15話 TODO:商人とのコネを作ってみる
ショースケ達は、エリナに紹介された商会、[シルクドゥ商会]を訪れていた。
ここでは、初心者から中級者向けの武器や防具、調理道具や旅装品、それに食材や旅の為の携帯食料など、様々な物を取り扱っている為、店舗としては、この街一番の大きさを誇る。地球で例えれば、百貨店のようなものだろうか。
冒険者になったばかりの者であれば、ここに来れば大抵の準備は整うので、様々な店を訪ねる程の時間が無い時など、この店はとても重宝される。
ひとまず、往復で2日は掛かると考え、その分の食事用の食材や飲料水。他にも、野営もする事になるだろうと考え、テントなどの野営道具も買い付けた。
そして、今回は、ユーリにも戦ってもらうつもりだった為、ユーリが扱えそうな短剣や、弓矢などを買い付ける事にした。
「よし! これで準備は……っと忘れてた。そういえば、手甲が出来てる頃だったな。よし、ユーリ。もう一軒行きたい場所があるから、そこに行ってから出発しよう。」
「はいぃ。ところで、この荷物はどうするんですかぁ? 流石に、抱えて持っていけませんから、背負い袋も買っていただけないでしょうかぁ。」
「ん? あぁ、必要ないよ。これに入れるから。」
そう言って、ユーリに左腕の腕輪を見せるショースケ。そして、そのまま左手で荷物に触れて「入れ」と念じると、次々と荷物が消えていった。
「ふええぇぇぇっ!? 何ですか、それはぁ?」
「おおおおおおおおおおお客様っ!? それを一体どこでっ!?」
(あれ? これって見せるのヤバかったやつ?)
失敗したかもと冷や汗を流すショースケに対して、ユーリが詰め寄ってきたが、それ以上に、商会で買い付けの対応をしてくれた男性が、グイグイと詰め寄ってくる。
「お客様! これは間違いなく異次元収納装置ですよねっ! これをどこで手に入れたのですかっ!? しかも、こんな腕輪の物なんて見た事ありませんっ!! どこですかっ!」
「ちょ、ちょっと、落ち着……」
「一体、どこなんですかっ!?」
「だからぁ……。」
「どこですかっ!?」
「落ち着け。」
「ど…ふぼぁっ!?」
ショースケは、余りにも遠慮なく詰め寄ってくる男性従業員に対して、思いっ切りチョップをかましてその勢いを止めた。
その場に突っ伏していた男性従業員は、その衝撃によって正気を取り戻したようで、立ち上がりながら身嗜みを整え、ショースケ達に対して、深々と頭を下げた。
「大変、失礼いたしました。見た事も無いマジックアイテムを見て、取り乱してしまいました……。」
「あぁー、やっぱりそうでしたか。まぁ、2人の反応を見る限り、相当凄い物だったんだなーって思いました。」
「それにしても、ご主人様。それは、何ですかぁ? それに、お店の人が、アイテムボックスって言ってましたけど……。」
「あぁ、それについては、私から説明させていただきましょう。その前に、申し遅れました。私、シルクドゥ商会のソレイユ=シルクドゥと申します。」
(サーカス? ……いや、気にしたら負けだ……。)
「……シルクドゥって事は、この商会の責任者の方とかですかね?」
「はい。私の父が、この商会の元締めをしております。私は、まだ見習いという事で、受付に立たせていただいております。」
「はわわ、御曹司さんですぅ……。」
(ふぅむ……エリナさんにパイクさん。そして、ソレイユさんとまぁ、凄い立場の人達と関わる事が多いなぁ。これも、神様の思し召しってとこだろうか? ……まぁ、こういう縁は、大切にしとかないと。)
「俺は、黄ランクの冒険者のショースケです。そして、こっちは、俺のパートナーのユーリです。」
「はいぃ、ユーリですぅ。よろしくお願いしますぅ。」
「ご丁寧にありがとうございます。それでは、アイテムボックスについて説明させていただきますが、よろしいでしょうか?
「えぇ、お願いします。」
「はいぃ、お願いしますぅ。」
「それでは……アイテムボックスというのは、私の知っている物ですと、皮袋や背負い袋のような入れ物に、[空間魔法]が付与されているものでして、見た目のサイズ以上に荷物を入れる事ができるマジックアイテムとなります。
現在は、先ほども申しました通り、主に背負い袋や、硬貨入れ袋の形のアイテムボックスが作成され、取引されております……が、作成方法はとても難しく、王国お抱えの異次元収納作成部門でしか作成する事が出来ない、と伝えられております。
その為、取引数も少なくいので、とても高価なのです。」
「へぇー、そうなんですね。」
「しかし、ショースケ様がお持ちのアイテムボックスは、初めてお目に掛かります! 優れた機能を持ち、しかも腕輪の形をして携帯性にも優れているなんて……。」
「あぁー……まぁ、ある日、いつの間にか腕に着いてたというか、何と言うか……。」
「流石、ご主人様ですぅ! やっぱり、かみモガッ!?」
「……。」
(それ以上は、言ってはいけません)
何か嫌な予感がして、何か言い出す前にユーリの口を塞いだ。どうやら、その予感は当たっていたようで、余計な事を知られずにホッと胸をなでおろした。
「……? どうかなさいましたか?」
「いや、別に何でもないです。これは、気が付いたら持っていた物なので、どこで拾ったかも分からないんです。」
「そうですか……ちなみに、それをお売り頂く事は?」
「それはお断りします。」
「そうですか。それは、失礼いたしました。」
「それじゃ、そろそろ行かないと……。」
「おぉ、興奮したうえに足止めをしてしまい、大変申し訳ございませんでした。ショースケ様、ユーリ様、本日は良い縁に巡り合う事が出来ました。今後とも、このシルクドゥ商会をご贔屓いただきたく、お願い致します。」
「えぇ、ソレイユさん、また来ます。それじゃ。」
「んんぅ。」
「あ、悪い、ユーリ。口塞いだままだった。」
そう言って、ショースケは、ユーリの口を塞いでいた手を下ろし、解放した。
「ぷはぁ……酷いですぅ、ご主人様ぁ。」
「変な事言いそうになるからだよ。さぁ、行くぞ。」
「あぁん、待ってください! ご主人様ぁ。」
シルクドゥ商会を後にし、ショースケ達が次に訪れたのは盾の行商人である。
4日前に訪れた時に手甲を頼んでおいて、完成すると言っていた日付が今日であった。それであれば、タイミング良く討伐依頼も受けた事もあり、出発前に受け取っておこうと考えたのだ。
「パイクさん、こんにちわー! 頼んでいた物は出来ましたかー? ……って、あれ? いない?」
「……あぁ、ショースケ君だったのね。」
「ひぃっ!? 何も無い所から出てきましたぁ、お化けですぅ! 怖いですぅ……。」
店の中に入ると、店主のパイクが見当たらなかった。
店の奥にでも居るのかと思い、大きな声を出して呼びかけてみたが、特に返事も無く、留守だと思ったのだが、誰もいなかったはずのカウンターに、何所からとも無く現れたパイクさんに驚き、ユーリはショースケの後ろに隠れてしまった。
「お化けじゃないわよ、酷いわねぇー……って誰かしら?」
「あぁ、彼女は奴隷として買いましたが、冒険のパートナーのユーリです。ユーリ、この人は、ここの店主のパイクさんだよ。」
「へぇ、パートナーねぇー……買い取った奴隷を、そういう風に見てくれる人は、なかなか居ないわよ? 良かったわね、ユーリさん。」
「はい! ご主人様は、最高のご主人様ですぅ!」
「ところで、パイクさん。頼んでいた、手甲は出来てますか?」
「えぇ、かなりの自信作よ。見てちょうだい……。」
そう言って、店の奥から持ってきて見せて貰った手甲は、外側は受け流す事を目的としている為か、手首から肘にかけて、滑らかな曲線を描いた金属で覆われており、腕の半分をしっかり守れるようになっている。内側は、着脱可能となっているようで、金属で出来ているようだが、柔軟性のあるベルトのようになっていた。
ちなみに、見た目としては、地球で見た事のある、星座をモチーフにした鎧を着た少年達が、女神様を巡ってバトルしまくるアニメのものによく似ていた。
(いやぁ、素晴らしい出来である事には間違い無いんだが……どう見てもク○スだよな。しかも、色といい、形といい、ペガサスのク○スにそっくりだわ……。)
「……あら? 気に入らなかったかしら?」
「いやいやいや! 余りにも凄いんで、見入ってしまいました。」
「あら、そぉ?」
「それにしても、不思議な形ですねぇ? 何で、小手の内側は、こんな風になってるんですかぁ?」
(ナイス、ユーリ!)
訝しげな顔をしたまま詰め寄ってくるパイクに対して、どうしようと悩んでいた所で、タイミング良く話を逸らしてくれたユーリに感謝しつつ、手甲についての説明を聞く事にした。
「あぁ、これはね、ギルドバングルとかの上からでも装備できるようにしてあるのよ。このベルト部分を、腕に巻きつけるとね……。」
試しに左腕の手甲をパイクに取り付けてもらう。すると、2箇所あるベルトの部分が、「カシュン!」という音がしてベルトが締まり、ガッチリ腕に固定された。
「ふわぁ、恰好良いですぅ。」
「うぉぉ、凄ぇ……しかも、これ手の甲もしっかり保護しているのに、手首が自由に動きますね。これなら、掴み技の時でも邪魔にならないですね。これは凄い!」
「でしょー? 久し振りに創作意欲が湧いたわよー。かなり頑張っちゃった。」
「注文通りだし、文句のつけようが無いですよ。でもこれで、150,000オロは安すぎなんじゃないですか?」
「そうねぇ、確かに安いけど、先行投資って所かしら。何故かショースケ君は、上客……それも、特上のお得意様になってくれそうな気がするのよねぇー。」
「はぁ、そうでしょうか? ……まぁ、そうなれるように、努力はしますが。」
「期待してるわよ。」
「まぁ、期待に応えられるように頑張ります。それじゃ……150,000オロでしたね。」
アイテムボックスから金貨を取り出すショースケ。すると、それを見たパイクが目を見開いてショースケに訪ねてきた。
「あらら? また、凄い物を持ってるわねー。初めて見るわ……もしかして、神の遺物かしら?」
「アーティファクト、ですか?」
「えぇ。その名の通り、神様が創り出したと言われるマジックアイテムの事ね。まぁ、そんな名前が付くようなアイテムだから、現れる事自体が稀なのよねー。有名な所だと、北にある八百万の山脈の噴火によって現れた剣とかかしらね。
まぁ、そんな希少な物を持っている事を知られたら、どんな人に狙われるか分かったものじゃないわ。だから、他の人の目に入れるのは、お薦めしないわね。」
「そうですね、気を付けます。ご助言、ありがとうございます。」
パイクもエリナと同様に、自分の事を気に掛けてくれているんだな、と感じたショースケは、そんな暖かい心遣いに、自分の心が温かくなるのを感じた。
「ううん、気にしないでー。」
「あ、それで、お金の方を……。」
「あ、そうだったわね……はい、確かに頂きました。」
その後、ユーリも身体の動きを阻害しないような、軽めの胸当てを探してもらったが、それも、ク○ス(イー○ルの胸当て辺りをイメージしていただきたい)っぽかったが、性能は良さそうなので、それも購入する事にした。
そして、準備は整ったので、討伐依頼の依頼が出ている村へ向かう事にしたショースケ達だった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
お陰様で、ユニークが1,000人超えました。
拙い文章ではありますが、これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m。




