閑話.西の災害
9/29 一部訂正を加えました
「小国群の方で災害が起きたそうだ。竜災らしい」
夕食の後に父上———ムスカリンから話があった。
「相当大きなものらしくてな。場合によってはここからも兵を出さなければならん」
「貴方は出陣なさるの?」
母上———セリアがそう父上に尋ねる。
「出すことになればな。他に兵を率いる者もいなかろう?」
「それもそうね」
「まだ決まったわけではない。帝からお達しがあるはずだからそれ街だな」
「その時は私も———!」
「ならん!いるのはあの竜だぞ!」
「それでもそこにはアリスがいるかもしれないんだ!」
「『いるかも』だろう?テレスアート、お前は貴族なんだ。貴族には貴族の役目がある。そう教えたはずだ」
「でも貴族である前に僕は1人の人間だ!だから友達を見捨てるわけには」
「そこにアリスティア嬢がいると確定しているなら送ってやろう。だがそういうわけでもなかろう?友の大事さはわかっている」
「それなら———」
「落ち着きなさいテレス。貴方の言うことは十分に分かります。でも私たちは自分の息子を死地に送る気はないのです」
「言っただろう、帝からのお達しがあるまでは待機だと。それまでは私も動けんのだ」
僕は父の言いたいことを理解した。
帝から出撃の命があれば父はそこに行く。
その時に僕も連れて行く、そう暗に伝えてくれているんだと思う。
数日後、宮殿から書簡が届いた。きっと小国群に関するものだ。
中身を知りたい気持ちを抑えて普段通りに過ごす。
街の中に手がかりは残ってないか、アリスの魔力は感じないか。
ディルやクロとかと情報交換をしながら、1日でも早く見つけられるように。
「もしかしたら、本当に気のせいかもしれないんだけど、アリスの魔力感じたかも」
「えっ」
「は?」
「うそ!?」
「いや、ほんとにちょびっとだったから分からないんだけど」
「それでも十分だろ!」
「そうよ!クロ」
「で、どっちの方からなんだ?」
「分からないんだ。全体を包むようにあったから。でも多分小国の方じゃないかな...?」
「小国の方ってたしか...」
「なんかテレスが言ってたよな。何かお祭りやってるって」
「祭りって、そんなわけないじゃん」
「もうディルは収穫祭のことしか考えてないんじゃないの?」
「んなわけあるか!」
「ま、ディルらしいっちゃディルらしいけど。お祭りじゃなくて災害ね」
「龍が襲ってきてるんだっけ?」
「龍じゃなくて竜らしいよ。どっちにしろ恐ろしいものではあるけどね」
「そもそもそっち側ってことは竜か山かってことでしょ?どっちも危なくない?」
「たしかになー」
これが昼の出来事。
そしてその夜、あの書簡についての話が父上からあった。
「今日帝のほうからお達しがあった。西には行かなくていいとのことだ」
「そうなの?竜が来てるってことなのに」
「同じ大陸の人なのに見捨てるの?」
「そのことなんだが...。竜はもういないらしい」
「えっ」
ここで本日2度目の「えっ」が。
「いないって...どういうこと?」
「そのまんまだ。使いの者が行った時には竜は消えていたらしい。街の壊れ具合からして竜が来たのは確実らいいがな」
「小国の戦力でどうにかしたってこと?」
「でもなさそうだな。被害があったのは海辺の一部の街だけ。不自然なことがありすぎて上層部も頭を抱えているそうだ」
「ほんと、不思議なこともあるのね」
「それと宮殿に行かないと行けなくなった。セリア、こっちは頼んでいいか?」
「いってらっしゃい。報告はまとめとくわ」
「頼んだ。それとテレスアート」
「はい、父上」
「アリスティア嬢はお姉様の娘だ。お姉様のためにも見つけなければならん。分かるな?」
「魔力の波調ですか?」
「あぁ。興味もなかったから覚えてなくてな。お前の友人に魔法が使える奴がいただろう?そいつを連れてきてくれ」
「分かりました」
「うむ。頼んだ」
アリスがいなくなって1年と半年が経った頃、ようやくアリスが生きていることを確信できた日だった。
クロは自信がなさそうだったが魔力感知や操作はかなり上手い。だからクロが感じたと言うなら本当にいるんだろう。
アリスがこの大陸のどこかに。
テレスの父、ムスカリンはシスコ———もとい姉思いの人です。
たまに暴走するけど
「決してシスコンでない」と本人は供述しております




