2.魔法の杖
話に出てくる「ラーナ」は、アリスティアの母です。
ちなみに父は「テロナード」です。
「「お誕生日おめでとう!」」
そこには今まで史上最高とも言えそうな笑顔のパパとママがいました。私は驚きと安堵と嬉しさで何も言葉が出ませんでした。無意識に流れていた私の涙を見て、パパとママが慌てて近寄ってきました。
「アリス!大丈夫!?」
「ごめんな。怖かったよな」
おやおや。心配させてしまったみたいです。
確かに少し怖かったけど、私はお姉さんです。このくらい、なんともありません。多分。
「大丈夫だよ。ちょっと驚いちゃっただけだから。パパ、ママありがとう!」
パパとママは安心したような顔で、私を抱きしめました。嬉しかったので、私も抱きつきました。
「さぁ!アリスの誕生日パーティーよ!」
ちょっとしたアクシデントはありましたが、私の誕生日パーティーの始まりです。
ママの美味しいご馳走(とうもろこし料理多め)を食べながら私は気づきました。誕生日のこと、忘れていたと。
なので、改めて——。
アリスティア・ロナード、5歳です。たった今、5歳になった女の子です。
ご馳走も少なくなってきた頃、パパとママが2階に行きました。しばらくして降りてくると、その手には細長い包みがありました。待ちに待ったお誕生日プレゼントのようです。
「アリス、改めて誕生日おめでとう!これは私とパパからの誕生日プレゼントよ!」
包みから出てきたのは木で出来た1本の杖でした。
杖の先には透明な玉があり、持ち手の部分には水色の布が巻かれていました。私の好きな水色です。
今の私には少し長そうですが、持てなくはなさそうです。
「この辺の地域ではなアリス、魔法使いは5歳の誕生日に杖をもらうんだ。そして、その杖が壊れたりしない限りは、一生使っていくものになるんだ」
「だから今は少し大きいかもしれないけど、毎日自分の魔力を流して、丁寧にお手入れをすれば、世界に1つだけの、アリス専用の杖が出来上がるのよ」
「魔法の杖ってのはな、毎日使って———。」
もう私は杖に夢中でした。パパやママの声はいつのまにか聞こえなくなっていました。憧れの自分の、自分だけの杖です。きっとパパもママも笑って許してくれるでしょう。
私はゆっくり杖に魔力を流してみました。杖がほんのり光って、暖かくなりました。まるで杖に命が宿ったような。そして驚くことに、少しゴツゴツしていた杖の表面が滑らかに、私の手に合うように形が変わっていました。
「え!?ちょっとアリスちゃん!?」
「えっ!もう杖に認められたのか!?」
パパとママの顔を見ようとしたその時、杖の先にあった玉が光出しました。
私は驚いて杖を落としそうになりました。
パパとママは何か大事なものを見るかのように、目を見開いて玉をじっと見つめていました。
光が収まると玉は、白色のような、虹色のような。よく分からない色になっていました。答えを知るべく、パパとママを見ますが、2人とも困惑しているようで何も言ってくれませんでした。
トリニアが『あぃうー』と、声を出した時、ようやくママが言いました。
「とりあえず、教会に連れて行ってみます?」
「そうだな。でもラーナ、これはなんの属性なんだ?」
「分からないから調べてもらうんじゃないの」
教会に行かないという選択肢はなさそうです。
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