18話 TODO:村長に報告してみる
ナターシャ(ロリッ娘村長)へ、無事に討伐が完了した事を報告し、依頼完遂の証拠となる割符を貰って、街へ帰る事になったショースケ達。
ユーリは、先程の村長との会話が気に食わなかったのか、まだプリプリと怒っている気配を振りまいていた。
「まぁ、落ち着けよ。ユーリ。」
「でもっ!? あ……すいませぇん。それでもぉ、あの村長さんの人をおちょくるような発言は、失礼だと思いますぅ。」
「そうだねぇ、強烈な人であったのは、間違いないなぁ……。」
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「――という事で、何とか魔者を殲滅する事ができました。」
「おぅおぅ、本当にありがとう。途中、とてつもない奴が現れたと聞いたが、それも倒してしまうとはのぅ。これで、畑も元通り使えるのぅ。」
「あー、畑はすぐには使えないと思いますよ? 俺達も結構暴れちゃいましたから、荒れちゃってますし……。」
「ふむ、そこは問題ないのじゃ。我ら小人族は、大地の恩恵を受けておっての、大地の精霊の協力を得られれば、荒地を畑に変えるのは容易い事なのじゃよ。」
ナターシャの言う通り、小人族は、大地の精霊と共に生きる種族であり、農耕や畜産にとても長けた種族である。
その為、この世界での農耕や畜産を営んでいる村や町では、かの種族の協力を得ている事が多いのである。
「まぁ、そういう事じゃから安心しなさい。」
「へぇー、それなら助かります。」
「お主みたいな者が、この村を守ってくれれば安泰なのじゃがのぅ……そうじゃ! お主、私の婿にならぬか? 私だったら、人間族であるお主が死ぬまで、若い姿のままで相手してあげられるぞ?
それに、村長である私の良人じゃ、食うにも困らぬぞよ?」
「ちょっ……。」
「はああぁぁぁっ!? 何を言ってるんですかぁっ!!」
いきなりの婿入り要請に待ったを掛けたのは、ショースケでなくユーリの方だった。
「おや? 其方はショースケ殿の良い人なのかの? 奴隷紋が付いているから、只の付き人かと思っていたのじゃがなぁ。」
「そっ、そうかもしれませんが! 私はぁ、借金奴隷ですから、あと3年すれば奴隷じゃなくなりますぅ! そしたらっ! そしたらぁ、ご主人様とぉ……えとぉ……。」
「ほほほ、それまでは、主人と奴隷という立場なわけじゃのぅ? その間は、私がショースケ殿に迫っても問題無いわけじゃのぅ? それに、この国は多夫多妻制じゃ。例えお主等が想い合っていたとしても、それこそ問題なかろうて。のぅ?」
「なっ、ううううぅぅぅ……。」
食って掛かるユーリを、軽くあしらうナターシャ。そんなやり取りをしているナターシャの顔は、ニヤニヤしていた。
(あれは、ユーリが俺に好意があるの分かってて、挑発してるな……いや、まぁ、ユーリが俺に対して好意を持ってくれてるのは、何となく分かっていたけどさぁ……っていうか、見た目幼女に迫られても何ともなるかっ! 俺はロリコンじゃねぇっ!)
実は、女性の気持ちなどに鈍いわけではないショースケだったが、それに対して積極的には動こうとはしないので、結局、女性からの評価は、意気地なしだの、鈍い人、と見られてしまうのだった。
「まぁこの子をからかうのは、それ位にして下さい。それと、婿入りの話はお受けできませんので、あしからず。」
「ご主人様ぁ……良かったぁ。」
「ほぅ、それは何でじゃ? 先程も言うた通り、この国は多夫多妻制じゃ。お主に、いくら妻ができても、問題ないのじゃぞ?」
「まぁ、それも魅力的な話ですが、そもそもこの村だけに留まるという事はしたくないんですよ。俺にもやりたい事があるので、まだまだ自由な冒険者を続けたいんです。」
「……そうか。残念じゃが、お主がそう言うのなら仕方あるまいの。じゃが、気が変わったら来ると良いぞ。いつでもうぇるかむじゃ。」
「そんな事にはなりませんっ! 行きましょう、ご主人様ぁ!」
「はは……それじゃ、失礼します。」
「うむ。本当にありがとう。達者での。」
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「……まさか、婿入りを要求されるとはねぇー。」
「本当ですよぉっ、失礼しちゃいますぅっ!」
とまぁ、急にプロポーズしてきたナターシャに対して怒っていたかと思いきや、今度は別の事を思い出したのようで、急に泣き始めた。
「なっ、どうした?」
「うぅっ……それにじでも、ご主人様ぁ、腕が元に戻って良がっだですぅ。本当に、良がっだですぅ。
わだじの所為で、ご主人様が死んでじまうがもしれないと、思っでぇ……。」
ユーリは零れ落ちる涙を腕で拭きながら、ショースケの無事を心から喜んだ。そんなユーリに対して、ショースケは優しく微笑みながら、ユーリの頭を撫でる。
「よしよし、心配かけて悪かったな。これで涙を拭きな。」
「ありがどうございまずぅ――ちーん!」
ショースケからハンカチのような布きれを受け取ったユーリは、それで涙を拭き、お約束のように鼻をかんだ。
「ちょっ!?」
「それにしても、どうしてご主人様の身体は、元に戻ったんでしょうかぁ?」
(何事も無かったかのようにサラリと流したな。しかも、鼻をかんだ布きれは、しっかり畳んで、胸当ての中に入れちゃったし。)
「……あぁ、それが、俺にも何か良くわからないんだよなぁ。もう殺られると思ったあの時に、頭の中で声が響いてな。気が付いたら、腕が元に戻ってたんだよなぁ。」
「えっ!? 声、ですかぁ?」
「あぁそうだけど、声がどうかしたか?」
「声なら私も聞こえましたぁ。あれは一体何だったんでしょうかぁ?」
「は?」
(ユーリにも聞こえた? 俺だけだと思っていたが……結局、あの声は一体何だったんだ? でも、あの声のお蔭で、今、生きていられるのは間違いない、か。
あんな不思議な現象を起こせるとしたら、神様かな? 今度会った時にでも、お礼を言っとくか。)
「……まぁ詳しくは分からないけど、あの後、俺の腕が戻っただけじゃなく、能力が上がったのも間違いないだろうね。そうじゃなきゃ、あそこまで追い詰められた俺が、統率者を簡単に倒せるはずないしな。」
「そぉですよねぇ……それに、私も力が湧いてきたような気がするんですぅ……。」
「は? マジか?」
「はいぃ。」
「よし! それじゃ、俺達のステータスを確認してみるか。まず、自分について【解説】!」
【解説 Start】-----------
ショウスケ・タナカ 27歳 男 世の理から踏外し者
筋力:289
体力:275
敏捷:212
知覚:253
魔力:98,500
技能:言語翻訳、両手剣術(特級)、体術(特級)、魔力操作、
【解説】、【主従の恩恵】、【概念魔法】、【光の腕】
-------------【解説 End】
「ブーッ!?」
「きゃーっ!? ご主人様ぁ、ツバ掛かりましたぁ!」
「あ、ごめんごめん。これで、拭きなさい。」
ショースケは、自分のステータスを【解説】で見てみたが、有り得ない程の変わり様に驚愕して噴き出してしまった。
「ふえぇ、何か良く分からないのが増えてるよぉ……。」
「ちょっ!? 真似しないで下さいよぉ、ご主人様ぁ。」
「悪い、ちょっと巫山戯ただけだ。それにしても、ステータスの数値も凄い事になってるなぁ……っていうか、魔力が桁外れすぎだろ?
んで、スキルも、【概念魔法】に【光の腕】ねぇ。まぁ、光の腕っていうのは、この左手の事で間違いないだろうな。
後は、俺も魔法が使えるようになったのは間違いないみたいだけど、概念魔法ねぇ……ユーリ、概念魔法って知ってるか?」
「いぃえぇ、そんな魔法、聞いた事も無いですぅ。」
「聞いた事もない、か……とりあえず、分からないものは【解説】で聞くのが一番だな。まずは、概念魔法について、【解説】!」
【解説 Start】-----------
概念魔法 がいねんまほう
概念や思想を具現化する魔法。
魔法を具現化する為に決まった呪文や【力ある言葉】は必要無く、その魔法に使用する魔力の量、及び具現化する為のイメージが詳細に渡る程、威力が増す。
-------------【解説 End】
「おぉーっ、便利そうなスキルキターっ! これなら属性とか関係なく、色々な魔法が使えそうじゃないか……って事は、漫画や小説、ゲームとかで出てくるような魔法も使えるってわけか。夢が広がるわー。
よし、次っ! 光の腕について、【解説】!」
【解説 Start】-----------
光の腕 ひかりのうで
田中 彰介の固有技能。
田中 彰介の潜在意思、及び概念魔法の開花により、失われた腕を再生し、魔力で強化されている。
本人の意思により、魔力で覆い、打撃の殺傷力を上昇させる事ができる。
光の腕発動時、ステータスも上昇する。但し、発動して持続できる時間は、最大で魔力÷100秒間となる。
-------------【解説 End】
「……何この、シャイニ○グフィ○ガー。」
「ほぇ? しゃ、しゃい……。」
「気にしちゃいけない!」
「は、はぁ……。」
「えーっと、こいつを発動するとステータスが上昇するのか……行き当たりばったりで使うのも何だし、ちょいと確認してみるかね。ごめん、ユーリ。ちょっと離れててくれるかい?」
「はいぃ、分かりましたぁ。」
「……よし。それじゃ、【光の腕】!」
ショースケが唱えるのと共に左腕が光り輝く。しかも、腕だけでなく、全身を淡い光で包まれているような状態になった。
「ふむ。何か、超なんとか人にでもなったような気分だけど、まぁいいか。そして、俺のステータスについて、【解説】!」
【解説 Start】-----------
ショウスケ・タナカ 27歳 男 世の理から踏外し者
筋力:289(867)
体力:275(825)
敏捷:212(636)
知覚:253(759)
魔力:98,500
技能:言語翻訳、両手剣術(特級)、体術(特級)、魔力操作、
【解説】、【主従の恩恵】、【概念魔法】、【光の腕】
-------------【解説 End】
「うおぅ、ステータスは魔力以外が3倍になるのか。」
「ご主人様、凄いですぅ! 何か、神々しいですよぉ。」
「うん、それ間違いなく、この光のオーラみたいなやつの所為だから。ほんじゃ、とりあえず制限時間いっぱいまで継続してみますかね。」
自動的に解除されるまで、【光の腕】の状態を継続させる。制限時間が訪れ、自然に光が全身から消えると、一瞬、意識を失い倒れそうになるが、直ぐに意識は戻り、何とか倒れずに踏ん張る事が出来た。
「ご主人様ぁ、大丈夫ですかっ!?」
「あぁ、何とか大丈夫だ。」
(それにしても、一瞬とはいえ意識を持っていかれるのはヤバいな。これが戦闘中だったら、致命的な隙になる所だ……これは、奥の手にするしかないな。)
「んで、後はこいつか。」
そう言って、自分の腰に下げている刀を見る。
「こいつも正体不明なんだよな。この世界に来た時から持ってた刀だったが……あの時、俺の意思沿ったかのように、刀身が伸びたしなぁー……とにかく、俺の得物である刀について【解説】。」
【解説 Start】-----------
鬼丸国綱 おにまるくにつな
田中 彰介の??及び、??に伴い????する刀。
????
-------------【解説 End】
「何じゃこりゃ?」
「雑音ばっかりで、何も分かりませんでしたねぇ。」
「あぁ、そうだな。とりあえず、こいつの名前だけでも分かったから、今はそれで良しとしておくか。」
とりあえず、自分達の現状を確認しながら帰路に着くショースケ達。
そんな事をしていると、オーニキスの街まであと半日弱といった所で、日が暮れてきた。
「ご主人様ぁ、そろそろ日が沈みますぅ。」
「よし。ここいらでキャンプを張って、野営の準備をするか。」
「はいぃ、それでは、準備しますねぇ、ご主人様ぁ。」
「……ふぅ。俺に好意を向けてくれてるのは、とても嬉しいんだけど、手を出して良いものなのかねぇ? 地球での事も、そろそろ答えを出さなきゃいけないし……とりあえず、今日も寝不足かぁ……。」
テキパキとテントなどの準備をするユーリを見て、溜息をこぼしながら独り言つショースケだった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
前回の後書きの通り、毎週一回の更新となります。
毎週金曜日に投稿致しますので、今後もよろしくお願い致します。




