表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/45

11

 森で出会った初心者プレイヤー。

 名前はクー。〈亜人・クロコダイル〉。性別女。尻尾はすごく短い。それくらいだろうか。うん。もう十分だな。


「信じられないんですけど! 女性の着替え見ておいて、ごめんなさいの一言もないとか」

「女性と雌は別ものだろうが。あと近づくな怖い」


 デフォルメされて、まんまるな顔になっているものの、ガチンガチンと歯が鳴っている音には、根源的な恐怖を感じる。身長は俺より小さいが、喉元に顎が来るのでなお怖い。

 っくそ、声は普通の女の子だから油断した。さっきバシャっと水面に隠れたとき、さぞ面白い絵面だったことは間違いない。


「すみませんクロカゼさん……。忠告してくれたのに」

「いいよ。運良くライセンスとか増えたし。とりあえず森から出ようか」


 ポンポンとヒイラギくんの頭を撫でる。ふぅ、癒しだ。


「ヒイラギくんに触らないでよ! 変態!」

「うるせぇ! コイツは俺のだ!」


 ヒイラギくんを抱き上げると、視界に『×』印が現れたのでスっと下ろした。ミクリさん……俺はあなた一筋になるよ。


「じゃ、着いてきてくれ! って言いたいところだけど、この森は出にくくなっててねー。結構歩かなきゃならないんだよ」


 この森は、まっすぐ出ようと思ってもなかなか出られない残念な仕様になっているらしい。森の怖さってやつを教えたかったのかもしれないが、序盤でやるのは卑怯だよ!


「まぁ、〈鑑定〉でもしながら、ゆっくり抜けようか」


 森を抜けるのにかかった1時間、俺は二人にスキルとライセンスのイロハを教えることになった。武器のなかったヒイラギくんにはレザーバックラーを貸してあげ、クーとは、棍棒と初期装備とを交換した。


 クロコダイルの攻撃力には目を見張るものがあるなー。不意をついたとはいえ、棍棒でウォーターベアーを一撃のもとに屠ったクーを見て、俺は感動していた。


「棍棒ってどうすればいいの?」

「俺もしらん。殴り続ければスキル覚えると思うよ。ちなみに俺は〈打撃威力〉しか身につけてない。ライセンスもなし」


 昨日買って、スライム相手にぶん回していただけだからねー、と付け加えておいた。役に立たないねーと言われた。

 コイツとは合いませんな!


「あ! クロカゼさん! 〈範囲防御〉覚えましたよ!」

「よくやった! それでキミもバグ技の仲間入りだぜ!」


 俺には、なぞが一つあった。昨日のウォーターベアーは、一定量倒すとリポップしなくなっていたのに、今回はそういうわけでもないようだ。それに群れを作って3、4頭で活動していた熊たちは、今日は単体での徘徊が目立つ。

 よくわからんなぁ。


 結局、昨日より多くのウォーターベアーを倒してもイベントは起こらず、赤いウォーターベアーを見ることもなかった。


「抜けたー!!!」

「まぶしー!」


 森を抜け、一度街に戻る。


「次からちゃんと、ヒイラギくんの話をきいてやれよ。はい盾と剣」

「わかってるよ! うるさいなぁ!」


 コイツ全然わかってない! あと棍棒返せ。


「ありがとうございましたクロカゼさん!」

「大丈夫だよ。卵が無事で良かったな」


 はい! と笑顔で頷くヒイラギきゅん。

 とりあえず、誰よりも可愛いという確信があった。


 クーのほうはといえば棍棒が気に入ってしまったようで、結局友だち価格の10000kで売ることにした。中古だし、妥当なところだろう。品質60は、たぶん珍しいはずだ。

 ボッタくり! などと叫ぶクロコダイルことはしらん。ウォーターベアーで稼がせてやったろうに!

 棍棒の製作者の店も教えて、修理もできるからねーと伝えておく。


「まだ行ってないギルドあるんだよね?」

「はい! ボクは大丈夫ですけど、クーが探索に行かなきゃです」

「そっか。気をつけてなー」


 バーサークボアは記憶に新しい。それは彼も同様だろう。


「さてと!」


 俺は晴れやかな気分で、初心者プレイヤーの落し物を換金所に渡していた。





 自室のどこでもドアを使うと、一度自室を開けた街に行けるらしいが、せっかく覚えた〈瞬足〉を使い、走って隣の街に戻る。

 普段、滅多に運動しないため、なんか気持ちがいい。疲れはするものの、ちょうどいい疲労感というか、いま自分運動してますよーという疲れ方だ。


 物足りないプレイヤーも何人かいるようで、ガシャガシャとわざわざ重たい鎧を着込んで走る人とすれ違うことがあった。

 4回ほど休憩したが、20分足らずで隣の街につくことができた。〈瞬足Lv5〉ともなると早いものだなと感心する。


 街についてさっそくイチャイチャするカップルが目につく。てめぇら……ゲームをなんだと思っているんだ!!

 でもピチャピチャと水面を揺らすのは、ちょっと気持ちよさそうだった。

 そういえば、水関係のライセンスもあるよな? 現実世界で考えれば、スキューバーやらダインビングやら、本当に免許が存在している職業は多い。DOLOではどうなのだろうか。


 そんなことを考えながら街の中を探索する。今回の街は、本当にただの街だな。

 正直迷いそうである。

 日本と違って建物の統一感が凄まじい。ともすれば美しい町並みだが、目印になるようなものがない。看板を見上げながら進むプレイヤーが多いため、デカイ俺にぶつかる奴らが多い。


「いたっ! いたいな!!」

「ああ、ごめんね」


 目の前のイケメンもその一人だった。

 いや、俺はちゃんと壁際に寄っていたし、左肩を大きく引いて、斜めに歩いていたんですよ?

 そのことには、彼の後ろのメンバーも気がついているようで、イケメンを無視して俺に謝る後ろの三人。


「ごめんなー。ほらケント謝りなさい」

「母親か!」


 仲良さそうで結構だ。

 男女二人ずつ。美男美女のメンバーだった。イケメンや美女をたくさん見たとは言っても、可愛い女の子を見ると、やはりドキっとしてしまう。


「すみません、彼のよそ見で」

「あぁ、いえいえ問題ないですよ!」


 美女に頭を下げられ、慌ててしまう。だがクロカゼ伍長は戦場と戦場を渡り歩く、寡黙な傭兵。女など、女など!

 後ろ髪がブチブチ引きちぎられる思いで、じゃあ、と別れようとしたとき、ケントに声をかけられた。


「ごめんな。よそ見してた」


 なんだ、いいやつじゃないかケント。


「気にしてないよ。そっちは気をつけてな」



 出会いは一期一会というが、実は次の日、フィールドでケントのチームと出会うことになる。運命――というほど綺麗な再会ではなかったが、偶然と片付けるにはもったいない気がした。



 ケント一行から離れてしばらく、ネットでダンジョンに関して検索する。

 ……次の街〈ジョカ領ウェルカムパオ〉。俺はどれほど家族に離されているのだろう。雪緒くん、ゲーム受け取ってすぐにダンジョン探索する~とか言っていたよね? ライセンスとるために最初の街行ったんだよね? わけがわからないよ。


 ショックは隠しきれないが、なら2つ目の街ではなにをするのかと再検索。


 ギルドの作り方と入り方のチュートリアル――パス。ギルド関連のスキルなど、あとからでも大丈夫だろう。

 馬車の購入――ソロで馬車買っても、〈行商人〉くらいしか使い道ないよな。スキルもライセンスも増えそうだが、一週間で楽しめるとは決して思えない。

 バイト――ですか。働きますか。案の定人気もないようだ。

 おお! と思ったのは〈建築〉だったが、すぐに家が組み立てられるようなライセンスではないようだ。最初は釘とトンカチを木材に打ち続け〈日曜大工〉を取得して、そのまま木材をのこぎりで切ったりはったりと。急いで取得するようなものじゃないな。

 

 それくらいなら、旅の合間にトンカチと釘で生木を打ち続けているだけで取得できそうなライセンスである。ただ〈人間〉だからなー。

 〈ダッシュ〉だって、散々森を走り回ったのに、結局歩行ギルド行くまで身につかなかった。いや、まぁ歩行ギルドが開放条件だっただけかもわからないが。


 〈孵化〉にしたって、育成ギルドに行かなくても、モンスターの卵を見つけて5日ほどかけて〈孵化〉させれば会得できるスキルのはずだ。


 くっ、ネットを頭から見直すか? しかし、それであの赤い板がレアでもなんでもないとわかってしまったら、切なくて部屋を燃やしてしまいそうだ。

 それに、そうだよ! これは第二の人生! 生き急いでどうしようってもんだ! 


 まぁwikiも掲示板も使わせていただくが……。


『ではミクリはもらって行きますね』っと。


 他にも、ライセンスの取得に関しては〈セントラルライセンス〉とは比較にならなかった。その一部を読み上げよう。

 〈建築〉に始まり、〈測量〉〈調教〉〈スポーツ〉〈美容師〉〈調理師〉〈人形師〉などなどなど。

 しかも、この街から向こうはNPCの店よりプレイヤーの店が主流になっているらしく、趣味に目覚めた人たちが多いので、弟子入りは簡単だそうだ。いまの俺のライセンスでは〈準騎士〉は遠そうだ……。


 残念なのは、この街に〈魔法〉の表示がまだないことだ。ここには〈魔法〉を扱うチュートリアルはないので、他の街になるのだろうか。いや、この街でだって誰かから〈教授〉してもらうことで、使えるようになるのだろうが。

 あ、武器は杖とかなのかな? 魔法石とかでカスタマイズしちゃったり? ウヘヘ胸が熱くなりますな!


 うんうんと一人で頷きながら、そう言えばと辺りを見渡す。

 いやはや、あれだね、うん……うん。


 2つ目の街〈ネンベッツア〉は、ともすれば美しい街並みだった。とだけ言っておこう。




 昼前に、どうにかアパートの前にたどり着く。道すがらいろいろと買ってしまって、お金はまたなくなっていた。

 家族に昼飯は? と聞くと、食った、と言われる。こだまでしょうか?


 飯なんかいらないよ! 勉強するわけでもないんだし! とりあえず、クロカゼ兄さんの財布を腹いっぱいにさせようじゃないか。

 そう息巻くものの、効率的な稼ぎかたがわからない。検索しても、2つ目の街で金欠になる人は少ないようで、特別なことはなかった。


 とりあえず、この街から向こうに存在するクエストギルドの門を叩いた。

 中は人で混雑している。俺にぶつかった人たちも、みんなこのギルドを目指しているのだろう、という盛況ぶり。

 NPCの挨拶も聞こえてこないくらいだった。


 一際デカい俺は、邪魔になっているのだろうなと身体を丸めて掲示板の前に立つ。中身もさほど確認せず、5枚くらい引き抜いてクエストギルドの受付嬢にそれを手渡した。


「ライセンスに問題はありませんね! では、どうかよろしくお願いしまーす!」


 一度外に出て、〈クエスト〉を確認。

 さすがチュートリアル終わって次の街。とくに珍しいクエストはない。街の周りを探索して、ターゲットを刈るだけの簡単なお仕事です。


1000? ん? 評価者30? このページは俺のじゃない!

と慌てて感想ページ見て

すごく当たり前なことツッコまれてることで安心しました……。


本当に1000pt突破してるんですね!

見てくださった方々、お気に入りにしてくださっている方々、評価してくださった方々、感想いただいた方々、本当にありがとうございます!!


いまから感想の返信かきます! すみません3日も……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ