34.新年パーティー
ワイワイ ガヤガヤ
「ンッホン」
「まずは本日ヒリアット帝国、新年祭に出席いただいたことに感謝申し上げる。本年を何事もなく過ごせたのは其方たちの力あってであろう。今日はそんな1年の苦労を語り合い、英気を養い、もう間も無くやって来る新しい年を迎えてほしい。さて、これ以上話してはせっかくのご馳走も冷めてしまおうて。それでは乾杯!!」
「「「「かんp———」」」」
「の、前に1つ、ポワート神官から話があるようじゃ。酔う前に伝えたいことらしくて」
「えー、皆様乾杯の音頭の前に1つ失礼致します。えー、数日前に幾つかの領で司教や司祭の入れ替えをさせて頂きました。領によってはそれが民に伝わっていないと苦情が出たと思われますが、何しろこちらも急な決定だったもので。それでこの場を借りてお詫びと報告をさせて頂きます。」
神官様———ポワート様が深々とお辞儀をします。
誰が始めたのか手を叩く音が聞こえ、やがて会場を包み込む拍手となりました。
そして王様が立つとピタリと止む。見てて少し面白かったです。
しかし位の高い方々がいる前でそんなことを口にも表情にも出すわけにはいかず1人で堪えました。
「さて、待たせたの。無礼講でとは言わんが諍いが起きないようにはしてくれ。では、今日は存分に騒ぐがよい!乾杯!!!」
「「「「「かんぱい!!!!!!」」」」」
カチャン
王様の乾杯の声でみんながワイングラスをぶつけます。私も隣にいるテレスやテレスの家族の人とグラスを合わせます。
「乾杯、アリス嬢」
チン
「ちょっと貴方、ここではセニカよ」
「おっと、すまんかったなセニカ嬢」
本日の参加者は私とテレス、テレスのご両親そしてお姉様です。
「セニカちゃん乾杯」
「あ、はい」
「うふふふ、緊張してるの?今は家族なんだから緩くしてくれていいわよ」
「そうよ。今日は私に甘えてくれてもいいのよ!あー義母様が羨ましかったのよねー」
うーーん。なんかよく分からない状況になってます。
「ちょっとお母様、セニカが混乱してます」
「うふふふかわいこちゃんね」
その後も「うふふ」と笑うテレスのお母様———セリア様。
「では、我らは君のところへ挨拶をしてくるから大人しくしておきなさい」
「「「はーい」」」
そしてテレスのお父様———ムスカリン様とセリア様が去っていきました。
テレスとテレスのお姉様———セーニョさまとお料理を取りに行こうとすると近づいてくる人がいました。
「あら、お二人とも。久しぶりね」
「お久しぶりです、ソフィア様」
テレスに倣って頭を下げます。
やってきたのはソフィア様でした。
「そんな堅くしなくてもいいのよ。父上もいないし」
「それではお言葉に甘えさせて頂きます」
「貴方の堅さは筋金入りよねー」
こんなことを少し話してからソフィア様は他のところに行きました。
「行きたくないわー。みんな下心いっぱいの目で見てくるのよ」
「ソフィア様、我儘を仰るとトリアート様にご迷惑が。」
「しょうがないわね。じゃあねテレス、セニカ、セーニョさん」
今度こそお料理をと思っているとまた人がやってきます。
今度はワラワラと。
「貴方たち、いいご身分ね。最初にソフィア様に話しかけるなんて。身の程を弁えなさいよ!」
私たちを庇うようにセーニョ様が前に出てくれます。
「申し訳ありません、ラウラ様。しかしソフィア様から話しかけてくださった———」
パシャッ
セーニョ様はラウラ様が持っていた果実水をかけられました。
「フン!何を仰ってるの?私の許婚、キングスが言いてるのよ。私の夫を侮辱する気?」
それでも堂々と返します。
「いえ、そんなつもりは微塵もありません。ただ不当にこちらが責められるのには納得がいきませんので」
「何よ!男爵の娘ごときが。いい?この世には身分ってもんがあるのよ。貴女はそれをご存知ないのかしら?」
もうパーティーには行きたくない、帰りたい。
そう思えるほど酷い出来事でした。
よく分からない人にセーニョ様が責められて、ドレスまで汚されて。
「そこのガキもよ!軽々しくソフィア様と話さないでちょうだい。あんた達とは住む世界が違うのよ。そこの娘も、芋臭い顔乗っけて来るんじゃないわよ」
これが貴族。これがパーティー。
とても思い知らされました。
誰も口を挟めず、私たち3人は罵倒されるままでした。
周りは静まり返り、誰も動かなくなっていました。
そんな時とある人が声を上げました。
「おやおやラウラ嬢、そんなに声を荒げてどうなさったのですかな?」
絵に描いたような悪役令嬢、登⭐︎場⭐︎