閑話.やりすぎた神様
神界での神様とメイドの会話です。
ほぼ台詞です。
それはアリスティアが魔法鑑定をしていた頃でした。その世界の神界では1柱の神とそのメイドが対話していました。
「グリモール様。流石にこれはやりすぎじゃないでしょうか」
そうメイド——エルノア言った。
「なんじゃ、ちょっと魔法を使えるようにしただけじゃぞ?」
「それですよ!いいですか?この世界では多くても3属性なんですよ?それを7属性と空間魔法まで…やりすぎ以外の何物でもないですよ」
「そ、そんなもんかね…そういうエルノアも7属性使えるじゃないか」
「私は神界のメイドですよ?現世の人間とは訳が違います!それにグリモール様前にも同じことしませんでした?」
「何百年も前の話じゃないか。しかもどっちも魔法の力を望んどったぞ?」
「たしか…セニカでしたっけ?神話級の魔法生物と戦わされて死んだんですよ?また同じことが起きる気がするんですけど」
「セニカとは一切の接触をとらなかった。おかげでどえらい目に合わせてしまったの…。じゃから今回はわしの方から声をかけるつもりじゃ。もう早速王都の方に伝わっておろう?」
「ええ。ですからこのままだとセニカの二の舞ですね。」
「じゃろう?セニカはなんとか助けられたが、今幸せかどうか…残念ながら人間として生を与えることは出来なかったからの」
「私はその事故の後から来ましたから詳しいことは知りませんけどしあわせなんじゃないんですか?今なお生きているのなら」
「『生きている』かぁ。そうじゃの。形は違えど生きているのには変わりはないからの」
「ちょっとよくわかりませんが、そう願うほかないでしょうね」
ここでエルノアは気づく。
グリモールの昔話に聞き覚えがあることに。
そして当時のセニカの様子が容易に想像できる。
まるで自分が体験していたかのように。
グリモールはエルノアの表情を見て察する。
エルノアに記憶が戻りつつあることに。
おそらく彼女が完全に記憶を取り戻した時、それが自分の命の最後だ。
なぜなら彼女は———***なのだから。
「とりあえずアリスティア嬢のことはわしが守る。セニカの二の舞にはさせん!」
グリモールは決意する。
アリスティアを守ること。
それが自分にできるせめてもの罪滅ぼしだ。
これで許してもらおうなんて思わない。
いや、思えない。
それほどの事をしたのだ。
「そうですね!私も全力でサポートいたします!」
2人はアリスティアを守るためあれやこれやと議論を交わす。
しかしここから数ヶ月の間、エルノアは謎の記憶の出所を探るため、グリモールは気まずさと罪悪感のため、お互いに最低限しか話さなかったらしい。
現世の司教が、知っていたセニカの無惨な死は今回出てきた『神話級の魔法生物と戦った』ことです。
しかし記録には『賢者セニカは帝国を襲った魔法生物を倒せなかったが、己の身を犠牲にして封印してみせた。彼女の勇敢さをここに評する。』と記されています。