89.新居
土曜日間に合わなかった....
4章、スタートです!
オースティン領の領都の北西部に位置するオースティル学園。
そこの近くにある高級住宅街の一角に私たちが乗る馬車は止まりました。
「着いたみたいだ。さ、行こ」
そこにあったのは高級住宅街に並ぶに相応しいと言えるほど、大きくて綺麗な家———いや、豪邸がありました。
「うぉぉぉぉ!すげぇ!」
「なにこれ!?大っきい!」
豪邸を見て興奮するディルとサーラ。
「大きすぎないか....?」
「本当にここに住むの?」
大きい豪邸に驚くクロと私。
「そうだよ。このあとの予定もあるからさっさと片付けちゃお」
なんとも思ってないであろうテレス。
豪邸のドアを開けると....
「「「お帰りなさいませ。御坊ちゃま、お嬢様」」」
そう言いながら出迎えてくれるメイドと執事がいました。
なぜこんなにも優遇されているのか。
それはテレスの力でした。
私たちと遊んでいるせいで忘れられがちですが、テレスは”テレスアート・ウォン・トリアート“という名の貴族です。
そして私たちはその貴族の友人。
粗末な対応はできないというオースティン伯爵の指示によってこんな豪邸と使用人が私たちに渡されたのです。
「俺がテレスアート・ウォン・トリアートだ。基本はみんなのことを名前で呼んでくれ。あと、予定通り伯爵様がくるからその用意も」
「かしこまりました」
代表であろう1人が挨拶をするとメイドさんたちは消えていきました。
「おい!伯爵が来んのか!?」
「聞いてないんだけど!?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてないよね?アリス」
「聞いてないねー」
「そりゃぁすまんかった。多分もうすぐ来るから着替えて」
「着替えてって....。俺ぁこんな服しか持ってねぇよ」
「大丈夫!もう用意してあるから」
「はぁ!?」
「えっ?」
「貴族って怖いですねー。アリスさんや」
「そうですねぇ。サーラさんや」
オースティン様がここに来た理由は2つ。
1つはトリアート男爵のご子息であるテレスに挨拶するため。
もう一つは私たちに学園の入学について説明するためでした。
曰く、入学するためには簡単な試験があるのだとか。
その試験を受けるために明日学園に行くことになりました。
そして翌日。
テレス、私とクロ、サーラとディルの3組に分かれて試験を受けました。
テレスは貴族科の騎士専攻、私とクロは魔法科、サーラとディルは騎士科に入るため、それぞれ別の試験があるからです。
試験を受けるために呼ばれた小部屋に入ると、立派な髭を生やした先生と見慣れた水晶玉———魔法鑑定の水晶玉がありました。
「貴女がアリスティア嬢ですな。それでは鑑定結果の方をくださいな」
先生の言う鑑定結果とは、私が5歳の時に受けた魔法鑑定の結果のことです。
鑑定を受けた教会に保存してあるので頼めば発行してくれます。
「では水晶玉に魔力を流してくださいな」
水晶玉に魔力を流す———つまりは私の全属性のことが....!
鑑定書は誤魔化してもらったけどこればかりはどうしようもない、なんてことを考えていると
「貴女のことは伯爵様と男爵様の御子息からお聞きしておりますよ」
「へ?」
「申し遅れましたな。儂はオースティル学園学長のプリシードだ。そなたのことに関しては誓約を結んである。安心して試験を受けてくれ」
「あ、えっとありがとうございます」
「うむ。お主が心配するのもごもっともじゃからな」
水晶玉に魔力を流すと現れたのは赤、青、黄、茶、紫、金、そして白の光。
しかし、昔と違ってそれぞれの光の大きさに差がありました。
「あらかじめ聞いてても信じがたい現象ですなぁ。さて、鑑定の方は終わったので何か魔法を見せていただこうかの」
「わかりました。【雷の槍を撃つ魔法】!」
撃ちはせずにただ生み出すだけの状態で止めます。
「年齢不相応の熟練度。さらには魔力との親和性。こりゃ期待の新入生ですなぁ」
プリシード先生は手元の紙に何かを書きながら続けました。
「ようこそ、オースティル学園へ。歓迎いたしますぞ!この後は制服の採寸をしてお帰りくださいな。クラスは入学式前に手紙を送るので確認くだされ」
ようこそ....?
ってことは合格ってこと!?
「ありがとうございます!プリシード先生!」
「うむ。さらなる魔法の深淵へ、よく学んでくれな」
「はいっ!」




