13話 TODO:ユーリにお話ししてみる
「まずは、俺が何者か、という所からだな。簡単に言ってしまうと、俺はこの世界の人間じゃないんだ。」
「ふぇ?」
「まぁ、疑問に思うのは最もなんだけど、とりあえず聞いてくれ。
んで、この世界。ユーリ達が生活している、このジュエル・ワールドと言う世界とは生活から何から違う、地球という世界からやってきたんだ。ちなみに、世界を渡る能力を貰ったのは、神様からの恩恵らしいんだ。」
「ほええぇぇ!? 神様って天之主神様ですかぁ? 凄いですぅ! 流石は、ご主人様ですぅ。」
(って、納得するの早っ!? ……こっちの世界だと、神様の恩恵って結構あったりするのだろうか? それにしても、ジュエル・ワールドなんて名前の世界なのに、神様の名前が和名っぽいのは、何だかなぁ……。)
ユーリが、すぐに納得したのは、余り深く考えていないだけかもしれないが……。
実は、ジュエル・ワールドでは、神殿に仕える者や巫女といった者がおり、そういう者達が神託を受けるという事が度々あるのである。その為、この世界の人達は、神様は実在するものだと信じられている。
ちなみに、ジュエル・ワールドでも地球と同じような和名であるのは、神様が名前を考えるのが面倒臭がったためなのだが、それは誰も知らない。
「まぁ、どう流石なのかは分からんが……まぁ、そういう事なんだ。それで、いきなり姿を消してしまったのは、あっちの世界――地球に帰っていたからなんだよ。
どうも、週末……えっと、向こうでは、日付を7日間で区切った単位を一週間と言うんだけど、その7日間の内の2日間だけ、こちらの世界に渡ってこれるみたいなんだ。」
「ほえぇぇ……え? でも4日間、私と一緒でしたよねぇ?」
「あぁ、神様曰く、時間軸が全く違うんだそうだ。
向うの世界の時間軸は、7日ある内の5日間が地球に居る状態で、2日間がジュエル・ワールドに居る状態なんだそうだ。
そして、こちらの世界の時間軸だと、ジュエル・ワールドに居られるのは、3日から10日で、地球に戻っている時間は数分らしいんだ。」
「すうふん?」
「あぁ、すまん。あっちの世界での時間の単位だ。こっちの時間で言うと、数刻って所だな。」
「ほえぇ、成程ぉ。分かりましたぁ。という事は、ご主人様が居なくなってしまうのは、ちょっとの間だけって事なんですね? それなら良かったですぅ。」
「でもなぁ、いつ戻るのかが分からないってのは、困ったものだけどな……(そうだ。今度、ジェネラルストアルームで何か制限時間が分かる道具とか、取り扱ってないか聞いてみよう)。」
この後、地球での事を教えたり、ジュエル・ワールドの常識や、世界(国はどう分かれているのか、どういう人種がいるのかなど)の事、簡単な法律などを教えて貰ったりするのだった。
「……そうか。結構、地球と近い内容が多いのはありがたいな。
そういえば、魔者って何なのか知ってるか? どうして生まれた、とか、何が目的なのかとか?」
「うーん……知りませんねぇ。ずっと昔から居たみたいですよぉ? おばあちゃんから聞いたお話でも、おばあちゃんが生まれるより、もっともっと昔から居たって聞きましたぁ。」
「そっか……(まぁ、そんなもんだよな。とりあえず、このスキル貰ってから、ずっと気になってたし、調べてみるか。魔者について【解説】っ!)。」
【解説 Start】-----------
魔者
ジュエル・ワールドに生きる全ての生き物より生み出される負の感情が、自然の魔力と交わり、魔石が生み出される。
その魔石を守るために、生み出されたタイミングと同時に甲殻として創りだされた者が魔者となる。その為、一度、魔者を破壊すると、魔石は剥き出しの状態となり、素材として利用される。
魔者の強さは、生み出された負の感情の強さや、魔力の濃さによって異なり、魔者の強さのランクは魔石の色によって区別される。
・ランク
白:ゾンビランク、動きが遅く、一般成人であれば、5、6人程度で囲めば倒せる程度。
黄:ゴブリンランク、動きは早くなるが、知能はほぼ無い。一般人では討伐は難しい。
青:オークランク、鈍らではあるが、武器、防具を持つ。しかし、知能は無い。
緑:ソルジャーランク、中級冒険者が持つような武器、防具を持つ。知能は一般成人に比べて、やや低い程度。
紫:ジェネラルランク、ソルジャーランクの上位。主に、ソルジャーランク以下の魔者を統率して襲い掛かってくる。
茶:トロルランク、ソルジャーランクの魔者が巨人化し、傷の再生能力が追加されたもの。
黒:マジシャンランク、ソルジャーランクの魔者の知能が高くなり、初級程度の魔法を使いこなす。
金:デーモンランク、マジシャンランクの魔者に加え、中級以上の魔法を使いこなす。
白金:魔王ランク、デーモンランクの魔者に加え、強靭な装甲を持ち、膨大な魔力を持つ。
-------------【解説 End】
(ふーん、成程ね。この世界の生けとし生ける者に相対する者、か……それにしても、金ランクの魔者が災害級っていうのは間違いなさそうだけど、白金ランクが居るなんて聞いてないなぁー。魔王とか、穏やかじゃないなぁ……。)
「……ご主人様ぁ、今の声は何だったんでしょうかぁ?」
「声?」
「はいぃ、魔者について、色々と説明してくれましたぁ。」
「は?」
(どういう事だ? 何で、俺のスキルの結果がユーリに聞こえているんだ? え、リンクしてるとか?
…………考えられるとしたら、主従関係であるから、か? それとも、このスキルを使った時に、近くにいる者には伝わるとか?
えー、サトラレは嫌だわー。)
色々と頭の中で考えてみたが、いくら考えようが答えは分からないので、実際どのようなものなのかを確認しようという事で、実験する事にしたショースケだった。
「ちょっと、試してみたい事が出来た。ユーリ、ここのベッドに座って、大人しく待っていてくれないか?」
「分かりましたぁ、ご主人様。」
そう言ってショースケは、ユーリに見送られて部屋を出た。そして、1階に降りてみると、丁度カチュアがテーブルなどを拭き掃除しているのを発見した。
丁度良いと思い、そのカチュアの傍に寄って、今度はユーリのステータスについて【解説】のスキルを使う事にした。
(これなら、さっき思いついた事を一気に確認する事が出来るはずだ。ユーリについて、【解説】!)
【解説 Start】-----------
ユーリ・ベルナトゥール 18歳 女 兎獣人
筋力:9
体力:18
敏捷:28
知覚:30
魔力:24
技能:超聴覚、生活魔法、短剣術(中級)、弓術(初級)、隠密(中級)、
属性魔法:風(中級)、蘇生魔法(初級)
【従者の恩恵】、【魔力操作】、【鋭敏知覚】
-------------【解説 End】
初めてユーリのステータスを確認してみたが、ユーリの強さに驚いた。
「(おいおい、凄いじゃないかユーリ。しかも、魔法が使えるなんて羨ましい……って、今はそれどころじゃなかった!)あのぉ、カチュアさん?」
「……ん? あぁ、ショースケさんじゃないか。そんな所で、どうしたんだい?」
「いや、ちょっと聞きたい事がありまして。」
「何だい?」
「何か、頭に響いてくるような声が、聞こえてきたりしました?」
「? いいや。何にも聞こえてこなかったけどねぇ。」
「そうですか。変な事聞いて、すみませんでした。」
カチュアに確認を取ると、ショースケは脱兎の如く自分の部屋に戻って行ったしまった。カチュアは、訝しげな顔でそれを見送るしかなかった。
「……一体、何だったんだい?」
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確認を終え、部屋に戻ってきたたショースケは、もう一つの疑問について、ユーリに確認する事にした。
「待たせて悪かったな、ユーリ。ユーリの方は、何か聞こえたか?」
「はいぃ、私のステータスが聞こえてきましたぁ。」
「そうか……って事は、これで決まりだな。」
確認の結果、ショースケと契約などを結ぶ近しい者には、【解説】のスキルの結果が聞こえるという事が分かった。他にも、【解説】のスキル自体は、ユーリは使う事が出来ず、ショースケだけしが使う事が出来ないという事も分かった。
「ほえぇ……ご主人様は、本当に凄いんですねぇ。」
「まぁ、このスキルも神様に貰ったものだしな。それにしても、ユーリのステータスだって結構凄いじゃないか。冒険者としても活躍できるんじゃないか?」
「いぃえ、私は、奴隷になる前は、ちょっとした獣を弓矢で狩る程度の事しか出来ませんでしたぁ。
それに、私のステータスって、ひと月前に見た時は、こんなに凄くありませんでしたよぉ?」
「……本当か?」
「はいぃ。私が奴隷になる時に、ステータスを登録する必要があったので、その時に見せていただいたんですぅ。
その時は、10以上だったのは、敏捷と知覚だけでしたぁ。スキルだって、魔法のスキルは、生活魔法以外は知りませんねぇ。」
「ふむ。原因を考えると…………やっぱ、俺か、な? それじゃ、俺の事も見てみるか。俺について【解説】っ!」
【解説 Start】-----------
ショウスケ・タナカ 27歳 男 人間
筋力:16
体力:28
敏捷:30
知覚:25
魔力:20
技能:言語翻訳、両手剣術(上級)、体術(特級)、魔力操作、武の才能、
精神異常耐性(中級)、調理(上級)、
【解説】、【主従の恩恵】、【素質上昇】
-------------【解説 End】
(増えてるーっ!? 【解説】は神様から貰ったから分かるけど、見た事無いのが2つもあるぞ、おい。
うーん……とりあえず、【主従の恩恵】っていうのは、さっきユーリが言ってた事と関係しそうなスキルっぽいな。どうやら、主従の恩恵ってのが、ユーリの能力に影響しているみたいだな。
って事は、他に仲間を募るよりは、奴隷を買い取ってパーティを組んだ方が、強化も簡単だし、色々とメリットが多そうだな……。)
「ご主人様、凄いですぅ。」
ふとユーリを見てみると、キラキラした目でショースケを見つめていた。どうやらステータスの内容に感動したようである。
「そうか? そこまで凄いのかも良く分かってないんだけどな。」
「ご主人様、何を言ってるんですかぁ!? ご主人様の強さは、私の居た村で一番強かった方よりも、お強いですよぉ。」
「ふーん、一番強いって、どの位なのさ?」
「その方も冒険者をやってまして、ランクは緑でしたぁ。」
「マジか……。」
(そういえば、冒険者登録して見た時のスキルとは、違うスキルが付いてけど……こっちのステータスも、同じように変わってるのか?)
疑問に思ったショースケは、ギルドバングルを目の前に出して、【ステータス】と唱える。
Status----------
ショースケ・タナカ 27歳 男
筋力:16
体力:28
敏捷:30
知覚:25
魔力:20
技能:言語翻訳、両手剣術(上級)、体術(特級)、魔力操作、武の才能、
精神異常耐性(中級)、調理(上級)
賞罰:なし
------------End
「……ほぅ。」
どうやら、【解説】で見えるステータスの内容と、ギルドバングルに登録されるステータスの内容とは差があるようだ。しかも、【解説】で見えるステータスの方が、ギルドバングルのステータスよりも、詳しく見えるようだ。
(これは、本当に凄いスキルを貰ってしまったな……とはいっても、劇的に強化されたってわけでも無いし、何てったって命が掛かっているんだ。ここは、堅実に経験を積んでいくしかない、か……。)
「まぁ、とにかく、説明はこんな所かな。それと、今聞いた話は内緒だからな。」
「はいぃ、分かりましたぁ!」
「んじゃ、お互いのステータスも確認出来た事だし、そろそろ討伐系の仕事もしてみようと思うんだけど、どうかな?」
「私は、ご主人様が決めた事に従いますぅ……でも、私は足手纏いじゃないでしょうかぁ?」
「大丈夫だと思うんだけどなぁ……まぁ、無理しないでいいからな。それじゃ、ギルドに行くか!」
「はいぃ!」
いつもお読みいただき、ありがとうございます。




