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11話 TODO:怪しいお店に入ってみる

 色々と眩暈がするような話を神様から聞いて、神様と別れた後、精神的な疲れがドッと出たが、頑張って会社に行く事にした。

 その会社に行く途中、更に精神力を削るようなものに遭遇してしまうのだった。


(うーん……あれ、どう頑張って見ても、壁に扉がくっついているだけにしか見えないんだよなー。それに、その扉が淡い光を放っているって、どういう事だろう?

 ……いや、何より、俺がその扉に向かって歩いている事が、一番ありえねぇんだが……。)


 彰介は、何故か通勤途中であれば通り過ぎるだけの、商用ビルの壁に向かっていた。しかも、そこには見た事も無い扉が描かれているのだ。そのビル自体は、そこまで印象に残るものでは無かったが、どう頑張って思い返してみても、そんな場所に扉があった記憶なんて無かった。

 理由は分からないが、自分自身の意思とは関係なく、その扉に向かっている事に彰介はただ、動揺するしかなかった。


(ほれほれ、行け行けー。)


 実は神様が、不可視の状態で後ろから押している事なんて気が付く訳もなく、彰介は不思議な扉の前まで辿り着いてしまった。


(んでもってー、おりゃっ!)


(何でだ!? 怪しくて近寄りたくないと思っているのに、それ以上に入りたいっていう好奇心が抑えられないっ!)


 これも神様が、彰介の頭の中に手を突っ込んで、好奇心を思いっきり刺激していた為だったのだが、そんな事、彰介が知るはずもなかった。

 その影響を受けたまま、彰介がドアノブに触れてみると、扉が勝手に開いた。


「うぉっ!? ……ええぃ、ままよっ!」


(よしよし。行ってらっしゃーい。)


 彰介は驚きつつも扉を潜ってみると、そこは8畳程度と思われる広さの部屋だった。部屋の中はというと、調度品といえる物は、3人程度座れる位の立派な革張りのソファーが1つだけ部屋の真ん中にポツンと置かれているだけだった。

 他に気付いた事といえば、調度品も含め、壁や床は、全て深い青色で統一されている事だった。


(何だろう? こんな感じの場所、ゲームで見た事あるような気がする……あぁ、確か、守護霊みたいなものを操る高校生達の話のゲームで、ベル○ットルームとかいう場所に似ているな。)


 そして、どこから現れたのか、ソファーの近くに黒いタキシードを着た老紳士がこちらに向かい、軽くお辞儀した状態で佇んでいるのに気付いた。


「ようこそ、ジェネラルストアルームへ。」

「ジェネラルストアルーム?」


(ベル○ットルームではなかったか……。)


「はい。ここは、地球とジュエル・ワールドを結ぶ万屋とご認識いただければ結構でございます。」

「――って事は、あなたも神様関連の方ですか?」

「左様でございます。主神である、天之御中主神アメノミナカヌシノカミ様に、この役を仰せつかり、彰介様の元へ馳せ参じました。」

「それはそれは、ご丁寧に……って、あの軽い神様って主神だったのっ!? 何かもう、あの神様に振り回されっぱなしだなぁ……。」

「はい。主神様は、他に楽しい事が無いからという事で、人や神達をからかうのを生きがいに感じる程でございます。」

「はぁ…………それは、大変ですね。」

「お気遣い頂き、ありがとうございます。」


 目の前の老紳士が若干疲れた感じに見えたのは、気のせいじゃなかったようだ。

 そんな主神様に振り回されている2人の会話は続く。


「ところで、この部屋って……。」

「はい。先程も申しました通り、ここは彰介様だけがご利用できる特殊な万屋でございます。」

「いや、その事についても確かに教えて欲しいんですけど、その前に、気になっている事があるんですが……。」

「はい、何でございましょうか?」

「えっーと、この部屋のデザインって、一体誰が考えたんですか? っていうか、もしかして……。」

「はい。ご想像の通り、主神様でございます。何でも、彰介様が好きなゲームで、このような部屋が出てくるとか、何とか……。」


(お気遣い頂いて、どーもありがとーございます、主神様よー。ってか、気を回す所がそこかよっ!?)


 彰介は、心の中で主神に対して毒づいた。ちなみに、その様子を見ていた主神は、彰介がうまくハマったのを見て、腹を抱えて笑っていた。


「そういえば、万屋といっても、ソファー以外何もないですよね?」

「これは失礼いたしました。」


 そう言って、老紳士が「パチンッ」と指を鳴らすと、どこからともなくガラスのようなもので出来た商品棚が現れた。

 その商品棚の中には、様々な武器や防具、そして道具が並べられていた。


「すげぇ…………。」


 彰介は、その様子に言葉を失っていた。


「これが、ジェネラルストアルームの真の姿でございます。」

「いやぁ、本当に凄いですね……あ、そういえば、ここの商品って、何と交換すると買う事が出来るんですか?」

「彰介様がお持ちになっているお金で、お買い上げいただく事が可能でございます。」

「へぇー、普通にお金で買い物が出来るわけですか……。」


 彰介は暫くの間、並ばれている商品を見ていた。すると数々の商品の中に、[悪魔召喚プログラム]と書かれた商品が目に入ったが、気にしない事にした。

 やがて、ある商品の所で彰介の目が止まり、その商品の値札を見ながら呟いた。


「あちゃー。これは間違いなく買っておきたいけど、今は手持ちが少なくて、買えそうにないか……。」


 そこへ、老紳士が会話にするべく割り込んで来た。


「確かに、お手持ちの金額では難しいでしょう。しかし、ここは主神によって創られた別次元の世界となります。ここでは、彰介様が、地球の銀行に預けている預金額。そして、彰介様はまだご利用いただいていないようですが、ジュエル・ワールドの冒険者ギルドの預け金についても、自由に引き出す事が出来るのです。

 ……ちなみに、お気づきかもしれませんが、ジュエル・ワールドの1オロは、現実世界の1円と同価値の金銭となります。なお、彰介様がお手持ちのお金については、世界を渡った時点で変換される仕組みとなっております。」


 老紳士の言う通りとなると、現在は手持ちが195,705円、そして銀行には、550万円の貯蓄があるので、使える金額は5,695,705円という事になる。


「はぁー、随分便利ですね……。」

「はい。「出来る限りの協力をするように」と、主神様より仰せつかっておりますので、この程度は問題ありません。ですが、ここに用意した商品の対価として、お金を頂ますのは、何卒ご了承いただきたく。」

「それ位は気にしませんよ――それなら、これは買えそうですね。」


 彰介が指差したものは、[異次元収納バングル]と書かれた商品だった。


「これはこれは、お目が高い。こちらの商品は、200万と値は張りますが、必ずや彰介様のお役に立つ事でしょう。」

「えぇ、これは絶対便利だと思います。ところで、これの中に入る物の制限ってありますか?」

「はい、こちらはですね――」


 老紳士による《異次元収納バングル》の説明はこうだった。

・魔力×10個までの物を、バングルを着けている手で触れ、「入れ」と念じる事により、収納する事が出来る。逆に出す時は、入っている物をイメージして、「出ろ」と念じれば良い。

・バングルに入っている物は、ステータスのように確認する事が出来る。

・重さや、大きさに制限は無い。

・生きた人、動物などは収納する事ができない。

・細かい物や、矢、水などについては、入れ物に入れている場合、その入れ物の数が個数として認識される。

・バングルに収納している物は、現実世界とジュエル・ワールドを何の影響も無く、行き来する事が出来る。


「――という物でございます。」

「おぉー!? 想像していたものより、全然凄かった……これ、買います!」

「畏まりました。それでは、お支払はどう致しましょうか?」

「あ、銀行から引き落としてもらうのは出来ますか?」

「はい、問題ございません。それでは、銀行より差し引かせて頂きます……お買い上げ、ありがとうございます。」


 そう言って老紳士は、ケースの中から[異次元収納バングル]を取り出し、彰介に手渡した。受け取った彰介は、[異次元収納バングル]を右腕に装備しようとしたが、そこにはギルドバングルがある事に気付き、左腕に装備する事にした。


「そういえば、あなたのお名前を教えて貰ってなかったですね。これからも、ここにはお世話になると思いますし、お名前を教えて貰ってもいいですか?」

「はい。私の名前はイゴ…」

「いや、そっちじゃなくてっ!!」


 もうこれ以上のボケはいらないと思っていたようで、かなり食い気味で老紳士にツッコミを入れる彰介だった。


「……これは、失礼致しました。私は、稲荷神イナリノカミと申します。が、キツネとお呼びいただいて結構でございます。」

「わかりました、キツネさん。それじゃ、今後ともよろしくお願いします。」


 そう言って、キツネに右手を差し出す彰介に対して、キツネも右手を出して握手で答える。


「えぇ、こちらこそ、よろしくお願い致します。」

「はい。それじゃあ、また来ます。」

「またのお越しをお待ちしております、彰介様。」


 そして彰介は、扉を出て地球に戻った。


「彰介様、期待しておりますよ。わが主のネガイを叶えるお方……。」

いつもありがとうございます。

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