10話 TODO:神様からレクチャーを受けてみる
「ごめんねー、説明するのに次回に亘っちゃって。」
「だから、どういう事ですか?」
「まぁ、細かい事は気にしないで、ね? それじゃ、何で異世界に迷い込んじゃったか、理由を説明するねー。」
「……はぁ、お願いします。」
何か、良いように振り回されていると感じた彰介だったが、神様はそんな事も気にする事なく話を進めるのだった。
「彰介君ってさー、本当はこっちの世界では、もっと優遇されていたはずなんだよねー。それがね、ちょっとした手違いが起きちゃったんだよねー。今まで、色々と嫌な事があったでしょ?」
「まぁ、大変……だったかなぁ……?」
彰介は今では、普通のサラリーマンとして過ごしているが、そこに至るまでの幼少時代や少年時代は、とても辛いものだった。
優しい両親の元に生を受けたが、その両親は彰介が3歳の頃に交通事故で亡くなっていた。孤児となってしまった彰介を引き取ってくれるはずの親族も、皆、既に他界していた。その為、どこにも行き先が無かった彰介は、児童養護施設預けらる事となった。
しかし、その施設での生活が酷かった。彰介は、これといって素行が悪いわけでもなかったのに、何故か数人の先生の目の敵とされてしまい、その先生達を中心にして精神的な苛めを受けていた。そして、何故か学校生活でも同様に、彰介に関わる大人には目の敵とされてしまうのだった。
それでも、救いであったのは、同じ施設で育った由里を始め、仲間には恵まれており、庇ってくれる者や、慰めてくれる者に支えられてきた。
その為か、性格が捻くれたり、対人恐怖症にもならなかった。更に、彰介自体も、そこまで過去の事を悲観してはいないのだ。
「あ、ちなみにねー。その手違いをした担当神もボコっといたから。」
「あー、まぁ、何というか……えーっと、ちょっと気になったんですけど、神様のボコるってどんなレベルなんですか?」
「んーっとねー、存在の消滅?」
「それ、ボコるってレベルじゃないです……。」
神様の過剰なお仕置きに引きつつ、愚痴交じりの神様の話を纏めてみると、こういう事らしい。
今までの不運な人生の部分の帳尻合わせの為、週末の時間だけ異世界に転移して頑張って来いという事だった。
頑張る内容は人其々かもしれないが、頑張った結果と内容に合わせて、地球での生活待遇も変わっていくというものだった。
「一番分かりやすい所だと、お金だねー。君が今、所持しているお金がそのまま行ったり来たりしている状態だよー。ちゃんと世界に合わせて、変換しているでしょ?」
彰介は財布を確認すると、確かにお金が増えている事に気が付いた。異世界に紛れ込む前は、コンビニに寄った後に確認したのが最後で、確か53,705円だった。
それが、異世界で依頼をこなした事により、195,705円になっていた。
「……本当だ。あっちの世界で持ってたオロと同じ額ですね。」
「そうなんだよー。同じ方が分かりやすいでしょー?」
「はい、そうですね。ちなみに、手持ち分だけって事になりますか?」
「うん。手持ち分だけだよー。それにねー、向こうの世界の物価は、地球に比べると十分の一程度だから、稼ぎやすくなるんじゃないかなー、と思って。」
「確かに、向こうで暮らしてた時に手持ちや収入に比べて、食事とかの物価は安いと思いました。」
「でしょー?」
「あと気になってた事があるんですけど……。」
「んー? なーにー?」
「さっき、週末だけジュエル・ワールドに転移するって言ってましたけど、向こうで過ごす時間って、2日間じゃなかったですよ? 今回だと、4日間だったから時間が合わないですよね?」
「えっとねー、2つの世界で時間軸が違ってるんだけどー。まだ上手く安定してなくってねー。本当だったら、ジュエル・ワールドで10日過ごすと、地球では2日経過するのね。それで、地球で5日過ごすと、ジュエル・ワールドでは5分経過するはずなんだー。
だから、地球では2日間、向こうでは5分間だけ行方不明になる感じだねー。」
「行方不明っすか……でも、行き来する時間が分かれば、やりやすいですね。」
「でしょー? まぁ、地球側は安定してるから、あとは、ジュエル・ワールドだけだねー。ちゃんと担当神に喝を入れとくから、もうしばらく辛抱してねー。」
「あぁ……まぁ、程々にしてあげて下さい。」
そう言って、神は彰介に手を振りながら去ろうとしたが、何かを思い出したようで、「あっ!?」と言って、こちらに振り向いた。
「そうそう、忘れるところだった! お別れする前に、彰介君にはこのスキルをあげるねー。【解説】のスキル。」
「【解説】……ですか? それってどんなスキルなんですか?」
「これはねー、君が知った内容に対して、疑問に思う事ってあったでしょ? お金の事とかー、魔者の事とか。」
「はい、未だによく分かってないですね。」
「それを教えてくれるのが、このスキルだよー。彰介君が疑問に思っている事に対して、その答えを教えてくれるんだー。かなり反則的なものだけど、君に説明するのが遅れたのもあるし、お詫びにあげるよー。」
「おぉー! それは凄い!! 何も分からなくて困ってたんですよ。それじゃ、試しに……魔者について【解説】!」
彰介が【解説】のスキルを発動させると、頭の中にこのような声が聞こえてきた。
【解説 Start】-----------
unknown
-------------【解説 End】
「……あれ? 神様、[unknown]って聞こえましたけど?」
「あー、ごめんね。さっき、時間を止めてるって言ったじゃない? 実はちょっと違うんだよねー。あ、でも嘘ついたわけじゃないよ?
今、作り出している場所って、どこの世界でもない空間になるのねー。だから、地球やジュエル・ワールドの情報を引き出そうとしても、世界自体が違うから情報が引き出せないんだー。」
「あー、そういう事ですか。この【解説】のスキルは、その世界に関する疑問について答えてくれるって事ですね。」
「うん、そういう事ー。」
「ふーん……とりあえず、元の世界に戻ってから使ってみますね。ありがとうございます、神様。」
「いいんだよー。それに、彰介君には、もっと頑張ってもらわないといけないからねー。」
「え? それってどうゆう……。」
「ま、それは、今後の話って事で! それじゃーねー!」
「ちょっ! まっ……。」
最後に言い残した言葉が気になり、神様の手を掴もうとした彰介だったが、「スッ」と通り抜けてしまう。
そんな彰介に対して、神様は少し意地悪そうな顔をして、手を振りながら「じゃーねー」と言い残して、消えてしまった。
「ったく、最後に気になる言葉を言い残して消えるとか、どこのアニメだよ……。」
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