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「うはははははははは!!!」


 ダンジョンの深部――俺は〈Dragon obey Licence Online〉というゲーム、初めて楽しんでいるのではないだろうか。

 ほら、怖すぎると笑いが止まらないっていうだろう?


「そこだー行けー!」

「兄ちゃん足並み揃えてー!」

「うるせえええええ!!」


 ツッコミを入れた瞬間、目の前に壁《・》が迫る。

 いやいや、壁じゃないんですけどね。

 ただの巨大な尻尾だ。


「うおおおおおおおおおおお!!!」


 〈スコーピオンキング edition7〉と名付けられた毒々しい槍の柄で、尻尾をやり過ごそうとするものの、質量の差が大きすぎて、景気よく吹っ飛ばされた。


「死ぬうううううー!!」


 空中に景気よく吹っ飛ばされた。


 こうして上からよく見ると、目の前の化け物の全体図が観察できるなぁ。

 まず、このダンジョンの最深部は広い。おそらく体育館より広い。天井なんか、20mくらいはあるのではないだろうか。

 フィールドボスにまで成長したスリープタートルがすっぽり入る大きさである。


「げふぅ!!」


 天井に叩きつけられ、〈気絶〉になりかけた。視界が歪む。

 その歪んだ視線で、俺を吹っ飛ばしたモンスター〈ゴルゴドアッシュ〉の全体図を捉えた。

 ラミアというモンスターがいるが、それの男バージョンだと考えてもらえればわかりやすいだろう。

 頭から腹までは人間。そこから下は蛇。

 もっとも〈ゴルゴドアッシュ〉の場合、顔はライオンなのだが。


 つまり、キメラだ。合成モンスター。ドラゴンと同様の、合成モンスターなのだ。


「ねーちゃーん! 助けてー!」

「はいはい、待ってなさい」


 どうにか天井にしがみついていると、真っ赤な髪の〈魔族〉が空を飛んでやってきてくれた。


「ありがとうー。一度回復させてー」

「いえいえ」


 脇を抱えられ、空中遊泳を楽しむ。

 〈ゴルゴドアッシュ〉の頭上にまでやってきた。……いやいや、態勢を立て直したいわけなので――あ、「いえいえ」ってそういう意味いいいいいいい!!!


「おおおおにいいいいいいいー!!!!」


 落とされた。

 いつぞか〈フェアリー〉の姫路さんがスリープタートルに用いていた攻撃方法のように、綺麗に落とされた。


 〈スコーピオンキング〉の矛先を〈ゴルゴドアッシュ〉の肩口へ突き刺して、その槍を放棄する。

 多少勢いは相殺できたものの、俺は吹っ飛ぶように地面に落下した。


「兄ちゃんかっけぇー!」

「マジで!? よっしゃ、次行くぜー!」


 〈ゴルゴドアッシュ〉の周りをピョンピョン動き回る〈ワーウルフ〉に言われると、なんか頑張ってもいいような気になってくる。


「姉ちゃんー! 次の武器ー! あと回復お願いしますー!」

「おっけー」


 姉に回復魔法をかけてもらいながら、少しばかり記憶を遡ろう。



 ダンジョンに入ってすぐ、道が大きく広がっていた。

 出入り口付近は学校の廊下程度だったのに、そこから先は地下鉄の通路のような広さだった。

 通路にはクリスタルが散りばめられ、そのクリスタルが姉の持っていたランタンの灯りを反射して、まるで水族館のように綺麗な通路を進むことになった。


 途中、明らかにクロカゼ伍長よりも巨大なモンスターとすれ違うのだが、姉が睨みを効かせると、なぜかサッと視線を逸らしてスゴスゴと闇へと消えていく。

 運悪くバックアタックを仕掛けてきた奴、あるいは正面切って突っ込んできてしまったモンスターは、姉と雪緒の見事な連携により惨殺されることになった。

 もはや憐れとしか言い様がない。

 あまりにも暇なので、フルダイブをオフにしてネットの海に潜ったところ、ここのモンスターは強力なので、パーティーで攻略するように注意書きで書かれていた。

 本当に憐れとしか言い様がない。

 いっそ姉と弟とにも、ゲームの素直な楽しみかたというものを教えてあげたい気分だ。


 しかもこの姉、素人目にもわかる隠し通路や、あるいは途中の宝箱などには目もくれず、それこそ分かれ道や、謎かけらしき文章が書かれた通路すら、答えがわかっているかのように、真っ直ぐ進んでいくものだから恐ろしい。

 

 この姉にしてこの弟あり、というべきか。弟は道に関して言えば、俺と同じようにキョロキョロとあたりを見渡し、それこそ散策し、何度かトラップを作動させてしまったこともあったのだが、気持ち悪いほどの動きで罠をかわし、かわしきれなかった俺を助ける、という荒業までやってのけた。こちらもやはり末恐ろしい。


 まぁ、何度かキルされかけながらも、この二人のおかげで、俺は火山のダンジョンについてある程度学習できたわけだ。


 そもそも、火山のダンジョンは出口のない地下迷路だ。

 最下層には月一でボスが現れるものの、今月――つまり7月14日に現れたのボスは、すでに『メリー』の名を持つベテラン達によって討伐されたとのこと。


 ――昨日、火山で出会ったメリーさんを思い出す。

 たぶん彼女(絶対ネカマ)こそ、その『メリーギルド』の一員だったのだろう。

 そんな最強と、あんな危機的状況で偶然仲良くなった、ヒイラギくんとクーの主人公補正に、惜しみない拍手を送りたい。


 いいんだー。俺は、最終決戦の前にはいつの間にか姿を消している、主人公のお友達ポジションでもー。


 まぁ、真ボスこそ討伐されたものの、ダンジョンの各所にある広場には、中ボスが設置されている。

 その中ボスこそ、俺がいま必死になって攻撃している〈ゴルゴドアッシュ〉なのだが、この中ボスたちはランダム出現なので、「いつ、どこに、何体」現れるか不明とのこと。

 かくいう俺も、〈ゴルゴドアッシュ〉と遭遇するまで、

「ダンジョンには広い空間があるんだなー」

 程度にしか思っていなかった。


 なにもない広場で舌打ちをする姉と雪緒を見て、さっさと気づけば良かったのだが、まぁそれはどうでもいい話しである。


 どうでもいい話しと言えば、魔法の習得もその一つだろう。

 習得は、ただの読書だった。

 一般的な読書と違う点は、ライセンス〈魔法使い〉を会得していないと本が買えず、スキル〈魔導〉を習得していないと本が開けない――ということだろうか。


 魔法を覚えるための本は、魔道書というらしいが、文字は日本語。内容は、前半が魔力の説明と魔法の歴史。まぁパラパラめくっていただけなので、説明は難しい。後半は、その魔道書がどのような魔法であるか、というものだった。後半も、ほとんど読んでいない。

 本当にパラパラめくっていただけだ。パタンと本を閉じたところ、


『〈初心者魔法使い〉を会得しました』

『〈幻影〉を習得しました』


 習得した魔法、〈幻影〉であるが、これは基本魔法になる。〈幻影〉を派生させて、〈奇術〉〈闇魔術〉などを習得するらしい。

 派生のさせかたは幾つか存在するようだ。一つは本を読めばいい。あるいは誰かから教わる。そして、なんと自分で編み出すことも不可能ではないらしい。


 鑑定士は未鑑定アイテムに名前付け。

 調合士は約4万通りある薬から様々な薬を生み出せる。

 武具職人は作った武具に名前を付けられる。


 そして魔法使いは、自分だけの魔法を作り出せるのだ――。


 夢が溢れるゲームである。

 設定上、最高攻撃力で疲労無しで最大範囲なんて魔法は生み出せないらしいが、アニメなんかでよく見る、炎と水の複合魔法もできるとのこと。

 それに、姉や両親すら習得していない魔法スキルで、〈武器付与〉があるらしい。これで武器そのものの属性を好き勝手に弄れるらしい。


 問題は、回復もそこそこに次の武器を押し付けてくる、この姉である。


「これは?」

「〈風魔手裏剣〉!」

「……お、おう」


 巨大な三枚刃の手裏剣。

 鉄製で、中央にある拳大の輪っかに、綺麗な斜めの刃がくっついている。いかにも忍者アニメで使いそうな手裏剣だった。

 いや、もう手の中に隠すことはできないので、ただの投擲武器である。


「戻ってこないから、投げたら拾ってきてね」


 アニメじゃ格好悪すぎて使えねぇよ。

 まぁ、一回投げたら次の武器をもらえばいいか。


「20回は当ててねー」



「うおおおおおおお!!!!! 雪緒おおおおお!! 避けろおおおおお!!!」



 結局30回は投げた。


 基本的に、このゲームのモンスターは、打たれ弱いという話しをしたことがあるとおもう。

 おもうが、その基本には〈ゴルゴドアッシュ〉は含まれなかったようで、次々と武器を手渡されて、ライセンス会得と、スキルのレベルが上がったころに、ようやっと倒すことに成功した。


「いま、俺ジェットコースター乗っても、絶対表情変えないわ……」

「兄ちゃんが!? 無理無理ー!!!」

「フィリップ言ってたよー? さすがに遊園地でガチ泣きされたときは、クラス皆でドン引きしたってー!!」

「やあああめえええてえええよおおおおお!!!」


 小学校5年生の話しじゃないか!!

 相川テメェ覚えてろ! 家族になんて話しをしてやがる!

 俺は、そんなトラウマを消し去るくらいの恐怖が〈ゴルゴドアッシュ〉にはあったって話しをしたかったんだよ!

 その恐怖に耐えながら、アイツに果敢に挑んだ俺の話しを聞けよ!


「雪緒ー。あんた攻撃しすぎー。風太全然攻撃できてないじゃんー」

「ゴメーン。兄ちゃん予想以上にチキンだねー」


 ……コイツら……もし明日乱戦になれば、絶対コイツらからキルしてやる!

 〈乱戦上手〉のスキルが火を噴くぜ!


「あ、スキル確認していい?」


 姉に渡された武器の種類を数えながら、〈メニュー〉から、ライセンスとスキルの一覧を見る――



ライセンス

〈盾使い〉〈守人〉〈守り手〉〈剣士〉〈剣豪〉〈モンク〉〈破戒僧〉〈ファイター〉〈狩人〉〈槍兵〉〈初心者投手〉〈代打〉〈初心者魔法使い〉〈山頂の挑戦者〉〈ボディービルダー〉〈初級鑑定士〉〈ターザン〉〈人殺し〉〈人でなし〉〈味方殺し〉〈弱い者いじめ〉〈採掘師〉〈ライダー〉

―――――――――――――――

スキル

基礎

〈戦闘〉……敵と戦闘になった場合、攻撃ができる。

〈探索〉……フィールドで街道を外れることができる。

〈歩行〉……移動する速さがアップする。

〈作成〉……日用品、回復薬などの調合ができる。

〈育成〉……家畜を育てることができる。

盾 

〈盾威力Lv65〉……盾攻撃の威力を上乗せ。

〈自動防御Lv36〉……視界外からの攻撃も、盾が自動で防ぐ。

〈防御範囲Lv41〉……盾の大きさを「+%」で拡大。

〈シールドバッシュ〉……ダメージ増加。

〈スタンアタック〉……〈気絶〉効果あり。

〈インパクトアタック〉……〈麻痺〉〈気絶〉効果あり。

〈ダブルアタック〉……両手に盾を装備している場合のみ発動。ダメージ増加。

〈完全防御Lv1〉……確立により、相手の攻撃を完全に防御し、無効化する。

〈防御Lv45〉……防御時の衝撃・ダメージ・盾の損耗を軽減。

〈盾カウンターLv20〉→〈ガードインパクト〉……盾で攻撃を弾いた時、弾いた部位にダメージ。

剣 

〈剣威力Lv34〉……剣攻撃の威力を上乗せ。

〈スラッシュ〉……素早い斬撃。低威力。

〈チャージスラッシュ〉……一定時間力を溜めるで発動。高威力。

〈一刀両断〉……上段攻撃の威力が上がる。

〈五月雨〉……連続の突き攻撃。

〈剛断〉……上段攻撃の威力が上がる。高所からの攻撃ほど、威力を上乗せ。

〈壱ノ形〉……上・中・下段攻撃で発動。威力が上がる。

〈弐ノ形〉……上・中・上段攻撃で発動。剣に一定時間火属性が追加される。

〈剣カウンターLv2〉……相手の攻撃を避け、攻撃を与えることで威力を上乗せ。

〈受け流し〉……スウェーした時、スタミナを回復。

無手

〈無手威力Lv53〉……無手攻撃の威力を上乗せする。

〈鉄拳〉……拳の硬さを増すことで、威力と反動耐性を上げる。

〈一点突破〉……一定時間力を溜めることで発動。

〈不動〉……一定時間動かないことで次の一撃だけ威力を上げる。

〈ラッシュ〉……タイミング良く攻撃を加えることで、威力を上乗せ。

〈コンビネーション〉……無手の攻撃スキルを連続で発動させることで、威力を上乗せ。

〈フェイント〉……周囲に擬似情報を見せる。〈幻影〉魔法習得により効果が上がる。

〈インファイト〉……相手との距離が近いほど、無手攻撃の威力が上がる。

〈クロスカウンターLv2〉……相手の攻撃と同時に、相手の顔に攻撃することで、威力を上乗せ。

鈍器

〈打撃威力Lv15〉……鈍器攻撃の威力を上乗せする。

〈フルスイング〉……大きくスイングすることで発動。ボールが遠くに飛ぶ。

〈バスター〉……ボールにヒットすると、相手の動きを若干鈍らせる。

〈乱打〉……連撃中は威力が上がっていく。反撃されると解除。

〈バントLv2〉……ボールを転がせる方向を思考指定できる。高レベルほど正確になる。

槍

〈槍威力Lv29〉……槍攻撃の威力を上乗せする。

〈セットポジション〉……槍を引く速さが上がる。

〈突進〉……槍を固定したまま走ると、槍攻撃の威力が上がる。

〈槍投げ〉……槍の投擲攻撃の飛距離・威力・速さを上げる。

〈五月雨〉……連続の突き攻撃。

〈搦め手〉……槍で対象の腕ごと武器を搦めることで発動。相手の腕に〈麻痺〉効果あり。

投擲

〈投擲威力Lv13〉……投擲攻撃の飛距離・速さを上乗せする。

〈根性〉……フォームが崩れても、投擲の速さを維持することができる。

魔法

〈幻影〉……相手の認識しているものを、思考指定で変化させる幻。

〈消える魔球〉……投擲した武器に付与、思考指定で消す。

〈増える魔球〉……投擲した武器ふ付与、思考指定で増やす。

―――――――――――――――

補助

〈被衝撃軽減Lv9〉……受ける衝撃を軽減する。高レベルほど効果が上がる。

〈被ダメージ軽減Lv8〉……受けるダメージを軽減する。高レベルほど効果が上がる。

〈鷲の目〉……遠くを視覚化できる。

〈深呼吸〉……息を吐き続けている限り、攻撃力が上がる。

〈森の人〉……森フィールドで、隠密行動が可能。第六感が発動しやすくなる。

〈クライミング〉……多少の出っ張りがあれば壁移動できるようになる。

〈猪突猛進〉……ソロで戦う場合、攻撃力が上がる

〈アクティベーション〉……身体を活性化させ、攻撃・防御を高める。

〈跳躍力Lv8〉……ジャンプ力があがる。高レベルほど効果がある。

〈マッスル〉……ポージングより効果が変わる。見せる人数によって向上する。

〈鑑定〉……鑑定済みアイテムか、目視できるようになる。

〈外道Lv1〉……NPCの敵愾心が増す。高レベルほど効果が上がる。

〈不意打ち〉……感知されずに攻撃すると、攻撃力が上がる。

〈乱戦上手〉……乱戦時、モンスターに狙われにくくなる。

〈調教Lv2〉……モンスターを従わせる。高レベルほど効果が上がる。

〈採掘Lv1〉……採掘時、スタミナと道具の消耗値を減少。高レベルほど効果が上がる。

〈悪路走破〉……ライダー中、悪路でも動物が怯えない。

〈敗走〉……ダメージを受けて後退する場合、第六感が発動しやすくなる。

〈怪力〉……装備した武器の重量を軽減する。

〈剛力〉……装備した武器の重量を軽減する。通常武器攻撃の威力を上げる。

―――――――――――――――

特殊

〈調合Lv1〉〈調理Lv1〉〈孵化〉〈瞬足Lv16〉〈採取〉〈鉄加工Lv2〉〈革加工Lv1〉〈骨加工Lv1〉〈石加工Lv1〉〈布加工Lv3〉〈下卑た笑い〉〈乗馬〉



 いやー増えたけどさー増えたんだけどさー。

 一言だけ、一言だけね?


「野球編始まっちゃうよー!!!」


 地下に、深く深く響いたことだろう。




こ、これで終わりです。

本当に申し訳ありません……。


予定では3日に1話のペースだったんですけど、23時帰宅とかちょっと……。

ゴールデンウィークからほとんど話しが進んでいません!

3月末の『完結させます』発言はなんだったのか!

できるなら3ヶ月前に戻りたい。でなければ遺伝子レベルでやり直したい。いっそ貝になりたい。ニートにもなりたい。


感想ありがとうございました!

いまから返信書きます!!

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