73.山越え⑦
目が覚めたらそこには茶色の天井が。
材質的におそらく土でできているのでしょう。
土の天井がある家、つまりは私が建てた魔法の家で間違いありません。
でも私にはこの家を建てた記憶がないのです。
山頂に着いて、そこから...と思い出そうとしていたら扉が勢いよく開きました。
「アリス!起きたのか!」
心なしかセーラさんの声はいつもより明るく、大きかったです。
「うん!よく覚えてないんだけど、大丈夫だった?」
「大丈夫も何もアリスが全部やったんだ。私は荷物とアリスを家の中に入れただけ」
「この家も?」
「当たり前だろ。こんな魔法使えるのアリスだけじゃないか」
「それもそうだよね...」
「てか、よくそんな状況で建てれたな」
「ここ最近で何回か建てたから、かなぁ?」
「んんっ、あぁぁぁぁっ」
「アルさん!大丈夫なの?」
「んあっ、ありしゅ、おはよー」
「お、おはよー...」
「寝ぼけてないで起きろ!馬鹿アルフィオス」
「うおっ、姉貴!...ってここどこ?アリスの家なのはわかるんだけど」
「山頂だよ。アルが寝てる間に着いたのさ」
「さん、ちょう?」
「うん、山頂だよ。セーラさんがアルさんを背負ってくれたんだよ」
「そうだな」
「あ、ありがとう。っつーか、倒れちまったかぁ」
「しょうがないですよ。むしろここまでこのスピードで登れた方が奇跡なんですから」
「でもアリスより先に倒れちゃうなんて...情けない」
「んなこと言うなら下山したら鍛えな。とりあえず今日はゆっくり休んで明日から下り始める。それでいいな?」
「「はいっっ!!」」
今後の予定も決まったところで空腹を感じた3人。
登頂記念としてちょっと豪華なご飯を食べました。
寝たり、魔法の練習をしてみたり、喋ったり。
ゆっくりと体を休めた次の日、いよいよ下山開始です。
私もアルさんも倒れており、セーラさんもいつ倒れるかわからないということで登りよりゆっくり下っていきます。
岩壁を降りるのはとても簡単でした。
アルさんとセーラさんは私が支えるロープを使って降り、私は飛び降りて風魔法を使って着地する。
少々私の勇気がいりますが、そこは気合いでなんとかしました。
登りに比べて日差しも強く、気温も上がっていたため、雪が少し溶けて重たくなっていました。
ですが魔法を使えばそんなのなんてことありません。
私の魔法を駆使して無事にローディア山の中腹部、つまり雪のないところまで来ました。
途中でアルさんが雪と戯れたり、アルさんが滑ってこけたり、雪玉をセーラさんに当てようとして仕返しされてたり。
主にアルさん絡みの出来事が連発しましたが、1番危なかった雪の地帯は抜けました。
そして帝国側の中腹部に待ち受けるのは“針山”ではなく、鬱蒼とした森でした。
もうちょっと、あとちょっとだけ、山越え編をお許しください




