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51.嫌な予感

ここでの暮らしも慣れてきた頃、ふと気になったことがありました。


「ねぇアルさん、ここってどこなの?」

「おいおい今更かよ」

「最初あんなだったからそんなことも考えれなくてさ」

「まぁ、しょうがないよな。ここは中央大陸の北側にあるトリノ公国っていう国の小さな村だ」

「へぇ。じゃあさ、ここから見てヒリアット帝国ってどっち側にあるの?」

「アリスぁ帝国から来たのかい?こっから見て南側だな」

「ふーん。ありがとう」

「お、おう。なんかあったのか?」

「なにもー」

「んならいいや。干物取りいくか?」

「そうねー。もう夕方だもんね」






その日の夕食の時間、私がなぜここにいるのかなどを話しました。


なぜこの時に話したのかは自分でも分かりません。

でも「話さなきゃ」という気持ちが急に芽生えのです。

今話しておかないといけないような、そんな気持ちがその日の私の中にずっとありました。






そして話を聞いたアルさんとセーラさんは重くなるわけでもなく激情するわけでもなく、静かに私に選択肢をくれました。


「とりあえずアリスのことはわかった。で、どうしたい?」

「帝国に戻んのか、ここに残んのか」

「...帝国に戻りたい、です」

「なんだ。なんか悩みの種でもあんのか?」

「私お金も持ってないし、帝国への帰り方が分からないんです」

「はっ、そんなことかい」

「そんなことって」

「そんなの大した問題じゃねぇよ」

「どういうこと...?」

「簡単だよ。アリスが帰る時に僕たちも一緒に行くんだ」

「金もあるし道もわかる。こいつがな」

「でもそれじゃ———」

「『迷惑かけるから』とか言わせねぇぞ。面倒見るって決めたんだ。最後までやらんでどうする?」

「ありがとう、ございます」

「気にすんな」

「親の大切さってのは僕たちもよくわかってるから。ちゃんと届けてあげないとだからね」

「ありがとうございます!!」

「でも今すぐ出るわけにもいかないよ。もうすぐ冬が来るからね」

「そうですね」

「じゃあとりあえず泣きやみな」

「...はいっ...」

「なんと今日はデザートがあるよー」

「「おぉーー!!」」








翌日。

隠し事もなくすっきりした目覚め、になると思っていました。

実際、心は軽く普通に起きれました。


でも何かが違う。


例えば昨日と天井の色が違ったとか

例えば杖の置いてある位置がいつもと違ったとか

そんな些細な違和感でした。

心の奥底に残る泥のような違和感。


消すことはできないまでも気にしないことはできたのでそれで過ごします。


いつものように挨拶して

いつものように漁に行って

いつものようにご飯を食べて


でも日に日に大きくなっていく泥。




最近は海が荒れて船が出せなくなる日が増えてきました。

冬が来るかららしいのですが例年よりちょっと早いらしのです。


変だ。


海の遠くの方で黒い雲が見えました。

たぶんあの下では大雨で雷も落ちているでしょう。

あれも冬の風物詩らしいのですが、これもまた早い訪れのようで。


変だ。


思えばちょっとした違い。

冬が来るからという理由で無視されていた変化。

普通は「今年は早い冬だね」と世間話になる程度のものだったから無視されててもなんの間違いもありません。


ただ運が悪かっただけ。


誰も気づくはずがないもん。


だって竜が怪獣がそして龍が襲ってくる前兆と冬の風物詩はほとんど同じだから。


ちょっと早く冬が来ると思う村民

そんなことを知らない私


龍災から脱したエルドアド大陸———西の大陸も冬と龍災による荒波で船が出せず中央大陸(こっち)に伝えることができなかったそうです。


全ては偶然が重なって起きたことでした。





そしてその時は訪れます。


ギャァァァァァァァァァッ


竜の、海獣の、龍の襲来の合図が中央大陸を震わせました。

竜と龍の違いについては今後言及される予定です。

そう!予定です!

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