれだけ待たせるのよ。私が告白してから、10年も待ったよ?」

「あぁ、それは悪かったと思ってるよ……でも、その前に信じられないような話をしなくちゃいけないんだけど、聞いてくれないか?」

「……必要な話なんだね?」

「あぁ。」

「分かった。」

「じゃあ――」


 彰介は、週末の間だけだが、異世界に渡ってしまう事。

 その世界は、剣や魔法を使えるファンタジーな世界で、「魔者」という人類の敵を討伐する事によって、こちらの世界では有り得ない位の稼ぎをしているという事を、由里に説明した。


「…………マジ?」

「まぁ、その反応は当然だよ、うん。信じられないのは分かるが、次にこれを見てくれ。」

「何? ブレスレット?」

「あぁ。こいつは、物を出したり入れたりできる魔法の道具なんだけど……あぁ、これなんか丁度良いな。

 これは、エスプレッソ専用のグラインダーっていう機械なんだけど、重さが大体15キロぐらいあるんだ。しかも結構デカイ。」

「うん、そうだね。持ち上げるのも大変そう。」

「そうだな。で、【収納】!」


 彰介がグラインダー(珈琲豆を挽く機械)に手を触れて、異次元収納バングルに収納するように唱えると、あっと言う間にグラインダーは目の前から消えてしまった。


「ウソ!?」

「本当だよ。じゃ、次は【搬出】!」


 次にバングルから出すように、キーワードを唱えると、先程までグラインダーが置いてあった場所に、元々あったかのようにグラインダーが現れた。

 由里は突然の出来事に理解が追い付いていないのか、口を半開きにした状態で、急に現れたグラインダーと、彰介を、何度も何度も見ていた。


「…………本当、なんだね。」

「あぁ、本当だ。

 それでな、由里。こんな俺で良ければ、だけど……バイトなんかじゃなくてさ、俺の隣で一緒に、この店をやってほしいと思っているんだ。

 本当に遅くなって悪いんだが、俺と一緒になってくれないか?」

「……うん! 彰さんで良ければ、じゃないよ! 私はね、彰さんが良いんだよっ!」

「そっか。

 ……ここまで待っていてくれて、本当にありがとう。」

「本当だよっ!! こんなに良いオンナを、よくもここまで待たせてくれたよねっ!」


 その瞳から涙を流しながら、憎まれ口を叩く由里だった。

 それでもその表情は、とても晴れやかな笑顔だった。


「あぁ、本当に悪かった。

 それにしても由里はさぁ、これ見よがしに誰とも付き合わないんだもんなぁー。ずっとプレッシャーを感じてたよ。」

「その割りには、彰さんは私が入社して直ぐ位に。知らない女の人と付き合ってたじゃない! あの時、ほんっとうに悲しかったんだからねっ!!」

「あぁ……そうすれば、流石に諦めるかな、と思ってさ……我ながら卑怯だと思ったよ。」

「本当だよっ!! でも、直ぐに別れちゃったよね?」

「あぁ、違う男を見つけて、さっさと振られたよ……まぁ、付き合ったは良いけど、俺自身があの子の事全然見てなかったからなぁ。

 本当、あの子には悪い事をしたと思っているよ。」

「私にもね!」

「はい。反省してます……。」

「それにしても、急に答えを出してくれるなんて、何かあったの?」

「いやさぁ、異世界に行って、死ぬかもしれないって思った時に、結局、俺はお前しか見てなかった、って事だったって気が付いたんだ。」

「そうなんだ。

 …………って、ハアアァァァッ!? ちょっと彰さんっ!! 死にそうになったって、どういう事っ!!」


 あれ? ついつい口走ってしまったが……この話って、地雷だったか?


「いや、由里さん。ちょっと落ち着いて……。」

「とりあえず、正座。」

「……ハイ。」

「いつもいつも、彰さんは……。」


 そんなこんなで、彰介は床に正座しながら、由里から説教を受ける事3時間。彰介の一世一代の告白は、結局こんな結末で終わったのだった。


 ~ ~ ~ ~ ~


 振り返ってみると、完全に惚気話だったな。

 甘ったるい話ばかりで申し訳ない。まぁでも、そんな事がありまして、一緒に働いているわけです。

 あ。ちゃんと籍を入れたうえで教会で式も挙げたし、お互いの左手の薬指にはプラチナのシンプルな結婚指輪が付いております。




 それじゃ、今度は異世界の方の話をしよう。

 異世界の方では、統率者の時のようなイレギュラーの発生など、大きな事件も起きておらず、自分達のランク未満の魔者達を順調に狩り続けていた。

 これも、あの時に上がったステータスのお陰だと思っている。


 そんな俺達の今のステータスは、こうなっている。括弧が付いているのが、【光の腕】を使っている状態の時のものだ。


【解説 Start】-----------

ショウスケ・タナカ 27歳 男 世の理から踏外し者

筋力:475(1,425)

体力:582(1,746)

敏捷:360(1,080)

知覚:415(1,245)

魔力:125,000

技能:言語翻訳、両手剣術(特級)、体術(特級)、魔力操作、【解説】、【主従の恩恵】、【概念魔法】、【光の腕】

-------------【解説 End】


【解説 Start】-----------

ユーリ・ベルナトゥール 19歳 女 兎獣人(ウェアラビット)

筋力:285

体力:355

敏捷:723

知覚:852

魔力:475

技能:超聴覚、生活魔法、短剣術(上級)、弓術(特級)、隠密(上級)、属性魔法:風(上級)、蘇生魔法(上級)【従者の恩恵】、【魔力操作】、【鋭敏知覚】

-------------【解説 End】


 はい。色々と突っ込みどころが満載ですね。

 俺は、依頼で結構強い魔者を倒したり、エリナさん夫婦に特訓という名の扱きを受けて、ここまで強くなりました。


 え? エリナさん達になら、ここまでステータスが上がっているなら、余裕で勝てるだろうって?

 うん、そうだよね。俺だって経験も積んだし、数値的になら、余裕で勝っている、と思っていたんだ。

 でも何故か、俺のステータスが上がると共に、俺と特訓しているエリナさん達の数値も鰻上りに上がったんだよね。何でだろう?

 そんな訳で、二人掛かりで来られると、まず勝てないのだ。

 それでも、【光の腕】を使えば、何とか勝つ事は出来るんだけど、奥の手使ってこれじゃあね。強くなったはずなのに、自身無くしちゃうよ……。

 

 次にユーリについてだが、どうやら俺が瀕死の状態になったあの後、俺と同様にユーリのステータスも爆発的に上がっていたようです。

 そして、俺と同様にエリナさん達に扱かれる事によって、エリナさんとだけであれば、良い勝負をするようになった。

 速さだけであれば、トップレベルにまでなっているのではなかろうか?


 まぁ、そんなこんなで、地球、異世界、共に順調に過ごしているのだった。


 そして、このまま順調に過ごせるであろうと思っていたんだけど、新たな「ネガイ」が振って湧いてくるなんて、思ってもいなかったんだ。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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新しい連載も始めました。
こちらも、ぜひご閲覧いただければ幸いです。

勇者人形となりて異世界を巡る
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よろしくお願いしますm(_ _)m
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