85.雪の魔法
雪、雪、雪、そして風。
今日も外は猛吹雪なニムレット村は外はおろか、家の中も凍ってしまいそうな寒さです。
しかし帝国民の大半は魔法使い。
薪があれば煖炉に火を点けられるし、もっと魔法の扱いに長けていれば火の玉を宙に浮かべて暖を取ることもできます。
当然、私も火の玉を浮かべるくらいなんてことはないので家のあちこちに火の玉が浮いています。
でも、お母さんがこの光景を見るとよく「危ないのよねぇ、これ」と言います。
魔法で出してるとはいえ火は火なので触れたらもちろん火傷します。
なのでお母さんが言うことはもっともなんですが代わりのものがないのでどうしようもないというのが現状です。
そんなある日、ニアとお父さんが外遊びから帰ってきて言いました。
「あったかいところで雪遊びしたーい」
「「「え?」」」
見事に重なる私とお父さんとお母さんの声。
「あったかいところで遊んだら溶けちゃうよ?」
と、私。
「溶けたら床が濡れちゃうし」
と、お母さん。
「家に中に雪を持って来れないしなぁ」
と、お父さん。
「遊びたいの!お姉ちゃんの魔法でできないの?」
「できないの?って言われてもねぇ。雪は出せるけど溶けちゃうんだよ」
「溶けない雪ねぇー」
家族3人で考えているとお母さんが「あっ」と声を上げました。
「アリス、これならいけるんじゃない?」
ゴニョゴニョヒソヒソ
「んー、問題はないと思うんだけどそう都合よく行くかなぁ」
「まぁものは試しよ!お庭で実験してみましょう!」
「何をするんだ?」
「「ひみつー」」
まずは庭に出て土魔法で小さな小屋を建てます。
そしてその中で———
「【世界を凍らせる魔法】!」
いつぞやの海獣を倒すために使った魔法を放ちます。
この魔法の効果は周囲を氷で包み込む———つまり小屋の中が氷で囲まれるのです。
「アリスちゃんや、何をしているんだい?」
そこにやってきたのはアルさん。
運の悪いことに【世界を凍らせる魔法】の氷が広がっている途中で入ってきたのです。
「アルさん!入っちゃダメッ」
時すでに遅し。
アルさんの靴が氷に触れてあっという間に———
「っあっぶねー!いや、ちょっと凍っちゃった」
なんとか間一髪、凍ったのは膝から下だけで済みました。
「ぬるいお湯でその氷は溶かしてね。絶対に割ったり炙ったりしちゃダメだからね」
「ありがとよー。溶かしてくるー」
さて、満遍なく氷が広がったところで次の魔法の出番です。
「【雪を降らせる魔法】!」
水魔法の上級魔法である氷魔法の中で簡単な魔法である【雪を降らせる魔法】。
使う時に込める魔力の量によって降らせる量を、魔法陣に刻む言葉によって継続時間を調整できます。
銭湯で言うとこの魔法に風魔法を合わせるとかなり凶悪な魔法になりかねないんだとか。
途中でちょっとした事件はあったものの完成したのは雪小屋です。
「できたよー!」
私の声で集まってくるニア、お父さんとお母さん、そしてセーラさん。
アルさんは氷を溶かしている途中のようです。
「わぁ!雪だー!」
「流石アリスね。私の想像通りのものができてるわ」
「これなら風も吹かないから外よりはあったかいんじゃないか?」
「うん!雪もとけてないよ!」
「バカが足を凍らせたのはこれか。それにしてもアリスは規格外だな」
「まぁまぁセーラさん、今更ですよ。さ、お夕飯を作りに行きましょ」
「そうだな。ここは寒すぎる」
「じゃあ私はアルさんのところに行ってくる」
「あれ、これは俺が遊ぶ感じか?」
「わーい!お父さん、あそぼ!」




