86.お久しぶりです
冬と言われて何を思い浮かべますか?
雪、寒い、銀世界、煖炉、年明け、新年パーティ、お貴族様、社交パーティ。
そう、新年パーティがあるのです。
病気のため欠席という扱いになっていた私ことセニカ。
2年ぶりに社交界に戻ってきたと思えばその最初の会が新年パーティという一大行事。
療養していたということになっているので周りから励ましの手紙やお見舞いの品が届いているのだとか。
社交界に復帰するのでそのお礼もしなければならないので、今はくれた人の名前と品や手紙の内容を覚えています。
その作業がこれまた大変で、帝都に着いて新年パーティが始まる直前まで続いていました。
私の設定としてはテレスの遠い親戚。
貴族位を持つほどではないけど貴族の血は流れている人で、ある程度の魔法が使えて、得意属性は風と水。
この2年間は「テュベラキュロズ」という呼吸器官の病気にかかっていて、その療養をしていたことになっています。
頭の中でそんなことを唱え続けていたら会場に着いてしまいました。
「セニカ、いけるかい?」
「ええ。準備はできておりますわ」
短期間で詰め込んだ貴族としての立ち方、歩き方、話し方、そして所作。
それをボロが出ないように実践しなければなりません。
「上手にできていますよ、セニカ。その調子で頑張ってちょうだい」
「はい、お義母様」
「やだー、お義母様って恥ずかしー」
「セリア、もう着くぞ」
「はいはーい。じゃあアリスちゃん、頑張ってね!」
「はいっ!テレス、よろしくね」
「うん!こちらこそ」
「ふんっ、せいぜい我が息子を引き立てることだな」
騒々しい会場に入って最初に目につくのは真ん中にぶら下がってる大きなシャンデリア。
そして一際目立っている皇女様———ソフィア様。
ソフィア様はこっちに気がつくと話を切り上げてやってきました。
「セニカ!元気になったの!?」
「お久しぶりです、ソフィア様。一段とお綺麗になられて」
「ソフィア皇女様、お久しゅうございます」
「もー、2人とも他人行儀はやめてって言ったでしょ!」
「ここじゃこうしないと目立っちゃうの」
「それもそうね....。しょうがないわ」
「お嬢様!急に走られてどうしたの———!」
ソフィア様の後ろから優雅に、可能な限りの速さでやって来たのはソフィア様の執事のレム様でした。
「セニカ様....!お元気になられたようで」
「お久しぶりです、レム様。お見舞いの品、ありがとうございました」
「いえ、あれはお嬢様のご意向で———」
「そうよ!セニカのことを想って選んだのよ。貴女がいないとテレスがいつもより暗いし他人行儀なんだもん」
「な、そんなことは....」
「あるのよ。貴方達がどんな関係か知らないけどそれほど大変なのは伝わって来たわ」
「でもお陰様でこうして復帰することもできました」
「そうみたいね。でも無理はしちゃダメよ?何かあったら私にいうこと。よろしいかしら?」
「かしこまりました」
「では、他方々への挨拶もありますので失礼いたします」
「失礼します」
「テレス!あとで踊りましょう。セニカいい?」
「ええ、もちろん」
その後の挨拶はテレスに名前を教えてもらいながらして回ったのはまた別のお話なのでした。




