12話 TODO:また異世界に辿り着いてみる
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
「……おぉー、本当に神様の言う通り、週末になると異世界に入っちゃうんだな。」
週末になり、今回は日付が変わる前に帰宅していたが、日付が変わるときにトイレの扉を開けた時、そこはトイレではなく、ナイスの宿の宿泊部屋から出た廊下だった。
とりあえず現実世界では、多少色々とあったが……週末までは、今まで取り掛かっていた医療系管理システムの改修案件を、ぼちぼち進めながら過ごしてきたのだった。
「それにしても、今週は疲れた……。」
実は地球での生活で、神様の来襲や、ジェネラルストアルーム訪問の他にも、こんな事があったのだ……
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「――とまぁ、一身上の都合になってしまい、申し訳ないのですが、今回の案件が収束した所で辞めさせていただきます。」
「そうか、これだけ引き留めても駄目ならしょうがないな。わかった! この案件なら、来週で落ち着くから、そこまでは頑張ってくれ。それで、その後は有給消化してもらって、今月で終わりというところか?」
「はい、そうですね。それで、今月一杯で退職となります。」
「そうか……お前には、色々と面倒な事を押し付けてて悪い事をしたな。」
「いえ。部長には、入社当時から色々と面倒を見て貰っていましたから、少しでも恩返しできたなら、それ位は問題ありません。」
「実に惜しい……が、お前の意思を大切にしたいからな。しかし、来週まではしっかり頼むぞ。」
「はい、勿論です! それでは、失礼致します。」
何と、彰介は会社を辞める事にして、上司に退職する事を打ち明けていた。
(【解説】のスキルが、どんなものかを試すのに、うちの会社の事を調べたら、こんな結果が出ちまっちゃなぁ……。)
【解説 Start】-----------
株式会社 ○×クリエイトシステムズ
資本金:2億5千万円
業務形態としては、医療、保険、金融関連のシステム開発を担っている。
優れた人員を多く抱えており、本年度も黒字で決算を迎える事が出来た。
しかし、鹿山本部長がインサイダー取引を行っている事が近々発覚する事になり、そこから成績は下降すると同時に、離職者が後を絶たない状態となってしまう。
それにより、倒産の危機を迎える事となる。
-------------【解説 End】
(お先真っ暗すぎだろうが! 出来る事なら世話になった部長とか、同僚とか、由里にも、この事を教えてあげたいけど……こんな話を言ったところで、誰も信じてくれるわけないだろうしなぁ……。)
彰介は、大きく溜息をつき、物思いに耽りながらも、自分の作業場所に戻るために廊下を歩いていた。
「彰さぁんっ!!」
自分を呼ぶ声に気が付き、立ち止まって声のする方に顔を向けてみると、由里が慌てて駆けてくるのが見えた。近くで止まってくれるだろう、と思っていたのだが、勢いそのままでタックルをかましてきた。
「ぐほぉっ!?」
由里の攻撃。彰介は、不意を突かれた。
しかし、何とか由里を受け止めた。
「何でタックルしてきたんじゃ、由里ぃっ! しかも、何だよ……呼び方が、昔のままじゃねぇか……。」
その昔の呼び方というのは、お互い児童養護施設にいた頃、彰介を兄のように慕う由里や弟分達から呼ばれていた愛称だった。
「そんなのどうでもいいじゃないっ! 会社を辞めるって本当なのっ!?」
「(タックルしてきといて、どうでも良くねぇよ)……随分とまぁ、話が伝わるのが早いな。」
「部長が教えてくれたのっ!」
「あぁー、成程ね。そういえばお前も、俺と一緒で部長に可愛がられてたもんなぁー……口止めしときゃよかったかねぇ……。」
「ねぇ、彰さんっ!!」
「あぁ、ごめんって。辞めるのは本当だよ。今月一杯で辞める事になったんだ……まぁ、有給が残ってるから、今週で終わりだけどな。」
「そんな……本当、なんだ…………。」
「悪い。」
「……ううん、彰さんが考えた結果なんでしょ? それならしょうがないじゃん。とりあえず、彰さんから直接聞けたし……私も、忙しくなるわ! それじゃね!」
そう言うと、由里はダッシュで来た道を戻って行った。
「何だぁ、あいつ? ま、いっか。とりあえず、仕事を片づけますかね……。」
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「ご主人様ぁーっ!!」
ドゴッ!
「ぐぼあぁっ!?(既視感!?)」
自分を呼ぶ声に気付いて意識を戻すと、ユーリがダッシュでやってくる所だった。そして、その勢いのままタックルをショースケは食らってしまった。
流石に由里の時とは違い、今は、受け止める事が出来ずにユーリに倒されて、馬乗りの状態になっている。
そしてユーリは、ショースケの身体をペタペタ触りながら、泣きそうな顔で声を掛けてきた。
「ご主人様ぁ、どこに行ってらしたんですかぁっ!? 扉から出たら、急に消えたように居なくなってしまって、あの、そのぉ……。」
ユーリは、混乱した。
ショースケは、とりあえずユーリの頭を撫でながら落ち着くように促した。そのお陰か、ユーリが大分落ち着いてきたので、話を切り出す事にした。
「悪かったね、ユーリ。まぁ、神隠しにあったというか、何というか……。」
「へ?」
「いや、何でもない。ところでさ、俺が消えてから戻るまで、どの程度時間が経過していたか分かるかい?」
「そぉですねぇ……急に居なくなって、びっくりしてぇ、慌ててカチュアさんに、ショースケさんを見なかったかを聞きに行ってぇ、そして戻ってきたら、ショースケさんが部屋の前に居ましたぁ。
多分、5刻も経っていないとは思いますぅ。」
「5刻? ……時間の事か?」
「はいぃ、そうですぅ。」
(多分……神様が、こっちで行方不明になる時間が、5分程度って言ってたから、1刻っていうのが、1分に当たるって事か。まぁ、いいや。後で【解説】で聞いてみよう。)
「まぁ、その位か。」
「ところで、ご主人様はどこへ行ってたんですかぁ?」
「うん、とりあえずその事について話そうか。あー、その前にカチュアさんに、謝っとかないと……。」
ショースケは、カチュアへの謝罪と共に、言い訳という名の説明をする事にした。
ユーリが目を離した隙に、いたずら目的でトイレに隠れていたという事で誤魔化し、「こんな大事になるとは思わず、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」と謝った。
その事について、カチュアには若干訝しまれたが、「まぁ、しょうがないね。」との一言で済ましてもらい、ホッと一息つくショースケだった。
次に、ユーリへの説明である。
ショースケ達は部屋に戻る事にした。部屋に戻ってきたショースケは、まずユーリをベッドに座らせ、自身は椅子を用意して向かい合うように座った。
「さて、と……それじゃ、説明しようかね……。」
時間の概念については、このように考えています。
マジックアイテムによる時計で時間、日数を管理している
四季も日本と同じようにある。
春:1日から90日:翠玉月
夏:90日から180日:紅玉月
秋:181日から270日:黄玉月
冬:271日から360日:藍玉月
1日の時間:25で割ったものを、時
その時を、60で割ったものを、刻
(秒の概念は、一応、無しにしておきました)




