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創造神を抱く少女

都心から離れた閑静な住宅街にそこはあった。

鉄筋コンクリートの三階建のビル・・・一見して何処にでもありそうなビルである。

そして、そのビルの入り口には、ゴシック体で<illustration factory>と刻まれたブロンズ製のプレートが下がっていた。

その中のある一室では、何やら小気味の良い音がせわしなく聞こえていた。

時間帯的には、夜が明け始めたばかりの時間帯である。すると、その音が止まった。

「あーーー!!! また予算がオーバーしてるぅぅぅ!!!!」

そんな叫び声が薄明るくなり始めた室内に木霊した。はっきり言って近所迷惑である。

さて、このような叫び声をあげたのは、二十代前半の青年である。なかなか端正な顔立ち

だが、目を引くのはシャツの間から見える何かの刺青のようなモノだった。      

「くそ! 京の奴また何か変な物買ってんな!! それに領収書に「秘密さ」なんて書くか普通!?」

なかば、ヒステリックを起こしつつ青年は、叫びと共に領収書を投げた。


アハハハ、見て見て雪みたいだよ! ・・・・・俺は、馬鹿か?


一人脳内ボケツッコミをして激しい自己嫌悪に陥る青年とその時・・・。

「朝から、そんなに大声出したらダメだよ、勇君。」

優しい声と一緒に青年の前にコーヒーが置かれた。

「だって、仁さん!」

勇は、苛立ちにまかせて振り返った。

そこには、優しい笑みを浮かべた獅子人の男が立っていた。この人が、俺の上司にして

世界中で大人気のイラストレーターである大河 仁である。

ちなみに、自己紹介が遅れた。俺の名前は、白峰 勇矢・・この会社(?)の事務員をしている。

ほかにも二人いるのだが、後にしよう。


話が反れたな。


「まぁまぁ、京君だっていろいろあるだろうからさ。気にしすぎだよ。」

「また、そんな事言って!こんな無鉄砲な金銭感覚と経営方針だと倒産しちゃいますよ!」

勇矢は、今にも噛み付かんばかりの勢いで吼える!

しかし、仁は、笑顔を崩さなかった。その逆に

「ハハハ、その心配は無いよ勇君。」

余裕の態度で言う仁。こういう時は、決まってアレだ。

「もしかして、仕事が入ったんですか?」

「ああ、今度は、政府からの依頼だよ。」

そう言って仁は、一枚の紙を勇矢に渡した。

「へぇ・・・・・・・・・・これ、マジですか?」

「マジだよ。」

「大統領のご令嬢を狙う悪魔の掃討と護衛って普通有り得ないですよね。」

勇矢は、疲れがましたような顔をしていた。

「まぁまぁ、さっさと預かるだけだからさ」

仁は、笑って言っているが心配しているのは、そんな事ではない。

「ここがある意味、異常な場所だと分かって言ってるんですか?」

「・・・だからこそさ。」

仁は、やはり優しい口調で言った。

やれやれ、今回の仕事は、面倒な事になりそうだ。勇矢は、1人ため息と苦笑を刻んだ。

「ただいまぁ~~。」

ガチャリと扉が開いて間延びした声がオフィス内に響いた。

その瞬間、勇矢は仁を突き飛ばして後ろ腰に下げていたモノを向けた

「京ぉぉぉぉぉ!!!」

「ぎゃあああああああああああ!!!!!!」

勇矢が野獣の雄叫びの如き咆哮をあげ、入ってきたソレは殺気の為か悲鳴をあげて、ソファーの後ろにダイブした。

「いい加減に高額な刃や剣を大人買いするのは、やめやがれ!!

てか、いっぺん死ね!」

明らかに人格が変わってしまった勇矢は、レクイエムと名付けて愛用し続けている

自動拳銃を撃ち続ける。

「ちょ、ちょ、タンマ!タンマ!」

ソファーの背後から京と思われる停止の声がした。

すると、銃撃音はピタリ!と治まりオフィス内に薬莢が床に落ちてたてる澄んだ音が響いた。

「納得できる答えなら特別に許してやる。」

「マジで!?言う言う!」

そう言って出てきたのは、1人の狼人が出てきた。

まるで高級なシルクをさらにミルクにひたしたような純白な毛並みに毛先は金色の斜光がはいっていてかなり美しい。

「言ってみろ。」

「行きつけの店の親父が安くするって言ったから買った。」

「へぇ、値段は、ちゃんと確かめたのかな?」

勇矢は、ガシャリ!と空になった弾倉を排出しながら新しい弾倉に入れ換えながら

聞いた。

その様子は、まさに嵐の前の静けさのようだった・・・

後に様子を見ていた仁は、日記に書き残している。

「いいや、全然!」

「やっぱり、死んでくれ。」

勇矢は、銃口を向けて京に死刑宣告をした。

それから数分間、ビルからは盛大な発砲音と悲鳴が響き渡った。

           しばらくお待ち下さい

「これからは、買う前にちゃんと俺に相談すること。分かった?」

勇矢は、銃をホルスターに戻しながら忠告した。

「わ・・・分かりました。」

京は、弱弱しく言った。体のギリギリを打ち抜かれながら。

その様子に仁は、可笑しそうな複雑そうな顔をして2人の様子を見ていた。


すると


「ククク・・・。」

小さな笑い声がした。

「おや、閃君のお帰りかな?」

仁が、そう言ったのと同じ瞬間、ドアが開いた。

「騒がしいと思ったら、また無駄遣いですか、京?」

足元に落ちていた領収書を拾いあげながら言うのは、典型的な羽毛をした鴉の鳥人だった。細くしなやかな体を仕立ての良いスーツに身を包んで細淵の眼鏡を掛けていた。

「あ、お帰り!閃!」

勇矢は、笑いかけながら言った。

「はい。ただいま帰りました。」

閃もニッコリと笑いながら挨拶をした。ここまでなら紳士的で優しい人なのだが、

しかし、その手には不釣合いな大鎌が握られ、鈍い輝き放つ刃に微かに血がこびり付いていた。

「・・・また誰か狩ってきたのか?」

「ええ。なんならあなたを食べてもいいですよ?」

取り方を間違えるとセクハラ的な発言をする閃に京は、げんなりした表情で

「冗談は、口だけにしろ。」

それだけ言い残して京は、二階に消えていった。

「ふふふ。それで迎えに行くんですか?」

「そうだな。話では、今日の午前七時に都内の高級マンションに行くよう指示してある。」

仁が、もう一度依頼内容を確認して言った。

「強いですかね?」

閃が目をぎらつかせながら勇矢を見たが、勇矢はデスクに座って銃弾を作り直していた。無視にかぎる

「それで仁さん。その悪魔だか悪霊だかは、何をしたんですか?」

勇矢は、感じていた。今回の仕事は、いつもと何かが違う。何か大きく動きそうな気配があるのだ。

「ストーカーみたいな事だけだよ。」

仁も着ているパジャマを脱ぎながら答える。

「さっさと終わらせて休暇にしましょう。予定を三日間オフにしておきました。」

そう言ってやると仁は、飛び上がらんばかりの勢いで喜んでいた。いや、実際にスキップしていたが・・。

頼むから仕事してくださいよ・・・・。




イフの表は、イラスト会社しかしそれは、表だけに見せている隠れ蓑にすぎない

本当の顔 それは、悪魔や悪霊はては天使まで現世に侵入し、人々の命や生活を脅かす

侵入者を狩る現世の狩人


境界の審判者―エクスターミネイターである。


そして、境界を越えた侵入者は、彼等をこう呼ぶ


異端にして裏切り者の末裔―アウトサイダーと・・・・・・・・。



































第二章  魔王と女神を宿す少女  裏切り者の狩人達との出会い



父さんは、ここにいなさいと言った。

すぐに助けてくれる人が来てくれるからそう言ってくれた。だけど、もう手遅れかもしれない。


感じるの・・・。部屋の周りを見張るように動く何かの気配を


聞こえるの・・・。人間や獣人ではない異質な声が・・・。


もう限界だ。私は助からない。


もう私に出来るのは、絶望に囚われるだけだと。今日の朝まではそう思っていた。


しかし、今日は違った。


「あれ?」

ムクリとベットの中から起き上がる。今朝は、何も聞こえない 何も感じない前まで過ごしていた静かな朝である。

「もしかして諦めちゃったとか?」

そう思って、カーテンの隙間から外を覗いて見るそして、思わず絶望の溜息を洩らしてしまった。外には、この世界の生き物ではない者達で溢れていた。

「はぁ。なんで私だけかこんな目に・・・・」

我ながら悲しくなる。

あ、自己紹介してませんでしたね。私の名前は、神月 理穏。この国の現大統領である神月 奏真の一人娘です。

「霊とかが見えなきゃ、普通の女の子なのになぁ。」

理穏は、もう一度、深い溜息をついた。

え? 溜息をつくと幸せが逃げるって? もう十分逃げてるから気にしないわ。

「でも、何かおかしいわ。大人しすぎる。」

そう思っていると外から声がしてきた。


裏切り・・・ここ・・やばいぞ!狩られー・・・・。


奴ら・・・・・・厄介な・・・化け物・・俺らが・・・・・逃げー・・・。


裏切り? 狩られる? 奴ら? 厄介? 化け物?

一体なにを言ってるの?理穏は、疑問で埋め尽くされた。

内容からして誰かがここに向かっていて、悪魔や悪霊達が危機感を持つほどの何か・・・。

そこまで考えてから理穏の脳裏に光が煌いた。

「もしかして、父さんの言っていた人の事じゃないかしら?」

そう思うとかなり気持ちが軽くなった。

と、その時。ピンポーン! 玄関のインターホンが鳴った。

しかし、理穏は背筋を氷で撫でられたような寒気を全身に感じた。

外にいる奴らの比ではないほどの気配がドアの向こうからヒシヒシと伝わってくる。

「なんなの・・・この感じ?。」

理穏は、ガタガタと震えながらドアに近づいていく。

そして、インターホンのカメラを起動させると画面を覗いた。

その後、理穏は息を呑んだ。画面にうつしだされたのは、全身を漆黒のコートやジャケットで包みフードを深く被った四人の人物だった。

「!!!!」

死神。そんな単語が頭をよぎった。

「あのー、神月 奏真さんから神月 理穏さんの護衛を依頼された者なんですが。」

まるで、ピザを配達に来たかのような軽い口調と意外と人間的な声に安心すると同時に拍子抜けする理穏。

「あ、はい。今、開けますから」

そう言ってドアのロックを外して、ドアを開いた。

そこには、モニターに写ったのと同様に黒色の衣装に身を包んだ4人のヒトが立っていた。

「あ、あの・・・?」

恐る恐る声をかけてみた。

すると、いきなり4人の中の一人が、私の手を握って、

「こんにちはお嬢さん。これから俺とデー・・・・」

ナンパを仕掛けてきた・・が、次の瞬間には、なぜか漫画のように壁にめり込んでいた。

「すみません。冗談を言うのが好きな奴でして。」

何気に放送禁止的な音が聞こえた気がしたが、私は、親切に無視した。

「えっと、外ではアレなので、中にどうぞ。」

私は、四人を部屋の中に招き入れた。感じとる気配は、やはり違和感があったが、

それでも信用しても大丈夫なような気がしたからだ。

そして彼等は、ダイニングにあるソファーに座るとフードを脱いでくれた。

・・・・今の感想を言えば、なんですかこの女のツボを押えまくった人達は?

イケメン揃いじゃないか。

「えー。あなたが神月 理穏さんで間違いないですか?」

私の正面に座った渋めの獅子人の男が訊ねてきた。落ち着いた雰囲気だがやはり、どこか重苦しい雰囲気が混じっている。

こんな風に感じるのは、悪魔と対峙した時だけなのだが、彼等は、どうみてもこの世の者にしか見えない。

「(疲れているのね・・・私ったら。)」

理穏は、溜息をついた。

「もうご存じかと思いますが、私達は、しばらくあなたの護衛を担当します。」

「話は父から聞いております。よろしくお願いします。」

ペコリと頭を下げる。

そして、視線をあげた瞬間、目の前にあったのは、銃口だった。

「ええええええええ!!?」

あまりの事に女としてあり得ない声で叫んでしまった。

「伏せて下さい。」

私が、頭を下げた瞬間・・・・・・銃声がした。

そして、背後から耳障りな断末魔が響いた。

「え?」

私は、背後を振り返った。

そこにあったのは、この世の物ではない生物の死骸が横たわっていた。それは見る間に一瞬で灰と化してしまった。

「そろそろ、結界が持たなくなってきてるのか。仁さん張り直しますか?」

銃を腰のホルスターにしまいながら彼は、聞いた。

どうやら、仁さんとは、あの獅子獣人の名前であるらしい・・。

そして、彼が、このチーム(?)のリーダーでもあるらしい。

「う~ん。一旦、この家から離れようかな。勇矢君、京君、閃君、出発の準備して。」

「了解。」

先程、私に銃を向けてきた男―勇矢は、それだけ言って、窓の方に歩いていく。

「さてと、お仕事、お仕事と。」

今度は、どこから取り出したのか巨大な剣―確か大剣とか呼ばれる剣を肩で担ぐように持った男―京は、入口に歩いて行った。

(ちなみに私にナンパしてきたのも彼だ。)

「はぁ~。全く、雑魚ばかりですね。食べ応えなんてあったもんじゃありませんね。」

死神を連想させる巨大な鎌を軽くバトンのように回しながら溜息をつく男―閃も京の後ろについて行った。

途中で「京~、貴方を食べていいですか?」などと物騒な、あるいは、卑猥な発言が聞こえてきた。まさか、あのお二人は、もしかして・・・・・。

「さて、お穣さん。我々が完璧にエスコートさせていただきます。参りましょうか?」

仁は、まるでダンスにでも誘うかのうように座っている私に右手を差し出した。

今、思えば、彼等との出会いこそが、私の運命を大きく変えてしまったのかもしれない。

もちろん、悪い方ではない・・・もっと乱痴気騒ぎな方向に。


「ゲゲ、あの女が逃げるぜ!」

悪魔達は、騒ぎ出した。それに共鳴するかのように結界に

体当たりを繰り返していく。その度に脆くなった結界は、軋みたわむ。

そして、ついにガラスが砕け散るような音をたてて、結界が破壊された。

「ギャギャギャ!」

悪魔は、窓から部屋に飛び込もうとした、しかし、そこには、暗い銃口が向けられていた。

「じゃあね、御苦労さん。」

そいつは、ひどくきれいに笑ってトリガーを弾いた。

『な!!』

外に吹き飛ばされた仲間に他の悪魔が驚いていると、窓ガラスを破壊して何かがベランダに躍り出た。

「あ、あいつは!」

その姿を見て、動揺する悪魔達・・・

「そうだ、エクスターミネイターだ。」

両手に銃を握る彼の眼は、どこまでも冷たく、何も見てはいない。

「裏切り者の末裔だな!よくもぬけぬけと・・・。」

「黙れ・・。お前らと同じようにいうな。」

そう吐き捨てると、再び、銃を乱射する。その一発一発が正確に悪魔の急所を射抜く。

「なんだ、何なんだよ!」

悪魔は、恐怖した。悪魔は恐怖の化身であり、人を狩り喰らい虐殺する存在。

それが、悪魔だ。

なのに・・・なのに・・・・。

「なんで、怖いだよぉおぉおおおお!!」

悪魔達は、生まれて始めて恐怖を感じていた。

涙を流して、己の武器を構えてベランダに立っているただの人間に向かった。

しかし、その人間は、人が作った武器を向けながら・・・・笑っていた。

それが、悪魔達の戦意をくじき、心を砕いた。彼らは、ここで真の恐怖を知ることになったのだ・・・・・。


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