77.9歳
「ありす....?」
「おかあさん....?」
私を出迎えてくれた人は間違いなくお母さんでしょう。
それなのに疑問形になってしまった理由、それは変わり果てたお母さんの姿でした。
元は美人だったお母さん、家族という忖度を抜きにしてもその美貌は目を見張るものでした。
しかし今はその光のかけらも見当たらないほどです。
頬は痩せこけ、目の下には大きなクマが、顔色も青白く、とても健康体には見えませんでした。
理由は単純明快、私の失踪です。
私がこの村を出て約1年、ずっと心配で探していたのでしょう。
「あ、あ、あぁあああ」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ありずだぁぁぁぁぁぁぁ」
「おがあざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」
大号泣。
子供に戻ったみたいに泣きました
「おいラーナ!どうした」
ドタドタドタドタ
おそらく畑からでしょう、お父さんが玄関まで走ってやってきました。
「ラーナ、だいじょ———って誰だお前ら!ラーナに何をした!」
「それよりちゃんと奥さんのほうを見たほうがいいんじゃないの?」
「誤魔化しても無駄だぞ!」
「そうじゃなくて、もっとちゃんと見なよ」
「ラーナがどうしたって....は?ありす?」
「でろなぁどぉぉ!ありずがぁ」
「ありす....アリス!アリスティアなのか!?」
声も出せずに頷いて返事します。
「すまん、通してくれ。テロナード!ラーナ!ってもう会ったのか」
「おう....グスッ」
「おい!みんな!テロナードの娘が帰ってきたぞ!」
「テロナードが泣いてるぞ!」
「ないでねぇよぉ」
みんな落ち着いてこの1年間のことを話し終えるや否や、お父さんが頭を下げました。
「すまんかったっ!」
「あの状況だったらそう思われてもしょうがないので」
「まさかアリスの恩人に怒鳴ってしまうとは....」
「手を出さなかったからいいんですよ。出してたら僕が出てましたけどね」
「ちょ、アル!」
「当たり前じゃんよ。姉貴が殴られそうなのに指咥えて見てられるかよ」
「「あねき....?」」
「ははは、お父さんとお母さんも同じところで。あははははっ」
「夫婦じゃなくて姉弟です。そんなに紛らわしいものですかね....?」
「すまん、てっきり夫婦かと...。」
「ごめんなさいね。あと、敬語は使わなくていいのよ?」
「そうだ。楽にしてくれ」
「じゃあお言葉に甘えて」
「ねぇねぇ、ちょっと見ないうちにニア大きくなってない?」
「まぁ2年近く経ってるからな」
「そうねぇ。すっかりニアも働き者になったのよ」
「え....にねん?」
にねん....2年?
あれ、1年の間違いじゃなくて?
「あれ、アリスがトリノに来たのって7歳の時だよな」
「のはずだな」
「ちゃんと2年経ってるぞ?あとでサーラ達に聞いてみるといい」
「でもうちにいたのは半年だよなぁ」
「うーーん、どこで1年経ってるんだろう?」
「ちょっともう一度聞かせてくれ」
「まぁあるとしたら漂ってる時だよな」
「そうだな....。貴女達に拾っていただけたのは幸運だったんだろうな」
「こっちも楽に話すので敬語はやめてください、お義父様」
「お、お義父様!?たとえ女でもアリスはまだやらんぞ!」
「じゃあなんとお呼びすれば」
「ぐっ、テロナード。テロナードでいい」
「私はラーナよ。あっちが息子のニア———アリスの弟よ」
「そっか、アリスちゃんに弟がいたんだな」
「そうだな。そうだ、テロナードさんとらー———」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ん?どうした?」
「どうしたんだ、アリス!」
「どうしたの!?」
「何かあったー?」
「私、今9歳?」
「そうだな。2年経ってるから」
「じゃあ2年後じゃなくて来年から学校だな」
「よかったじゃん。楽しみにしてたんでしょ?」
「ちがうのー!違わないけど色々あるの!」
「色々って———」
「「「「アリス!!!!」」」」
やってきたのは私の友達の4人———もとい、色々の内容です。




