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16話 TODO:魔者を蹴散らしてみる

「えーっと、ここが依頼のあったアパタイトの村……で、合ってるよな?」

「はいぃ。ここが、アパタイトの村になりますぅ。」


 エリナの助言や、ユーリからのアドバイスを元に街道を南へ下っていくと、目的のアパタイトの村へ着いた。途中、特にハプニングも無かったので、若干拍子抜けではあったが、無事に着く事が出来たので、そこは感謝すべきかなぁ、と感じるショースケだった。

 若干心配していた野営についても、2人で交代して見張りをしなくてはいけないと思っていたが、警報装置というマジックアイテムのお蔭で、見張りをする必要も無く、それなりに安心して眠る事が出来た。


(本当に変な所でハイテクなんだよなぁー、この世界。1日しか使えないけど、あの警報装置を中心に、魔者が300m圏内に入ったら警報が鳴って知らせてくれるとか、本当に便利だわぁー。しかも、そんな便利な道具が、50オロとはね……。)


「ん? ご主人様ぁ、どうかしましたかぁ?」

「あー、いや、何でもないよ。ちょっと考え事をね……。」


 ショースケは、昨日の事を思い出して気まずくなりユーリから目を逸らした。それを見て、ユーリは首を傾げた。


(それにしても、まだ気まずいな……宿じゃ、一緒の部屋で寝泊りしてるから平気だと思っていたんだが、狭いテントの中に寄り添って寝るのは強烈だった……。

 どうにも、由里と重なって意識しちゃうし、綺麗な顔して、目の前で無防備に寝やがって……こっちは、ドキドキして、寝れなかったっつーのに……。)


「ふわあぁ……。」

「着きましたよ……って、眠そうですねぇ。ご主人様ぁ。」

「あぁ、大丈夫、大丈夫っと……こんにちわー!」


 ショースケは、村の門を守っている男性達に話し掛け、魔者討伐の依頼でやって来た事を告げる。すると、門番の1人が村長宅まで案内してくれた。


「ここが村長の家だ。じゃぁ、頼んだぞ。兄ちゃん。」

「えぇ、任せてください。」

「村長ーっ! 依頼を受けてくれた冒険者の方をお連れしたぞー! さぁ、中に入ってくれ。」

「案内ありがとうございました。それでは、失礼します。」


 門番の案内の元、村長宅に入る。そこでショースケ達を迎えたのは、かなり若い……いや、幼いと言ってもいいぐらいの女の子だった。

 しかし、その幼い見た目にはそぐわない程に、妖艶な雰囲気を醸し出していた。


「ようこそ、冒険者の方。私が、このアパタイトの村の村長のナターシャと申す。」

「あ、えっと、どうも……ショースケっていいます。」

「ユーリですぅ。」

「くくっ、このような女子が村長だったのが以外じゃったかの?」

「あー、まぁ。どう見ても、幼い女の子ですしねぇ……。」

「ちょっ、ご主人様ぁ……。」

「くっくっくっ、見た目に騙されてはいかんよ。私は小人族ホビットでね、こう見えても、齢は200を越えておるのじゃぞ?」

「はっ? 200!?」


(見た目が美少女で、中身が完全に大人とはね……アニメで見たようなキャラを実際に拝む日が来るとは……。)


「ほっほっほっ、そうなんじゃよ。」

「まぁ、確かに雰囲気はおかしいと思いましたけど、そんな大先輩だったとは……失礼しました。」

「ふふっ、まぁ気にしなさんな。若い女子として見られるのならば、悪い気はせんよ。それにしても、かなり急いで来られたようじゃの。依頼を出して3日と経たずに対応いただけるとは、誠に痛み入るのじゃ。」

「いやいや、魔者の討伐は私達の仕事ですから。皆さんにとっては、魔者自体が脅威でしょうし……。」

「全くもってその通りなのじゃ。魔者は、この村の外れ辺りに畑に現れての。若い衆で挑んでは見たものの、見事に返り討ちにあってしまってな。死にはしなかったものの、結構な怪我をしてもうたわ。

 それでも、何とかそこに柵を幾重に立てて、村へは入れないようにする事は出来たのじゃ。しかし、その柵も少しずつ崩されているようで、それが破られるのも時間の問題なのじゃ。

 何とか早急に対応願えないじゃろうか?」

「分かりました。早速向かいましょう。」


 ショースケ達は、村長に教えられた村外れに向かう事にした。まずは、相手の数や得物を確認しようと考え、乱雑に建てられた柵の向こうが見えるという、とある民家の屋根に上り確認する事にした。


「えーっと、1、2……全部で、12体か。結構な数が居るけど、得物は無し、と……そうだなぁ、ユーリ。まず、魔法で蹴散らせないか? 風の魔法が使えたよな?」

「ご主人様ぁ、私、魔法は使えませぇん。」

「は? いや、だってスキル持ってたじゃないか。」

「はいぃ。確かに、ご主人様に確認してもらったステータスでは、[属性魔法(風)]のスキルが付いていましたが、一回も使った事が無いんですぅ。

 それに、風魔法の【力ある言葉】も分からなくて……。」


 ユーリはそう言いながら、しょんぼりと頭を項垂れてしまった。フサフサの耳も、力なく垂れ下がっていた。


「あー、そうかそうか。悪かった、ユーリ。だから、そんなにしょげるな……それじゃ、弓で援護は出来そうか?」

「はいぃ。ご主人様が戦っている所の援護は難しいかもしれませんが、戦っているご主人様に近付いて来る相手を狙う事が出来ると思いますぅ。」

「よし、分かった。んじゃぁ、それで行こう。」


 屋根から降りて、柵で作ったバリケードに近付く。そこで見張りをしていた村人達に、これから突入する事を伝え、後ろに下がってもらう。


「それじゃ、柵の一部を壊して突っ込むぞ」

「はいぃっ!!」


 ショースケ達は、柵の一部を袈裟懸けに切り捨て、蹴破って突入した。

 突入するやいなや、ショースケは近くでバリケードを殴っていた魔者2体の首を、あっと言う間に斬り飛ばした。

 後に続くユーリも、矢を放ち、次々と的確に頭を打ち抜いた。


 次々と魔者を倒していくショースケ達に、遠巻きで見ていた村人達は歓声を上げる。


「よしっ、いいぞ! ユーリ!」

「はいぃっ! この調子なら、すぐ終わりますねっ!」


(あれ? こういう台詞言うと、大抵この後、更に何か出てきたりするんだよな……フラグ立てちゃったかなぁ……。)


 それでも残りを倒していくショースケ達。残るは3体となった所で、その3体の中心にある地面が盛り上がり、新たな何かが這い出してきた。

 それを見て、ショースケは軽く溜息をついた。


(やっぱり……。)


「はわわわ……ご主人様ぁ、魔者が土の中から出てきましたぁ。それに、あの魔者、武器持っていますぅ……。」

「どうやら、小物だけが自然発生しただけじゃないみたいだな。あいつ、他の魔者達に指示を出し始めやがった。とりあえず、あいつは[統率者]とでも名付けておくか。」

「はいぃ……でも、どうしましょぉ、ご主人様ぁ?」

「とりあえず、あいつが本格的に動き出す前に、周りの雑魚を潰すぞ! 右に居る1体を弓で狙ってくれっ!」

「分かりましたぁ! はっ!」


 ユーリに指示を出し、ショースケは新たに現れた魔者の左側に居る、2体の魔者に斬り掛かる。ユーリが放った矢が1体の魔者の頭に突き刺さる。それとほぼ同時にショースケは2体の魔者の首を斬り落としていた。

 残った1体の雑魚魔者も、次々と放つユーリの矢が突き刺さり、その場に倒れた。


 最後に残された統率者は特に何もせず、大剣をぶら下げたまま、現れた場所から動かずにいた。


(油断してるのか、気が抜けてるのか分からんが、今がチャンスだ!)


「さぁ、残ったのはお前だけだ、ぞ!」


 そう言い放つと同時に、ショースケは横薙ぎに斬り掛かる。


 ギンッ


 ショースケの横薙ぎの一撃は、統率者の首に届くと思った瞬間、どこからともなく現れた大剣によって受け止められていた。


「なっ!?」


 ショースケの横薙ぎの一撃を軽く受け止めた統率者は、そのままショースケに前蹴りを仕掛けてきた。


「チィッ!?」


 しかし、何とか腕を引き戻し、手甲によって統率者の蹴りを防いだ。そして、その蹴りの衝撃を逃がすように後ろに跳び、ユーリの元まで下がった。


「大丈夫ですか、ご主人様ぁ?」

「あぁ、問題ない……が、あいつは、別格だ。仕方が無いからユーリは下がっ…」

「このぉっ!」


 ユーリが弓を引き絞り、統率者に向けて矢を放った。

 統率者は向かって来る矢に向かって飛び出し、その手に持つ両手剣を有り得ない速度で振りぬいて矢を叩き落とした。そして、そのまま両手剣を振りかぶった状態で、矢を放ったユーリに迫る。


「ユーリ! 下がれっ、下がるんだっ!!」


 統率者が振り下ろそうとする両手剣の範囲から逃れる為に、一足飛びに下がるユーリだったが、更にもう一歩踏み込み、統率者は口の端を吊り上げながら、両手剣を振り下ろしてきた。

 間に合わない。そう感じた瞬間、ショースケは神速とも呼べる程の速さで、ユーリの隣まで踏み込み、そのまま横からユーリを左手で突き飛ばした。


「キャッ!?」

「よし! 間に合っ……。」


 ゾンッ


「うがああぁぁぁっ!?」

「ああぁぁっ!? ご主人様あぁっ!」


 突き出した左腕のある場所を、統率者が振るった大剣が通り抜ける。

 ショースケが伸ばした左手は、肘上から先が無くなっており、血が噴き出した。


 ユーリは慌ててショースケに駆け寄り、怪我の治療用の薬を振り掛ける。

 ユーリは慌ててショースケに駆け寄り、怪我の治療用の薬を振り掛ける。

 しかし、間近に迫っていた統率者は、2人が一振りで片付けられる範囲内に揃った事に良しとしたのか、大剣を上段に大きく振りかぶった。

 ショースケはそれを見て、ユーリだけは何とか守ろうと思い、残った右腕でユーリを抱きしめ、自分の身体で襲い掛かる大剣から守ろうとする。


「来ないでぇっ! 【暴風】(ぼうふう)っ!!」


 ユーリから統率者に向けて、とてつもない暴風が吹き荒れる。

 さすがに、この風の勢いには抵抗できなかったようで、統率者はかなり離れた場所まで吹き飛ばされた。


「ユーリ、今のは……?」

「ふわぁぁ、魔法ですぅ……魔法が使えましたぁ!」

「今は、それどころじゃない、な……奴が、来るぞ。」


 吹き飛ばされた統率者は、若干驚いたような表情をしていたが、すぐに体勢を整え、こちらへゆっくりと歩み寄る。

 一歩、一歩。ゆっくりと、追い詰めた獲物を狙うかのように。


「ぐぅぅ……くそっ……ははっ、運が…悪いな……。」

「ご主人様ぁ! 腕が……腕がっ!」

「折角、手甲を買ったのに……肘上じゃぁ、防げねぇよな……。」

「ご主人様ぁ、何とか血は止まりましたが……。」

「あぁ、すまない。痛みも引いてる。とりあえず、あの野郎を何とかしないと……。」


 ユーリを後ろに下がらせ、残った右腕で脇差を構えて牽制する。

 統率者は大剣を肩に担ぎ、人を馬鹿にするようにニヤつきながら、ゆっくりと近寄ってくる。


「くそがっ……舐めやがって……余裕かましてんじゃ、ねぇぞっ!!」


 ショースケは残った力を振り絞り、地面を踏み切って統率者に迫る。喉元を狙い脇差を突き入れる。

 しかし、統率者は突き入れてくる脇差を大剣で払い、ショースケの体勢を崩そうとするが、ショースケはその動きは読んでいた。


 突き出した脇差を引き戻したが、踏み込んだそのままの勢いでは、横から迫る大剣に自分の身体が斬られてしまう。

 そこでショースケは身体を捻り、迫り来る大剣を持つ腕を蹴り上げて、大剣の軌道をずらした。身体は地面に対して平行となっているが、横に回転する力を使い、統率者の頭を狙って斬り掛かる。


 ドゴォッ


「グハッ!?」


 完全に不意を付いたはずだったが、統率者は慌てる事なく、大剣を持っていない左拳を振り抜いた。

 腹を打ち抜かれたショースケは、血を吐きながら地面を転がり、ユーリが居る場所まで吹き飛ばされた。


「ご主人様ぁ!? 大丈夫ですかぁっ!?」

「ガハッ……くそっ、人生、やっぱ簡単じゃねぇ、な……。」

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


2015/09/02 抜けていた文章を修正

 ユーリは慌ててショースケに駆け寄り、怪我の治療用の薬を振り掛ける。

 そこへ


 ショースケはそれを見て、ユーリだけは何とか守ろうと思い…

 ユーリは慌ててショースケに駆け寄り、怪我の治療用の薬を振り掛ける。

 しかし、間近に迫っていた統率者は、2人が一振りで片付けられる範囲内に揃った事に良しとしたのか、大剣を上段に大きく振りかぶった。

 ショースケはそれを見て、ユーリだけは何とか守ろうと思い、…


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