表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

パノラマ島のクリスマス (脚本形式)

作者: nekojita

特に警告する事は有りませんが、脚本形式である事だけはご注意ください。

初投稿ゆえどのように評価をされるか正直不安ですが、よろしければ最後までお付き合いいただけるように、お願いします。

「パノラマ島のクリスマス」


 登場人物

   主人公=セールスマン

   相棒

   部長

   部下

   原住民A

      B

      C

   反乱者D

      E

      F

      G

   他エキストラとして原住民5人ほど。



 電話中のセールスマン=主人公が中央。

 端に電話の向こうの部長。

 舞台暗く、ライトは二人だけに。


主人公「部長! ダメです」

部 長「一体何がダメなのだ言ってみろバカモノォ!」

主人公「まともな商品がこちらに一つも届いていません。運送屋の手違いですか、そっちのミスですか」

部 長「知るかバカモノォ!絶海の孤島に左遷された分際で偉そうなことを! 俺は止めたんだぞ。なのにあいつら」

主人公「なるほどね。そっちの不良社員からの、死者に鞭打つような嫌がらせですか」

部 長「そうだバカモノォ!」

主人公「開き直らないで下さい。とにかくこのガラクタで、商売は無理です」

部 長「貴様それでもわが社のセールスマンかバカモノォ!おい!われらの社訓を言ってみろ!」

主人公「『ポジティヴ・シンキング』です!!」

部 長「そうだ心の問題だバカモノォ! 一度売り抜くと一度決めたらなぁ、例えどんな商品でも完売するのがセールスマンというものだ。売れ! 売れ! 売れよいいな! 売れ!」


 部長は電話を切る動作をして退場。

 舞台の電気がつく。


 部屋の中。ガラクタ(不用品)の山が中央にある。ガラクタの内容は後述。但し山の中央に曲がった古木を置いておく。

 あとは椅子がひとつ置いてあるだけ。


 主人公のセールスマンは椅子に座り、前屈姿勢でため息をつく。


主人公「無理だ! 常識的に考えて売れるわけない!」


 舞台上手から主人公の相棒がパラボラアンテナを持って転がってくる。

 若い住民が三人同じ方向から登場。住民A・B・Cとする。相棒のオジサンを罵倒。


住民A「てめぇ買え買えしつけえんだよ!」

住民B「中古のパラボラアンテナなんかいるわけねーだろ!」

住民C「俺、この前騙されてテレビ買っちまったよ!どの国の電波も、入る気配すら無いんだよ!」

相 棒「そ、それはアンテナが無いから、ギャー!」


住民三人が相棒を足蹴にしようとする。


相 棒「待て! 待て待て君たち、まず落ち着こう。いいか、俺たちは、ここで稼がないとクビになる。俺だってね、好きで君たちに詐欺まがい商売やってんじゃないのよ。売れ売れ売れ売れしつこく言われてるのよ。会社に。オジサンは従わないとダメなのよ。じゃないとクビになるから。クビになるという概念が分かるか? 分かってくれるよね。オジサンくらいの年になると、どこにも再就職なんかできないんだ。東京に妻と子供を置いてきた。子供なんか二人だぜ。その三人が路頭に迷うのさ。路頭に迷うんだぜ。食うものも着るものも住むところもなくすんだぜ。」

住民A「うるせえよ! 泣き落としなんかうっとうしいぜ」


主人公はまたため息をついて、椅子から立ち上がる。


主人公「悪かった。うちの社員が迷惑をかけたようで、すまない」


主人公はおもむろに土下座する。


主人公「この通りだ」


 住人たちは決まり悪そうに、舌打ちして逃げる。主人公が立ち上がる。


相 棒「…ごめんな」

主人公「気にしないで下さい。こんな孤島に飛ばされて、プライドも何もありません」


 主人公は椅子に座りなおす。

 相棒も立ち上がる。


相 棒「だって仕方ねーじゃん! ゴミじゃん! ゴミじゃん! これとか! ゴミじゃん!」


 言いながらアンテナをゴミ山に投げ捨て、ガラクタの山を蹴飛ばして痛がる。


主人公「そろそろまともにやってたんじゃあダメだ。何かやり方を考えよう」

相 棒「うーん……いっそのこと嘘をついて売っちまうか」


 相棒のオジサンはゴミ山から汚いタオルを取り出し、おどけて客席に向かって言う。


相 棒「先進国で流行の、最新のパンツでございます。え?黒い? なんの、炭素イオンが健康に良いんです」


 主人公は相棒を見ずに無言で考える。


相 棒「あ、これいいな」


 相棒はガラクタの山から取り出した柔道着の袋を取り出して持って上手へ消える。


相 棒「えー、文化的先進国で流行の…」

住民B「いい加減にしろ!」


 二人のやり取りが舞台外から聞こえ、すぐに相棒が転がされてくる。住民Bが入ってくる。


住民B「さすがに柔道着だろう!」

相 棒「お、おっしゃる通り…」

住民B「俺たちの目も、節穴じゃないぞ!」


 住民Bは主人公に言う。


住民B「ほんと頼みますよ。このオッサン縛り付けといてくださいよ。」

主人公「考えておく」


 住民退場。相棒は背中をなで、全身を払いながら立ち上がる。


相 棒「むむむ、今度は…」


 主人公はハッと思いついた顔。


主人公「いける! いけるぞ!」

相 棒「どうした?」

主人公「いいか。バレンタインデーが日本に上陸したのが一九五八年のことだ。しかしその時点で、西洋のそれとは全く違う形だった。チョコレート会社の陰謀だ!」

相 棒「は?」

主人公「いけるぞ!『イワシの頭も信心から』作戦、決行だ!」






 背景、村の広場へ。

 ガラクタの山は少しだけ下手側へ移動。


主人公「皆様。われわれの故郷の先進国に存在する、クリスマスという名前の祭りを、お教えしましょう」


 舞台に向かって言うと、上手下手から住民が五、六人集まってくる。


主人公「まずこのアンテ…もとい、クリスマスリース! クリスマスに家の屋根に立てます!」

主人公がガラクタから取り出して住民にパラボラアンテナを渡す。

主人公「さあ行きなさい! 料金は後払いで結構。」


 住民たちは戸惑いながらも背景にアンテナを付けに行く。不穏で新興宗教的な音楽(平沢進のインストゥルメンタルから選ぶとよい)が流れ始める。

 相棒がガラクタの中央にある活断層を指さし言う。


相 棒「あれがクリスマスツリーです。

    ホラ、これで飾り付けをしなさい」


 そう言って残った住民にモールを渡す。

 住民は二人くらいで曲がった古木を中央に運び、飾りつける。

 主人公は大げさな身振りで上の柔道着を羽織る。


主人公「これがサンタです!」


 住民がガラクタから物=汚れたタオルなどをそれぞれ取り出して背景の飾り付けを始める。


相 棒「これ、今流れてる怪しい曲が、聖歌です。」


 主人公と相棒は続けて、交互にガラクタの山から商品を取り出し、客席に向かって掲げて嘘を叫ぶのを繰り返しながら舞台上を何周かする。


主人公「これがクリスマスカードです(古新聞を掲げる)」

相 棒「これが靴下、クリスマス専用の靴下です履きません(よくわからない袋を掲げる)」

主人公「これをクリスマスケーキといいます(おはぎの袋を掲げる)」

相 棒「これが七面鳥です(鳥の模型をかかげる)」


 住民たちが飾り付けをだんだんノリノリになる。背景が怪しくなる。ここで暗転。聖歌を止める。背景をメインカラーが赤の、宗教っぽく改造された同じ場所に変える。クリスマスツリーは残しておく。




 暗いまま、下手から部長と新人登場。ケータイを持って電話するのは新人。


部 長「報告が遅いので本社から視察に来たと言え」

新 人「来たぞバカモノォ!売れてないだろイッヒッヒ!」


 暗闇から声。


主人公「ちょうどよかった。クリスマスパーティーの真っ最中です」

部 長「クリスマス?まだまだだろう」

新 人「適当なことを言うなバカモノォ!」

主人公「一ヶ月続けてやることにしました。売り上げなら好調ですよ」

部 長「そ、そうか。よくわからんがよくやったな。よし、よくやったと言え」

新 人「よくやったなバカモノォ!」

部 長「さっきから通訳いらねえよバカモノォ!」


 部長が新人を蹴り倒し携帯を奪う。


部 長「詳しい話を聞きたい。」

主人公「西の海岸ですね?今迎えに行かせます」


 暗闇から突然最初の住民ABCが現れる。

 部長と新人を床に押さえる。



 電気をつける。いきなり聖歌も流す。

 赤っぽい村の広場。

 村人たちは踊っていて(背景の絵でも可)踊りの輪の中央に主人公と相棒と飾り付けられた古木。

その近く下手側に部長と新人二人を押さえる三人の住民。


住民C「教祖・サンタクロース様! 侵入者を捕らえてまいりました!」

主人公「よろしい使徒パウロ・ペテロ・ヨハネ!『聖なる高枝切りバサミ』を購入する権利を与えよう!」


 三人の住民は狂喜して、他の住人と交代して下手に去っていく。


部 長「何しているバカモノォ!」

相 棒「貴様! このお方をどなたと心得る! イエスキリストシャカムハンマド、その他もろもろの代弁者、教祖・サンタクロース様にあらせられるぞ!」

部 長「は、ははぁー」

新 人「ははあじゃねえよバカモノォ!何してるんだ!」

主人公「クリスマスパーティーですよ。サンタクロースのまわりを缶切りを振り回しながら踊って、大切な人に刃物をあげるんです。これにはあなたになら殺されてもいいという意味がありまして」

部 長「新興宗教じゃん!」

主人公「そういうわけで刃物が足りなくなりそうです。他にも不用品を送ってください全部捌きます。まだこれから正月、そして本番バレンタインがありますからね」

新 人「だから宗教じゃん!」

主人公「無宗教の行事なんて本質は全部新興宗教ですよ。ん?どうしました?」


 住民の耳打ちを受け相棒が主人公に言う。


相 棒「教祖ちょっとまずいことになった。あの不良品のはずのアンテナが、ハワイかどこかの電波を拾ってしまった。クリスマスは全然違うと、もう気がついた奴がいる」


 主人公は一瞬考えて、答える。


主人公「神に背く不逞の輩だ。始末しろ。手段は任せる」

相 棒「オーケイ。みんな!」


 住人たちが踊りをやめて部長と新人を蹴りながら相棒のところに集まってくる。


相 棒「いいか、テレビは危ないぞ。あれから出る電波でゲーム脳、いや違った、テレビ脳になるからね。みんないくぞ!島中のテレビを叩き壊せ!」

主人公「生ぬるい!殲滅しろ!テレビを見た者触れた者、一人残らず消せ!殺せ!首を切れ!」

相 棒「…! 天の言葉! 天のお言葉である! 行くぞ!お言葉通りにせよ!」

住民達「おーっ!」


 そろって拳を突き上げる。

 そこに反乱者四名(DEFG)上手から登場、目立たないようテレビも持ってくる。


反乱D「そうはさせるか!」


 三人の住人ABCが高枝切りバサミを持って戻ってくる。


相 棒「かわいそうに、奴らテレビの見すぎで頭が悪くなったのだ! かかれ!」


 反乱者DEFが飛びかかるが、高枝切りバサミでなぎ払われる。

 しかしその隙に反乱者Gが舞台中央まで躍り出て、肩に乗せたテレビを客席に向ける。


反乱G「みんな!これを見て、目を覚ませ!」


 全体的に人物は動きを止める。音楽停止。テレビが光る。


ニュース「この世界一のクリスマスツリーには、沢山の観光客がつめかけそうですね。赤い服のサンタさんも、ニコニコと笑っています」


 相棒と主人公があせりだす。


相 棒「待て待て陰謀だ!俺たちの嘘を暴こうとするユダヤとCIAの陰謀なんだ!」

反乱G「語るに落ちるとはこのことだな! みんな、正しいクリスマスを俺たちでしよう!こいつらなんか追い出してしまえ!」


 ポーズをとる反乱者G。住民全員ゆっくり相棒と主人公とクリスマスツリーを取り囲む。

 再び声を揃えて叫ぶ。


住民達「おーっ!」


 まず真ん中にいる住民たちが脇にのいて、目立つようにクリスマスツリーを破壊。そのまま主人公と相棒に突撃。住民が装飾をいくつかはがして、そのままツリーの破片だけ残して背景回収。部長と新人はこそこそと出ていく。住民たちも叫びながら退場。倒れた主人公と相棒だけ残る。





 背景完全撤収後、中央倒れた主人公にスポット。主人公は古木か装飾の残骸を杖にして、片膝をついて立つ。宗教の音楽がまた始まって、少しずつ音を大きくしていく。


主人公「正しいクリスマスだと? ふざけるな! 正しいクリスマス正しい宗教一体全体そいつは何だ! 赤い服のホーリーサンタ!? コカ・コーラが考えた幻想じゃないか! キリストもシャカもムハンマドも! 全部最初は新興宗教じゃないか」


 よろけながら、もう少し立つ。


主人公「そうだ……! ……日本だ! 日本で宗教を作るのだ! そうと決まればすぐに、すぐに本社に戻ってやるぞ! もちろん、嘘っぱちだってすぐバレるだろう。だがそれでも日本人なら、日本人なら奴らきっと騙される! テレビ局だって未だバレンタインを煽るじゃないか。嘘だと知らない日本人など今じゃあもういないというのに! 確信した! 待っていろ日本人! 貴様らが声を揃えて馬鹿な歌を歌い、足並み揃えてコサックを踊る! そういうクリスマスはすぐ……そこだ!」


 力を振り絞って客席を指差し、見栄を切る。滑ってずてんと倒れる。幕。




お読み頂き有難うございます。上演の相談は随時受け付けております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ