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幼馴染にフラれてできた彼女がイジメを受けているのだが。

作者: 霜月立冬

 俺の名前はA田A太。Y高校二年B組、文芸部に所属している文学オタクだ。

 文学を恋人にしている俺だが、実は好きな女子がいた。


 名前はZ畑Z子。彼女はY高校二年A組に所属している。同級生だ。

 

 Z子とは家が隣同士。幼稚園に上がる前から付き合いが有る所謂「幼馴染」だ。それなりに仲も良かった。尤も、互いの趣味嗜好は全く別。


 俺は陰キャ文学オタク。Z子はアウトドア志向の陽キャ。


 それでも、それなりに仲良くしていた。互いに気の置けない仲だった。俺は「友達以上恋人未満」だと思っていた。俺が勇気を出して一歩前に進めば「恋人」に昇格できると思っていた。しかし、その願望には制限時間が有ったようだ。

 俺達が高校生になったとき、Z子は変わった。


 Z子は、黒髪を金髪に染めた。趣味嗜好をお洒落と、最新の話題に全振りした。彼女はギャルへと変貌していた。


 元々見た目が良い上に、社交的な性格だ。Z子が「学年カースト最上位グループ」に所属することは必然だった。対して俺は――高校に上がっても、相変わらずの陰キャだった。校内に於ける俺の主な生息地は、同じ文学オタ達が集う文芸部だ。


 カーストトップと最底辺。それぞれの立場は天と地ほども違った。


 学校では、完全に疎遠。しかし、互いの家が近いこともあって、よく顔を合わせていた。会話もしていた。

 だから、俺は「いける」と思った。これ以上互いの差が開く前に勝負をかけた。その結果、


「陰キャオタは無理」


 見事に玉砕した。フラれた瞬間、俺は笑った。苦笑いした。しかし、そこまでが俺の限界だった。

 Z子と別れて一人になった途端、涙が溢れた。俺の涙は一週間ほど溢れ続けた。


 俺は一週間ほど部屋に籠った。その間、色んな事を考えた。Z子のことや、これからの学校生活。それら諸々に付いて考えて、一つの結論(決意)に行った。


「Z子を見返してやる」


 一念発起。俺は必死に己を磨いた。外見だけでなく、中身も、才能も。


 外見に関しては、従姉の美容師(見習い)に頼んで、全力でコーディネイトして貰った。

 中身(性格)に関しては、会話術を磨き、自らクラスメイトに話し掛ける努力をした。クラスのイベントにも積極的に参加するよう心掛けた。

 才能に関しては、学校推薦の作文コンクールに応募したり、SNSの小説投稿サイトを活用したりした。

 前者では、優秀賞を受賞した。校内で表彰された。

 後者では、書籍化までこぎつけることができた。その成果を、文学部の連中が「部の宣伝」と称して校内中に喧伝した。

 俺達が二年に上がる頃、俺の名前は校内どころか県外まで知れ渡っていた。

 俺は誰からも一目置かれる超有名人になった。その事実は、当然ながらZ子の目や耳にも入っている。


 Z子は、頻繁に俺に絡んでくるようになった。「デート」と称して遊びにも誘われるようになった。俺達の距離は、告白以前よりも接近していた。


 もしかして、今、告白したら受けて貰えるんじゃないか?


 Z子と会う度、会話する度、俺は告白する機会を窺った。ところが、いざ告白しようとすると、


「陰キャオタは無理」


 Z子にフラれたときの出来事を想起して、躊躇った。そんなことが続いて、俺は告白を諦めていた。「高校生活は、このまま一人で過ごすものだ」と思い込んでいた。

 そんな俺に、神様が素敵な「出会い」を用意してくれていた。


 夏休みが終わって数日経った初冬の頃、俺は文芸部の一年部員(女性)から「後で図書室に来てく下さいね」と仰せつかった。丁度暇だったので、俺は「いいよ」と返事をした。

 立ち並ぶ本棚の影で二人向かい合って立った。そのとき、俺は――


「先輩のこと、中学の頃から好きなんです」


 告白された。

 告白してきた一念部員の名前はB畑B子。本人が言う通り、俺と同じ中学出身――らしい。残念ながら、俺には彼女に関する記憶は無かった。

 そもそも、当時の俺は「女子」といえばZ子のことしか眼中になかったのだ。


 B子に関して、俺は全く無知蒙昧だった。これに対してB子の方は、俺をよく知っていた。いや、「俺色に染まっていた」と言うべきか。


 B子がY高校の志望理由は、「A太先輩がいるから」だった。その上、彼女は作家としての俺のファンだった。しかも、小説投稿サイトに於ける俺の作品を、初投稿時から全力で推し続けていた。


 長く一人の人を想い続ける気持ちは、俺には一程良く分かった。その事実に加えて、今の俺は独り身で、他に想い人もいない。

 女子に「ここ」まで想われて「断る」という選択肢は、今の俺には無かった。


「宜しくお願いします」


 俺はB子と握手を交わした。その瞬間、俺達の交際が始まった。

 俺はB子のことをよく知らない。それでも、俺達には「同好の士」という強い絆が有った。何れ家族となって一緒に墓の中に入るのだろう。その運命は確定事項——と、この時は思っていた。

 ところが、付き合い始めてから一か月ほど経った頃、B子から「別れ」を告げられた。


 何故なのか? 俺は訳が分からなかった。その疑問を解消すべく、俺はB子のクラスメイト(文芸部男子生徒)から、B子に関する話を聞いた。

 

 そこで、俺は「B子がイジメを受けている」という事実を知った。


 イジメの内容は凄惨なものだった。犯罪としか思えないものも有った。それらの仕打ちは、B子の積年の想いを完膚なきまで叩き潰していた。

 しかし、俺が知ったものは「一端」でしかない。その事実が、俺の心を大きく動かしていた。


「絶対に、許さん」


 俺は激怒した。「必ずB子を救う」と決意した。直ぐ様実行した。


「先ずは、証拠集めだな」


 俺はこれまで得た諸々の力と能力と立場をフル活用した。

 複数の興信所に依頼したり、証拠収集用のアイテムを購入したり、文芸部の部員や友人達、クラスメイト、俺の読者達に協力を要請したり――思い付くことは、全て実行した。


 俺達が協力して奮闘した結果、諸々の証言、及び数多の物的証拠を得ることができた。

 その中に、何故か二年生である「Z子達陽キャグループが会話している動画」が含まれていた。その内容は、俺にとって衝撃的過ぎるものだった。


 その動画の中で、Z子が一年のイジメグループ(実行犯)に命令を下していた。


「イジメの首謀者って――Z子だったの? え? 何で?」


 俺は訳が分からなかった。しかし、本人に直接確認をしようとは思わなかった。だからと言って、「ここで止める」という気は、更々無かった。


 俺はB子、及びB子の両親を伴って「警察署」へと向かった。そこで、担当してくれた警察官(女性)に「収拾した全ての証言、及び物的証拠」を提出した。


 警察官は俺達に「被害届」を手渡した。


 被害届の筆記は、警察官が行ってくれた。俺達は、彼女にイジメの内容を詳細に伝えた。俺達は一つひとつ、証拠と突き合わせて確認し合った。


 被害届は一枚で足無かった。二枚、三枚――合計十二枚も(担当警察官が)書く羽目になった。しかし、そこまで頑張った甲斐は有った。


 翌日、一年のイジメグループの各ご家庭に警察官の訪問が行われた。

 その際、殆どの者が「知らない」とシラを切った。しかし、物的証拠群を提示されて尚、シラを切り通せる者は誰もいなかった。


 イジメグループがお縄になった後、彼女達から「二年の首謀者グループ」の証言を得た。


 証言を得た翌日、二年の首謀者グループの各ご家庭に警察官の訪問が行われた。

 Z子も警察署にしょっ引かれた。その際、彼女は「イジメの動機」に付いて語っていた。

 Z子が語った内容を要約し、時系列で並べると――


 Z子も、実はA太(俺)のことが好きだった。しかし、高校での立場を配慮して、彼の告白を断った。


 A太が名前を上げて、自分に相応しい男になった。次に告白されたら、受け入れるつもりでいた。A太が告白し易いよう、機会を与えていた。

 それなのに、A太は別の子を選んだ。


 A太は自分(Z子)のことが好きなのだ。二人は結ばれる運命にある。それを邪魔したB子が許せなかった。

 だから、B子の同級生達に協力を要請して、B子に「分を弁えさせた」のだ。


 俺が警察官から「動機」に付いて聞いたとき、俺の口が勝手に大きく開いた。暫くの間、その間抜け面を晒し続けていた。


 人間とは、(立場の違いで)これほどまでに傲慢な考え方ができるものなのか?


 かくして、イジメにかかわった全ての生徒が御用となった。この事実を受けて、Y高校は彼女達に「除籍処分」を言い渡した。

 Y高校から多数の退学者が出た。その事実は「報道」という喧伝者達によって、広く世に知らしめられた。


 イジメにかかわった生徒達のご家庭は、引っ越しを余儀なくされた。その中に、当然ながらZ子の家も含まれていた。


 俺とZ子は物理的に離れることになった。彼女との縁も、これで切れたはずだった。ところが、そうはならなかった。


 Z子が引っ越した後も「Z子からのメッセージ」、及び「電話」が、毎日欠かさず届き続けていた。


「もう一度会いたい」「会って話がしたい」「声が聞きたい」「電話に出て」


 俺は全て無視した。無視しようと思っていた。

 しかし、一度だけZ子からのメッセージに返信してしまった。「それ」だけは無視できなかった。


「A太と出会えて幸せでした。さようなら」


 Z子のメッセージを見た瞬間、俺の手が勝手に動いていた。


「俺もZ子と会えて幸せだった。好きだった。さようなら」


 俺は「最後のけじめ」を付けた。そのつもりだった。それで全てが終わるはずだった。ところが、終わらなかった。


 俺が返信した瞬間、Z子から電話が掛かってきた。二十回目のコールで、俺は――「着信拒否」と設定した。続け様に、電話帳からZ子の名前を消した。


 俺は冷静だった。心は全くの平静だった。それなのに、俺の目から涙が溢れて止まらなかった。

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― 新着の感想 ―
彼の次の恋は、幸せなものになるよう祈っています。
すみません A太だのZ子だのと 書かれた時点で 物語が全く頭に入りませんでした。 Y校っていうのも 名前を書くのがお嫌なら 無理して書く必要もないですよね
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