76.ニムレット村
トリアート領に入っても続く森。
でもそれを抜ければ家までは近いです。
森を抜けて最初に見えるビューラント村の周りを囲っている柵に沿って進むと街道に出ます。
その街道を道なりに進んで、2つの村を通り過ぎ、トリアート領主邸を通り過ぎ、教会を通り過ぎ、その次の次がニムレット村です。
「そう聞くとあっという間に着きそうだね」
「そう思うでしょ?でもね、村と村の間って結構距離があるの」
「うちと同じだな。ってことは1回夜を越すかな」
「そうなるだろうね。本当なら教会の前が安全なんだろうけど....」
「今回はその限りじゃないってか。別に教会の周辺じゃなくてもいいんでしょ?」
「うん。多分」
「暗くなるまでまだ時間がある。進めるだけ進もうか」
「でも明日の朝早くに着いても迷惑じゃない?」
「そんなことないよ。みんな朝から畑仕事してるし」
「確かに朝は忙しそうだな。じゃあ早いけどここで休んでいくか?」
「俺は賛成だぜ」
「じゃあもうちょっと進んだところに芝生があるからそこにしない?」
「そうだな。そうしよう」
こうして少し早めの夜休憩。
時間があるからいつもより豪華な夕飯になりました。
しかしセーラさんたちとの旅も今日まで。
こう思うと寂しさを感じます。
お母さんに頼んで数日くらい家にいてもらおうかな....なんてことを考えていたら眠りについていました。
最後の日なのに....話せなかった....。
ぶっちゃけこの後も2人との関係は続くのでそんな大したことではなかったのですが、当時の私はすごく落ち込みました。
今でもちょっと後悔が....。
翌朝、身支度と朝食を済ませてニムレット村に向けて再び歩き始めました。
しばらくは私もよく知らない景色が続きます。
しかしある場所———トリアート領主邸からは私がよく知る道です。
「ここがテレス———私の友達の家だよ。テレスが貴族だって知った時は驚いたよ」
「領主の息子と友達って....アリスちゃん、恐るべしだな」
「ここが教会。冬に籠る前にたくさんの本を借りてたの。主に魔導書だけどね」
「これが例の....。見た目は公国と変わらないんだな」
「あっちに見えるのが裏山。たまに出る弱い魔物がいい訓練になるの」
「秋だからか、綺麗だなぁ。なんの魔物が出るの?」
「初めて遭ったのはゴブリンだったよ。あと1番強かったのはルゥーだね」
「ルゥーと戦うのか!?何人で倒すんだ?」
「5人でだよ。多分セーラさんも余裕なんじゃない?」
「さぁな。確かにそこの地形を知ってれば余裕かもな」
「なぁなぁ、もう1個過ぎたからあの門がそうだよな」
喋っているうちに見えてきたのは見慣れた門。
木で作られた、年季の入った、でも頑丈な門。
「そうだよ。あれがニムレット村の入り口」
「ん?アリス緊張してるのか?」
「ちょっとね。1年越しに帰るってのに緊張しちゃって....」
「なぁに、気にすんな!アリスちゃんの友達は1年程度で忘れるような人じゃないんでしょ?」
「そうだけどぉぉぉ。心臓がうるさいよぉ」
「はははっ!アリスでも緊張するんだな」
「どういう意味ですか、セーラさん!」
「いや、海獣も龍も真正面から突っ込んだ奴が何を緊張してんだか、と思ってね」
「まぁぁぁ、それもそうですね」
「よしっ!じゃあ心を決めて!いくぞっ」
「おぉぉぉ!」
村の門が大きく、大きく大きくなって
通り越して
「え....あれって」
「おい!誰だ!」
「大変!テロナードかラーナを!」
なんか聞こえますが全く気になりません
「テロナードはどこだ!」
「村長!村長でもいい!」
「ディルたちを呼び戻せ!」
あれは....!私の家!
ガチャ
はぁはぁはぁはぁ
ドクッドクッドクッ
走ったせいで荒れた息と暴れる心臓の音が頭の中に響き渡る
バタバタバタバタ
扉の音を聞きつけてか、誰かが走ってくる
「ままー!お客さん」
「お客さん?誰かしら」
ドクッドクッドクッ
心臓が暴れてうるさい
ドクッ
「え....」
ドクッ
「あ、あぁ....あ」
ドクッ
かしゃーん
「ありす....?」
ドクンッ




