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神様のおとしもの  作者: You
3/3

コトワリ

突然元の場所に返されて困惑する2人。


凛にいたっては未だに夢でもみているのか?

といった具合だった。


「それでは!チュートリアルの続きを始めたいと思いマース!」


ルリはそんな2人に対してなんのためらいもなく話を続けた。


「ちょ、ちょっとまってくれ…チュートリアルの続きって…まさかコトワリを…」


隆の足が震える。

さっきは俺が神になるなんて言ってしまったがまだ見たこともない"コトワリ"という悪魔に対しての恐怖心が強い。


「なにいってるんデスカ?

コトワリを倒すのがあなたの仕事。

それを教え、サポートするのが私の仕事。

簡単なことじゃありませんカ!いたってシンプル!」


たしかにシンプルだ。

だがそう簡単に割り切れる話でもなかった。

昨日…いや、さっきまで普通の受験生だった隆。彼は紛れもなく一般人だ。

なにか武術をら習っていたわけでも特別な才能があるわけでもない。

"ただの"高校だ。


「ウンショ、ウンショ」


ルリは隆達に背中を向けてモジモジしだす。

すると緑色の箱に金の細工がされ、真ん中には宝石が埋め込まれたルリと同じくらいの大きさの箱を取り出した。

どこから出したのかという疑問よりもそれはなんなのか?という疑問のほうがはるかに勝っていた。


「そ、それは…?」


「神様からあずかった物デース!

さぁ!その箱を開けてください!"タカシさん"」


「あ、アァ…」


受け取った箱は隆が持ってみると手のひらサイズですぐに開けることができそうだった。


でも思ったよりもその箱のフタは重く思いっきり力を込めて開いた。

すると箱の中から淡い光が漏れた。


「うわ、まぶしっ…!」


「き、キレイ…」


その光はとても綺麗でこの世のものとは思えぬほど輝きを放っていた。


「その箱に右手をツッコムデース!」


「え!?」


「あぁ!もう!いいから!!ツッコムのデース!!」


そういってふわりと飛び隆の右手を掴み箱に近づけた。

すると箱の中の光は右手のなかに染み込んでいきやがて全ての光が隆の右手に吸収された。


「はい。オーケーデース!」


「え、あ…る、ルリ…なにが…起こったん…うがぁ…ッ!」


隆は右手を押さえつけて地面に転がった。


「始まりましたネ」


「う、うおおおお!!!うッ…い、いてぇ…うあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」


あまりの痛みにのたうちまわる隆


「お兄ちゃん!?どうしたの!?大丈夫!?ルリちゃん!これは!?!?」


「ただの適正検査ですヨ。」


「て、適正…!?」


すると隆の動きがピタッと止まった


「もう…いたくねぇ…?」


痛みは消えたようでふと立ち上がった隆。


「タカシさん。それでは自分が戦っている姿を想像してくだサイ。」


なにかを理解したかのようにら素直にルリの言うことを聞く。


「戦ってる姿だな…わかった…」


隆はスッと目を閉じ足を肩幅まで広げた。

すると隆の右手に光が集まってきて…いや、隆の右手から光が溢れ出してきた。

光は隆全体を包んでいく。

その光は隆の両手へと集まっていきあるカタチへと変化していった。


「なかなか飲み込みが早いデスね」


「こ、これは…双…剣?」


右手には青いドラゴンを模したツカ。

透き通るような水色の刀身。

左手には赤いドラゴンを模したツカ。

燃え上がるような赤い刀身。

まさに2本あって初めて意味をなす。

そんな双剣だった。


「あなたには双剣の適正が出たみたいですネ。」


「双剣の…適正??でも俺剣なんて持ったこともないし…って軽ッ!

こんな軽かったら刃折れるんじゃないか?」


「人にはそれぞれ潜在能力があるんですヨ。

それでその潜在能力と今持ってる身体能力を判断して1番あなたにふさわしいカタチとなって現れる。それがその"おとしもの"といわれるものなのデース!」


「"おとしもの"?なんでそんな名前なんだ??」


「神様の力は大きすぎて分け与えれないのですヨ。だからほんとにそのカケラであるものをあなた達適合者に渡しているのデス。

それを私たちは"神様のおとしもの"と呼んでいマス!」


「なるほど…それでおとしものか…」


「それと軽いっていってましたネ。

その片方でもいいから妹ちゃんに渡してみてくだサーイ。」


「妹ちゃんじゃないよっ!ちゃんと凛って名前があるんだからっ!」


「とりあえず凛、もってみ!めちゃくちゃ軽いから」


隆はひょいと凛に剣を手渡す。

凛が剣を持った瞬間


ガンっ!


凄まじい勢いで凛が剣を落とした。

しかもその剣を落とした地面にはベッコリとへこんでいた。


「え…この剣…こんなに軽いのに…なんでた…」


「お兄ちゃん!めちゃくちゃ重いじゃん!なんでこんなの持てるの!?」


「それはですネ」


ルリはそう言いながら玄関のドアノブへとまた飛んでいき座った。


「タカシさんに適合してるおとしものだからなんですヨ。最初にあの光に手を入れた瞬間そのおとしものはタカシさんにしか使えないよーになってしまったのデス。」


「俺に適合してるおとしもの…」


「あ、そんなこと言ってたら!きましたヨ!!"コトワリ"!

構えてくだサイ!」


家の向こうから少しずつ近づいてくる黒い影。

それは近づいてくるたびに大きくなっていゆく。

次の瞬間コトワリのスピードが一気に上がり隆を横切りタカシの家へと入っていった。いや、すり抜けていった。


隆は困惑していた。

てっきり自分を襲うものだと思っていたから。


「タカシさん!なにぼーっとしてるんですカ?タカシさんの家族の人襲われちゃいますヨ?」


ルリにその一言を言われて隆は我に返った。


ー母さん…ッ!ー


隆は慌てて家の中へと入るそこには停止してピクリとも動かない母親にコトワリが今にも襲いかかろうとしていた。


「やめろッ!」


隆は握っている剣をコトワリに振りかざし斬りつけた。

するとその切れたところから黒い気体が吹き出して少しコトワリが少し小さくなった。


その勢いでもう片方の剣をコトワリに斬りつけようとしたが左手には剣の姿がなかった。

そう。さっき凛に剣を渡して地面に落としたままだったのだ。


隙をみせたタカシにコトワリはその手の3本の爪で隆を斬りつけた。


「うがぁ"!!」


隆はすこし仰け反りその場に倒れこんだ。

いままで感じたことのない痛み感触恐怖すべてが隆を飲み込もうとした瞬間


「お兄ちゃん!!!」


凛の声がした。

隆は凛の声に反応してなんとか意識を取り戻す。


「凛!こっちにくるな!!お前までッ…!」


「お兄ちゃんこれ!」


その両手にはさっきめちゃくちゃ重いといっていた剣があった。

そう。凛は危険を顧みず兄へと武器をもってきたのだ。


隆は考えた。

考えた時間はほんの数秒。

だが何分も考えれる時間があったかのように冷静に考える事ができた。


「凛!力一杯!その剣を俺に投げてくれ!」


「で、でもそしたらお兄ちゃんに!」


「いいから早く!!!時間が無いんだ!!」


凛は無言で(うなず)き持てる力をすべて使い投げた。


さきほどルリには適合した武器、というのを聞いていた。

だから自分には持てた。でも他の人には持てなかった。

ということはこの武器は自分を傷つけることはできないのではないか。そう考えたのだ。


すると剣はすこし不自然な動きをしながら隆の手の中へと飛んで行った。

そしてその剣を握りしめコトワリへとその刀身は向いた。


するとさっきはただ斬りつけただけだったがこんどは右手で斬りつけた直後その斬りつけた部分が凍り始め、黒い気体が吹き出し続けている。

こんどは反対の手でコトワリを斬りつける。

すると斬りつけた直後その部分は爆発をした。


「こ…これは…」


さっきまで何も起こらなかったのに突然爆発と凍り。隆は少し戸惑った。しかしコトワリはその攻撃に構わず隆の母親へと食らいついた。


「か、母さん!!!!」


コトワリは隆の母親を鷲掴(わしづか)みにして喰らい続けた。


それを見た隆は理性を失ってしまった。


「うあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」


右、左、右、左と相手に反撃の隙を与える暇もなく斬りつづけたそれはまるで鬼のように。


みるみるうちに小さくなっていくコトワリ。

そして最後にはすべて気体となってきえてしまった。


パチパチパチパチ


「おめでとうデース。これで無事!チュートリアルはおわ…」


「ルリ!!!!」


少しルリはビクッとなった。


「母さんが…おそわれるなんて…聞いてねぇぞ…」


隆はいままで見せたことのないような顔になっていた。


そしてそんな隆の顔と倒れこんだ母親を見て凛は今にも泣き出しそうな顔でその場に崩れ込んだ。

だがルリもすこしビクッとなったのは最初だけでそのあとは毅然(きぜん)とした態度を取り続けていた。


「ワタシもしりませんデシタ。

でもコトワリを倒すということはそーゆーことなんデス。いままではだれがコトワリに取り憑かれようと喰われようと認知すらできませんデシタ。でもタカシさん、あなたはいまなら認知できる。タダそれだけなんデス。」


「ただそれだけって…なんだよそれ…俺が選ばれなければ母さんは襲われなくてすんだんだろ!?」


「それは違いマース。

あのコトワリの様子からいくとタカシさんのお母さんに前から狙いをつけていたみたいデスネ。チュートリアルはその適合者のみじかにいるコトワリを誘い出すだけなのデ…」


「じゃあ、なにか…俺が選ばれてなくても母さんは遅かれ早かれコトワリに喰われてたのか…」


「ハイ。そーデス。」


「くそ…俺が母さんを守れなかっただけかよ…しかも…あんな奴らが普通に世の中を徘徊(はいかい)しているなんて…」


「ハイ。だからあなた達がいるんですヨ。」


「わかったよ…戦うよ。

俺の周りにいる人達くらいは絶対に守ってやる…ッ!俺が命にかえてもッ…!もう…母さんのような犠牲者は出したくない…ッ!」


「そのいきデース。

レースがはじまるのは1ヶ月後。それまでしっかりと訓練するなりなんなり好きに過ごしてくだサーイ。あ、ちなみにタカシさんがコトワリを感知したら周りの人間の動きがすごーーーく遅くなりマース。なので誰かに感知されることはほぼないデス。

そしてそのコトワリが壊したモノ、もしくはそのコトワリを倒すために戦って壊れたモノはすべて神様の(はか)らいで戻ります。もちろん死んだ人間まで。」


「!?」


隆の顔がスーッと元に戻っていく。


「と、いうことは母さんも…」


「ハイ。戻りマス。」


「よかったぁー…うぐ…うぐ…うぅ…」


それを聞いた凛がまず泣き出した。

それにつられて隆の目にもすこし涙がにじんでいた。


「やっぱり人間はよくわからないデス…」


ルリはボソッと、でも聞こえるような声で言った。


それでは、もといた部屋へとお返しいたしますネ。それではマタ!」


「まってくれ!明日からどうすれ」


隆が全ての言葉を言う前に2人は隆の部屋へと戻されていた。


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