閑話1 TODO:ユーリはお話を聞いてみる
~ユーリ視点~
ショースケ様が、ご主人様となってもらえた事は、本当にラッキーでした。
不運にも、村の為とはいえ奴隷となってしまった私。いくら人権が守られているといえども、奴隷という立場である以上、どんな仕打ちを受けるか分かりません。
奴隷仲間に、奴隷期間はどんな事があるのかという事を聞いてみると、犯罪奴隷よりは立場は良いとはいえ、奴隷期間中はまともな食事にありつける事は、ほとんど無いという事、そして、過酷な労働も多いという事でした。
それに、女性である私達の場合、法律で禁止されてはいるものの、性的な事を強要される事も多いそうです。
そんな不安な事を聞いてしまうと、どんな人が私を買うのだろうか、という事ばかり考えてしまい、毎日が不安でした。
だって、好みでもないおじさんがご主人様になって、えっちな事を強要されでもしたら…………はわわわわわっ!?
もう、お嫁に行けません!! 兎獣人族にとっては、結婚は重大な目標なんです! 寧ろ、その為に頑張って生きているともいえるのに、そんな事になってしまったら、もう生きていけません!
でも、私を買ってくれたショースケ様は、優しくて、とても素敵な方でした。
ご飯も一緒に食べよう、と言ってくれるし、ご主人様と同じ美味しいご飯を食べさせて貰ってるんです。それに、宿の部屋でも、わざわざベッドを2つにしてくれて、1つのベッドを使わせてもらってるんですよ! ありえない奴隷生活です!
それに……何でかよく分からないんですけど、お兄ちゃんに似ているというか、何というか……とにかく、安心できるんです。
それに、かっこいいし……もう、私の好みど真ん中ですぅ。
そんなご主人様との生活が初まりました。
ご主人様は冒険者なので、そのお手伝いをしています。まあ、私は一人で戦える程強いわけでは無いので、雑用ばかりですけど……。
でも、頑張ってお手伝いして、ご主人様に認めて貰って、そして奴隷期限が終わった暁には……うふふふ。
妄想が止まりませんね、どうしましょう?
そんなあくる日、今日も、お仕事を頑張ろうと思って、部屋から出たら……目の前に居たはずのご主人様が、急に消えてしまったのです。
本当に急ですよ、瞬きして目を開けたら居ないんです! ありえません!!
私は、慌てて部屋の中を探しました。
それでも見つからなくて、半泣きになりながら一階に降りてみると、カチュアさんがテーブルなどを掃除していたので、聞いてみる事にしました。
「ガヂュアざぁん! ごじゅじんざまをびばぜんでじだが!?」
(カチュアさん! ご主人様をみませんでしたか!?)
「うぉう!? どうしたんだい、ユーリちゃん? とりあえず、これでも飲んで、落ち着きなよ。」
そう言ってカチュアさんは、冷えたお水をコップに入れて私に出してくれました。
この宿のアベルさんも、カチュアさんもご主人様と同じで、とても優しい人達です。私が奴隷だという事を知っても、特に何も気にする事無く、普通のお客様のように接してくれるんです。
「はい、ありがとうございます……(ゴクゴク)ぷはぁ。」
「で、どうしたんだい? ショースケさんがどうかしたのかい?」
「はい、そうなんですぅ。お仕事しに行こうとして、部屋を出たら、ご主人様が「パッ」と居なくなっちゃったんですぅ。」
「へ? 急に?」
「そうなんですぅ。」
「……それって、魔法か何かかねぇ?」
「そうなんでしょうか? でも、今までご主人様が魔法を使ったのって、見た事ないんですぅ。」
「ふぅん。ショースケさんは、剣士タイプなのかねぇ? でも、今までったって、3日か4日の間だけだろ? 唯単に使う必要が無かったってだけじゃないかい?」
「……そうかもしれません。」
そうでした。カチュアさんの言う事は尤もで、私はまだご主人様に買ってもらってから、まだ4日程度しか経っていませんでした。
お仕事と言っても、街中の雑用の手伝いや、街付近の採取の仕事ばかりでした。なので、ご主人様が魔者と戦うところさえも見た事ありません。
その程度で、ご主人様の全てを知るわけ無いですね……。
「まぁ、そんなに落ち込む事は無いよ。あたしもショースケさんとは、付き合いは短いけどさ……でも何か、不思議な子なんだよねぇ。
見た目は弱そうなのに、芯はしっかりしてるし、エリナが気に入っている程に強い。でも、それを鼻にかける事なく、周りとの付き合いは丁寧な物腰だ。あれは、冒険者として大成するよ、間違いないね。
そんな凄いご主人様が、黙ってあんたを置いてどっかに行くって事は無いと思うんだけどねぇ?
…………ん?」
その時、2階から「ガタッ」という音が聞こえました。
「もしかしたら、2階に居るんじゃないかい?」
「はい! 見てきます!! カチュアさん、ありがとうございましたっ!」
私は猛ダッシュで2階に上がりました。
居た! ご主人様が、部屋の前で考え事をしているのを見つけました!
「ご主人様ぁーっ!!」
ドゴッ!
「ぐぼあぁっ!?」
あらら?
気付いた時には、無我夢中でご主人様に突っ込んでいました。
ちょっと勢いが付き過ぎてしまったかもしれないけど、これだけ心配させたんだもの。怒ったりしませんよね、ご主人様?
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「……というわけなんだ。」
「ほえぇ、ご主人様は、本当に凄いんですねぇ。」
色々と、ご主人様の事について教えて頂きました。
それにしても、ご主人様がこの世界の人間じゃないっていう事が、一番びっくりした事でした。この世界とは別の世界があるんですねぇ、私も行ってみたいなぁ。
それでも、ご主人様は、ご主人様です!
偶に居なくなってしまうのは不安になってしまいますが、少しの間だけという事であれば、私は大人しく待っている事にしました。
何てったって、神様からお墨付きを頂いているご主人様ですから、必ず帰ってきてくれると信じています。
これからも、よろしくお願いします。ご主人様!
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
大分、ストックが無くなって来ました…orz
何とか、一章の終わりまでは週2更新で頑張りたい思ってます。
拙作ではありますが、読み続けていただければ幸いです。




